Supabaseは、開発者向けオープンソースのデータベースプラットフォーム「Supabase」を開発、提供している企業だ。近年、データベースはオープンソースタイプのMySQL、Postgresなどが人気だが、BaaS(Backend as a Service)のプラットフォームを提供するSupabaseはPostgresに特化している点が特徴だ。様々な機能をクラウド形式でアクセスすることが可能なプラットフォームで、認証やインスタントAPIなど、開発者のプロジェクト構築に必要な機能を提供する。創業からわずか2年で調達した資金は累計1億ドル以上に上る。Postgres用のBaaSとして「Postgres as a Service」を掲げるSupabaseは、なぜエンジニアに支持されるのか。その理由を共同創業者でCEOのPaul Copplestone氏に聞いた。

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開発を助けるPostgres専用プラットフォーム

――御社のサービスは「Postgres as a Service」を謳っています。どういうものですか。

 私たちのサービスは、主に開発者がデータベースを使うのを容易にするためのプラットフォームです。クラウドのデータベースにはAmazonのRDS、GoogleのGCP、MicrosoftのAzureといったものがありますが、私たちは、Postgresに特化しました。プラットフォーム上に認証、インスタントAPI、リアルタイムサブスクリプションなどの機能を与え、Postgresを非常に簡単に使えるようにしようというものです。

――なぜこのようなサービスを思いついたのですか。

 私はニュージーランド出身で、若い頃からテック分野の仕事を始めました。エンジニアとしての経験は17年になります。2015年にはアジアに移り、2つのスタートアップを立ち上げました。Supabaseは私が創業した3社目のスタートアップです。

 2社目のスタートアップは、PostgresとFirebaseを使っていたのですが、Firebaseはスケーリングに問題があり、使いづらいものでした。一方で、Postgresは拡張性はあるものの、開発者でも使いこなすのは難しかったのです。そこで、開発者がプロジェクトを始めるときに、非常に簡単で使いやすく、しかも早くスケーラブルできるものが欲しいと思ってSupabaseを作りました。

Paul Copplestone
Co-Founder & CEO
2004年、St Andrew's College卒業。2006年、不動産国家資格取得。2005-2007年、University of CanterburyでITプロジェクトマネジメントやEビジネスシステムなどを学ぶ。ニュージーランドの農業や金融、ヘッジファンドなど様々な企業の技術者として勤務。オーストラリアのアクセンチュアで政府向けの大規模なプロジェクトデリバリーに携わった経験もある。2015年に東南アジアに移り、マレーシアでホームサービス技術者のマーケットプレイス事業、シンガポールでオフィスマネジメントのスタートアップを立ち上げた。2020年1月、3社目となるSupabaseを創業。法人登記は米デラウェア州、従業員はフルリモート勤務。

――どういうユーザーが御社のサービスを利用しているのですか。

 現在、世界中で約10万人の開発者がSupabaseに登録しています。彼らはウェブサイト、ビジネス、アプリ、モバイルアプリ、ブラウザの拡張機能など様々なものを作っています。特にウェブサイトの分野ではとても人気があり、Reactなどフロントエンドのフレームワークを使って新しいウェブサイトを作ろうとしている人達が主なターゲットになります。

 Supabaseは色々な用途に使えるので、お客様の業種も様々です。金融関係など伝統的なビジネスの会社にも使っていただいていますし、最近はWeb3や、暗号資産、NFTの企業も使っています。Web3やNFTがとても流行っていますが、有名ラッパーのSnoopDoggは私たちのプラットフォームを使ってNFTの音楽を販売しました。

開発者ニーズを捉え、トレンドにいち早く対応して急成長

――料金モデルなど、マネタイズの仕組みはどうなっていますか。

 Supabaseはプロジェクト毎に課金されるサブスクリプション型で提供されています。料金プランにはいくつかの段階があり、無料版、プロ版、そして企業版の3段階です。多くのユーザーはトライアルの無料版から始め、プロフェッショナルやエンタープライズへと成長していきます。

 先ほど、登録している開発者の数は約10万人だと言いましたが、そのうちの60%以上は無料版から始めています。私たちのプラットフォーム上で起動したデータベース数を観測すると、2020年の創業以来、13万件以上のデータベースが立ち上がりました。おかげさまでSupabaseは毎月約20%ずつ成長しています。

――それはものすごいスピードですね。なぜそんなに急成長できているのでしょうか。

 その理由は、私たちがタイミングよく、市場のトレンドに上手く乗れているからでしょう。昔はMongo DBのようなデータベースを使うのがトレンドでした。しかし現在は、リレーショナルデータベースと呼ばれるタイプのデータベースに戻りつつあります。しかも多くの企業がOracleから、オープンソースのPostgresに移行しています。これが1つ目のトレンドです。

 2つ目のトレンドとして、過去には大規模なアプリケーションを構築しデプロイするのが一般的でしたが、今はフロントエンドだけを開発するのが主流になってきています。バックエンドの開発者はあまり多くありません。私たちはバックエンドツールでありながら、フロントエンドの開発者がプロジェクトをスムーズに構築できるよう助けてきました。そしてオープンソースであることと、スケーラブルであることも好まれています。そのおかげで、Supabaseは開発者にとても愛され、急速に成長するプロダクトとなったのです。

Image:Supabase HP

――オープンソースで提供する理由は何ですか。

 Postgres自体がオープンソースのデータベースですし、オープンソースにすれば私たちが独自に開発したツールだけでなく、他のコミュニティが開発したツールも採用することができるからです。その方が、いちから新しいツールを作るより、多くの開発者とエコシステムを築くことができるので、お客様にとってもメリットがあります。

 また、もし私たちのプラットフォームを使うのが難しい場合は、自社サーバーのホスティングへ移行することも可能です。例えば、法やプライバシー等の理由でSupabaseが提供するプラットフォームを使えない場合、Githubに公開されている当社のコードを使えば、自前のクラウド上でSupabaseを動かすこともできます。つまりSupabaseのプラットフォームは、必要あればいつでも他のクラウドに乗り換えることができるという安心感があるのです。いつでもセルフホストに移行でき、ベンダーロックの懸念がないというところが、多くのユーザーから評価されている所以でしょう。

――セキュリティ対策について教えてください。

 私たちは、Amazonのようなプラットフォームを持っていて、そこにサインアップすれば、サービスを展開できるような形をとっています。サインアップしていただくと、私たちがデータベース周りのセキュリティに目を配り、監査を実施します。社内にはセキュリティに特化した人材もおり、プラットフォームが非常に安全であることを確認してもらっています。

創業からわずか2年で累計1億ドル以上を調達

――2022年5月には、シリーズBでFelicis Ventures、 Lightspeed Venture Partnersなどから8000万ドル(約110億円)を調達し、2020年の創業以来、累計の調達資金額は1億ドルを超えました。資金はどう使う予定ですか。日本市場に展開する予定はありますか。

 この資金は、チームの増強やプロダクトの拡張をはじめ、新しいエリアを広げるために使う予定です。日本もその一つで、より多くの人をサポートしたいと願っています。Supabaseを試してみたいという方も、企業の生産性向上に使いたいという人もサポートしたいです。OracleやHeroku、Mongo DBなどのデータベースからの移行を考えている方のサポートも可能です。

 また私たちはスタートアップ企業ですから、協業できるパートナーあるいは投資家も必要としています。戦略的に良い関係を築けるのであれば、どこからの要請にも喜んで応えたいと思います。

――最後に、御社の長期ビジョンについて教えてください。

 開発者は、もっと自分の技術に費やす時間を減らし、製品に集中する時間を増やさなければなりません。開発はもっと生産的であるべきです。私たちは従来、100人がかりでやっていたことを、10人でできるようにしたいのです。それを実現するために、私たちはよりエンジニアフレンドリーなツール創造に努めていきます。

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