Image: Naiyana Somchitkaeo / Shutterstock
二酸化炭素(CO2)の排出削減や電動化、蓄電、エネルギーの効率利用などClimate Tech領域のテクノロジーが注目され、スタートアップ投資も加速している。脱炭素社会の実現に向けて国内外の脱炭素テクノロジー(ZET:Zero Emission Technology)関連スタートアップ40社が登壇した「ZET New Japan Summit 2023 Kyoto」(2023年3月開催)。このうち海外スタートアップ各社の事業概要を紹介する。第3回は、Xurya、Aurora Hydrogen、CarbonBuilt、METRON、Bcomp、Arborの6社。

【Xurya】産業・商業施設向け分散型太陽光発電サービス

Image: Xurya HP

設立年:2018年
URL:https://www.xurya.com/en/

 Xurya(本社:インドネシア Jakarta)は、太陽光発電のリースと設置を行うスタートアップ。2018年の創業以来、インドネシアの分散型太陽光事業におけるリーディングカンパニーとして、産業・商業関係の顧客向けに太陽光発電設備の設置やオペレーション、メンテナンスサービスを提供している。

 同社のサービスの特徴は、顧客企業側が初期投資やオペレーション、メンテナンスのコストを負担する必要なく、リース形式でのオンサイト太陽光発電の導入を提案できる点だ。屋根の所有者は初期投資なしで太陽光発電導入による節電ができるように、実現可能性調査の実施から、設置、運用、保守・管理、レンタルスキームの提供までを一括で提供できるプラットフォームを構築している。

 2022年に三井物産はXuryaへ出資参画を発表した。Xuryaは、日系企業を含む繊維メーカーや食品メーカーなど、中小企業から大企業まで計70社以上の導入実績があり、今後も成長が見込まれるインドネシアの顧客のニーズを取り込んでいく。

【Aurora Hydrogen】クリーンで低コストな分散型水素製造技術

Image: Aurora Hydrogen HP

設立年:2021年
URL:https://aurorahydrogen.com/

 Aurora Hydrogen(本社:カナダ Edmonton)は、クリーンで低コストな分散型水素製造技術を開発しているスタートアップ。効率的なマイクロ波エネルギーを利用して、酸素と水のない状態でメタンを加熱し(熱分解)、水素と固体炭素を製造する技術を開発している。直接CO2を排出することはない。

 同技術は拡張性に優れ、モジュール化されているため、製造装置は、小規模なガソリンスタンドから大規模な産業用途まで対応が可能。電気と天然ガスが利用できる場所であればどこにでも装置を設置することができるという。

 同社によると、Aurora Hydrogenの技術を使用した水素製造は、世界のCO2排出量を年間9億トン以上削減する可能性があり、また将来的にはより多くのCO2排出回避が期待できるとしている。資金調達を通して低コストでクリーンな分散型水素製造技術のスケールアップを進める。

【CarbonBuilt】CO2排出を抑えたコンクリート製造技術

Image: CarbonBuilt HP

設立年:2020年
URL:https://carbonbuilt.com/

 CarbonBuilt(本社:米カリフォルニア州 Los Angeles)は、発電所から発生する排気ガス中からCO2を回収し、消石灰に吸収させ固体化し、コンクリートブロックに転換して建設資材にする技術を開発している。

 同社の技術「Reversa™」を用いることで、無処理のまま回収したCO2を化学反応によって固体化し、コンクリートにアップサイクルする。

 同社によると、コンクリートから排出される温室効果ガスは、世界の10%近くを占めており、業界は現在解決策を模索している。CarbonBuiltは炭素集約型セメントの使用を減らすことで、コンクリートの炭素集約度を大幅に削減し、CO2を無機化する。既存のコンクリート製造工場に装置を導入することで原材料コスト削減と利益につなげ、また削減された炭素は炭素クレジットとして収益化できる。

【METRON】エネルギー管理・最適化のデジタルプラットフォーム

Image: METRON HP

設立年:2013年
URL:https://www.metron.energy/

 METRON(本社:フランス Paris)は、2013年創業のクリーンテック企業。主に製造業や第三次産業、公共部門などを対象に、組織のエネルギー管理・最適化を支援するSaaSプラットフォームを提供している。

 同社のエネルギー管理および最適化システム(EMOS)は、組織がエネルギー消費を制御、管理、最適化するためのソリューションを提供する。AIとビッグデータを活用したプラットフォームで、顧客企業の光熱費消費の詳細をより深く掘り下げ、最終的にCO2排出量の削減につなげる。サイト全体のエネルギー消費量の分析・高度モニタリングや閾値設定とアラームなどを主な特徴とする。導入企業は自社の戦略に基づき、自律的に管理できるようになると同時に、METRON側の専門チームによる継続的なサポートもある。

 同社は2020年に日本での事業を開始している。NTTファシリティーズなど日本企業とも連携して市場展開している。

【Bcomp】植物繊維を使った軽量・高性能なサステナブル素材

Image: Bcomp HP

設立年:2011年
URL:https://www.bcomp.ch/

 Bcomp(本社:スイス Fribourg)は、持続可能な軽量化ソリューションとして、植物繊維を使った軽量かつ高性能なサステナブルコンポジット素材を開発するクリーンテック企業。

 Bcompのプロダクトの主な材料は亜麻などの植物繊維で、これに同社独自の天然繊維ベースの強化技術「ampliTex™」と「powerRibs™」を用いることで、再生可能な植物繊維を用いながらカーボンファイバー(炭素繊維)と同様の強度と軽さを備えることができる。また85%のCO2排出削減を実現している。圧縮成形法を用いて様々な形に成形することが可能。加えて、安全性の向上や振動減衰性、コスト削減などのメリットもある。

 同素材は、自動車の内装からF1のボディーパーツ、豪華ヨット、スポーツ器具などに軽量かつ高性能な素材として使用されている。欧州宇宙機関との共同開発で同素材を使った衛星機体開発の事例もあり、耐久性や使用範囲の広さを証明している。

【Arbor】環境への影響を消費者に示すサステナビリティデータプラットフォーム

Image: Arbor HP

設立年:2020年
URL:https://www.arbor.eco/

 Arbor(本社:カナダ Calgary)は、企業が自社製品の持続可能性を測定し、環境影響指標を消費者に示すことができるサステナビリティデータプラットフォームを開発、提供している。消費者の購買習慣が環境に与える影響を伝え、より環境に優しい製品を選択するよう促すとともに、企業の製造およびサプライチェーンのプロセスの持続可能性向上を支援する。

 同社の測定ツールは、製品データを取り込み、材料組成や原産国などの重要な製品情報を抽出する。ウェブサイトからの情報を直接取得することもできる。サプライチェーン全体をマッピングし、製品に関する情報を地理とプロセスに関連付ける。業界をリードするLCAデータセットを使用して製品の環境への影響を推定する。

 例えば、アパレルで導入した場合、素材から最終製品を製造するまでの全工程で排出されるCO2を測定する。Tシャツを例にとると、農場で栽培される綿から裁断、縫製ができた最終素材までのフットプリントを確認することができるという。



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