「時間を買っています」 東京電力グループの新規事業専門部隊、TEPCO i-フロンティアズのBLITZ Portal活用術

TEPCO i-フロンティアズ株式会社は、電気・ガス小売事業者である東京電力エナジーパートナー株式会社と株式会社ICMGの共同出資により、2017年9月に設立されました。電気・ガスにとどまらないサービスの企画・開発を目的としたTEPCO i-フロンティアズ株式会社でBLITZ Portalがどのように活用されているのか、菊池氏・青松氏に取材した。

<ポイント>

  • リソースが限られる中で、事業開発に専念するための「時間を買う」
  • 無闇に数を追うのではなく、”質の高い”スタートアップのみが掲載されている点が魅力
  • 協業候補選定と自社ビジネスのアイデアソース、2つの目的で利用

※本記事は、イシン株式会社が提供するイノベーション情報ポータル「BLITZ Portal」の導入インタビューです。

新規事業に特化したTEPCO i-フロンティアズ

−はじめに、TEPCO i-フロンティアズ株式会社について教えていただけますか。

 電気小売事業をおこなっている東京電力エナジーパートナー株式会社の新規事業部門が別会社化されていている会社です。それがICMGとジョイントベンチャーで運営されています。親会社の東京電力エナジーパートナーは、東京電力グループ内で「家庭に届ける料金徴収周り」の事業を行っています。

 TEPCO i-フロンティアズ内では複数の新規事業を行っており、自ら立ち上げたビジネスと、他のスタートアップとの協業によって事業立ち上げを行うケースがあります。

−組織はどのように構成されているのでしょうか?

 TEPCO i-フロンティアズの従業員は10名程度です。純粋な社員というより、大多数が2つの親会社から出向したメンバーで構成されています。少人数で複数の新規事業をおこなっていますが、親会社内にもその事業に携わっているメンバーがいたり、外部から協力いただいているメンバーもいます。実際には従業員数よりもう少し大きな規模で運営されているイメージです。

菊池 英俊 氏
TEPCO i-フロンティアズ株式会社
代表取締役社長
リクルートのHR部門にて10年従事後、ICMGグループの創業に参画。製造・エネルギー・鉄道・IT・素材・食品・流通・放送等、幅広い業種の経営・組織変革や新事業創生プロジェクトに従事。2017年TEPCO i-フロンティアズの設立から代表取締役として参画。

青松 敬明 氏
TEPCO i-フロンティアズ株式会社
執行役員
総合商社、医薬品メーカーなどを経て、ITベンチャーの創業メンバーとして参画。同社の国内外での事業拡大に寄与したのち、上場後は、ベンチャー投資・企業の新規事業創生、経営支援業務などに従事。2017年、TEPCO i-フロンティアズ設立より参画。

海外の先進情報の充実度

−2年前から弊社サービス(BLITZ Portal前身のレポートサービス)を利用いただいておりますが、どのようにスタートアップ情報収集を行っておりましたか?

 人のつながりと、通常のネットサーフィンなどが中心です。一時は国内スタートアップデータベース系のサービスを活用していたのですが、きちんと活用することが出来ずに半年程度で解約しています。

 我々はどちらも、これまで多くの新規事業設立やスタートアップ連携に携わっていたため、比較的そういった情報は入ってくる立場にいました。鮮度の高い情報が入ってくる立場ではあったのですが、情報に網羅性やまとまりがないため、その情報の裏付けや活用には苦労していました。

−当初から海外スタートアップ情報を集めていたのでしょうか?

 はい。会社が設立された2017年から、国内だけではなく海外のスタートアップ情報についてもかなり調査を進めていました。

−苦労されていたというタイミングで、弊社から声をおかけしたわけですね。

 「海外に取材拠点を持ち、質の高いスタートアップのみを紹介する」という説明に期待して導入を決めました。特に、シリコンバレーをはじめとした北米エリアの情報の充実度に魅力を感じました。

 思い描いていた通り、はじめから整理された情報が届くので、活用がしやすいですね。

テーマによっては数日かかる調査を短時間で

−2021年の4月から、BLITZ Portalへサービスリニューアルを行い、閲覧できるレポートの幅が広がりました。リニューアルの感想はいかがでしょうか?

 同じ分野を見ているだけでは気付かないことを、異分野の情報を見て気付くことも多いです。また、我々としては東京電力エナジーパートナーの本業だけを伸ばすわけではなく、多少距離のある周辺分野を伸ばしていこうとしています。そうすると今の形式のほうが活用しやすいです。

 一人ひとりがリサーチに時間を割くことなく、エネルギーや小売やブロックチェーンなどの分野の最新情報を包括的に見ることが出来るので、我々としては「時間を買っている」という感覚で使わせてもらっています。自分たちで調べようとすると、テーマによっては半日どころか数日かかりますので。

−最初の方で国内スタートアップデータベースを活用していたとおっしゃっていましたが、そことの違いはどう感じていますか?

 数が多すぎることは必ずしもプラスにならないと考えています。数万数十万社のレポートがあっても、実際に詳細をみるのは一部です。使わないデータは検索する際にはノイズなので、我々としては「セレクトされた情報」であることのほうが重要です。

−BLITZ Portalで得た情報をどのように活用されていますか?

 小さい規模の会社ですので、気になる会社をみつけたらその場でコンタクトを試みることが多いです。契約には至っていませんが、実際にコンタクト先から数社、提携などを検討するために先に進んだものもあります。

 それ以外に社内会議で使用することもあります。この前、普段BLITZ Portalを見ていないメンバーにレポートを見せたところ、「すごくまとまっているね」という反応でした。

メンバーのバックグラウンドにより異なる使い方を

−話が変わりますが、当初は菊池さん青松さんの2アカウント契約だったところから、途中でアカウント数を追加いただきましたね。増加したメンバーも同じような使い方をされていますか?

 結論から言うと、違う使い方をしています。

 我々2名はICMGから出向している人間ということもあり、東京電力エナジーパートナーに囚われすぎず、協業してゼロから事業立ち上げを行うことも視野に入れてフラットに情報収集をしています。先ほどの「気になる会社があればコンタクトをとる」というものも、我々2名の使い方です。

 追加した他のメンバーは東京電力グループからの出向者ということもあり、「自分たちの電力事業に肉付け」する視点で見ています。

−アイデアソースとしての活用方法ですね?

 そうです。「海外にはこんな事業があるんだ」という使い方です。明確に役割を分けているわけではないですが、緩やかに分かれています。

東京電力グループに対して重要な提言を行っていく

−最後に、我々への要望と、今後の展望のようなものがありましたら教えて下さい。

 まず要望ですが、東京電力エナジーパートナーにとってのお客様は、一般のご家庭や市中の事業者です。ですので、それらのお客様にとって付加価値になるサービスを提供しているスタートアップ情報がより多いとありがたいです。

 今後の展望としては、環境対策などの東京電力グループ内で重要なテーマについての提言を、BLITZ Portalを用いて行いたいと考えています。直近の結果につながるわけではないですが、必要な動きです。

−本日は貴重なお時間、ありがとうございました!

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