海外の先進ビジネス動向収集を通じて新規事業開発の加速・人材育成を実現

印刷技術を中心に、雑誌や書籍、包装、建材、エレクトロニクス、エネルギー分野など、さまざまな分野に進出する大日本印刷株式会社。その中にある情報イノベーション事業部は、企業と生活者のコミュニケーションを活性化させるマーケティング事業や、電子決済やBPOサービスなどを手がける情報セキュリティ事業を展開している。

情報イノベーション事業部内で新規事業を執り行うビジネスデザイン本部の松嶋 亮平氏に、BLITZ Portal導入の背景や効果について話を聞いた。

<ポイント>

  • グローバルの先進ビジネストレンド収集を自社で行うには限界がある。
  • 海外スタートアップとの事業提携がゴールではない。海外ビジネス動向を多様な視点でみていくプロセスにも大きな価値があり、目指すはあくまでもプロジェクトの事業化である。
  • プロジェクトとは一見して無関係のように見える海外スタートアップ動向も積極的に理解を深めていくことで、自社の事業開発が加速する。

※本記事は、イシン株式会社が提供するイノベーション情報ポータル「BLITZ Portal」の導入インタビューです。

食、育児から"スマート南京錠"まで

ー松嶋さんが所属している、情報イノベーション事業部 ビジネスデザイン本部について教えてください。

 大日本印刷(以下DNP)は、140年以上の歴史がある会社です。DNPは、紙や包材などに使うフィルムへの印刷、金属への微細加工など、印刷技術を徹底的に磨き、これを核として事業領域を拡げてきました。情報イノベーション事業部では、出来上がったモノ(印刷物、ICカード、POPなど)に対してサービスを付加していくコトとして、決済サービスやデジタルマーケティング、BPOなどを展開し、事業領域を更に拡げています。その中で、2018年10月に既存のビジネスから離れた新しい事業やビジネスモデルを生活者視点で作っていく、ビジネスデザイン本部が設立されました。

 ビジネスデザイン本部では、設立から2年半で10個ほどのプロジェクトをおこなっています。例えば、スマート南京錠など特徴的なIoTデバイスを活用したキーシェアリングサービス、主に0-5歳の育児に関わる課題を解決していくBabyTechプロジェクト、“食”に関連する体験価値向上を目指すFood Communicationプロジェクトなどです。これらプロジェクトはプロジェクトメンバーの強い意志のもと徹底的に課題・価値設計を行って推進していますが、DNPの多様な事業領域に限らずスタートアップやエンタープライズとのビジネスの掛け合わせを積極的に実行しています。

松嶋 亮平
大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部ビジネスデザイン本部 部長
2004年大日本印刷入社。ICカードのアプリケーション・システム設計、ICカード関連の事業開発・ビジネスを展開。その後、事業企画本部にて中期経営計画策定、M&A、経営再建支援等に従事。2018年10月にビジネスデザイン本部が発足し、初期メンバーとなる。主に新規事業開発を担当。

海外企業動向を自分たちのプロジェクトに取り入れる

ー弊社情報サービス(当時はBLITZ Portalの前身のレポートサービス)導入前に、どのような課題を感じていましたか?

 情報収集面の課題は山ほどありますが、そもそも、海外のスタートアップ情報を検索すると「英語」である点です。英語がわからないわけではないですし達者なメンバーもいますが、日本語よりは調査しにくいです。また「情報の確からしさ」も自分たちでは担保することが難しいです。定期的に体系立てて情報を見られるわけでもないので、自社で情報収集を行っても、網羅性や業界や分野における位置付けなどを担保することができません。

 例えば我々はインドネシアに照準を絞って情報収集を行っていたことがありますが、たまたまインドネシアで優れているといわれている企業や情報を見つけても、東南アジアの中心であるシンガポールの企業と比較しないと実際の注目度や優劣はわかりません。さらにグローバルとの比較や、そのテーマの潮流も見る必要もあります。

 こう言った様々な問題点があるため、一企業が小規模の体制で調べても、有効な情報を得ることは難しいと感じていました。

―海外スタートアップ情報を入手する一番の目的は?

 まず当本部の場合、グローバルの情報を活用して、海外の企業と一緒にビジネスを実行するのは、現実的に難しいと考えています。ただ海外企業の動向を自分たちに取り入れることで、現在取り組んでいるプロジェクトを加速させることはできると思います。それが最大の目的です。

直接関係しない領域の先進ビジネスも知っていないとだめ

―当社サービスの導入を決められたポイントは?

 「食品企業だから食品関係の先進スタートアップ情報を探す」のように、スコープが明確であればやり方はシンプルです。ただ私たちは領域を制限せずに事業開発をおこなっているため、色々な方向を見る必要がありました。

 それに対して、TECHBLITZがリニューアル前に提供していた旧レポートサービスでは、私たちの興味・関心に合わせて月次で調査テーマを変更していただいたりしていました。私たちにとっては特定領域だけが調べられるサービスではあまり意味がなかったのです。実際に導入後は、例えば特定エリアの食品ロス関係企業→グローバルの類似企業→ロジスティクス→フィンテック→環境→ダイバーシティという具合に様々な領域に変更していきました。

―BLITZ Portalをどのように利用していますか?

 現在のBLITZ Portalでは、個別調査・すり合わせ・活用の三段階で活用しています。

 まずBLITZ Portalが更新されたあと、チーム内の各メンバーで1-2週間ほどかけて更新されたスタートアップ情報をチェックします。その後に2時間ほどチームMTGを実施し、自分たちが行っている新規事業や既存事業への影響を話し合います。当然ですが影響は良い方向と悪い方向、両方をみており、自主事業の方針に反映する場合もあります。最後に既存事業の責任者・上長に共有をおこなう流れです。

 現在、私たちが進めている新たなプロジェクト構想にインパクトを与えそうなスタートアップ情報は、特に注視しています。

―他の情報収集手段とBLITZ Portalをどう使い分けていますか?

 国内スタートアップに関してはマッチング要素の強いサービスをスポットで利用することはありますが、プロジェクトの推進状況次第で必要性は異なります。海外スタートアップ情報は調査内容、調査実績はもちろん重要ですがそれだけではなく、サービサー(この場合イシンさん)が調査内容をどれぐらい理解されているか(どれくらい深く強みや新規性を把握しているか)、が重要です。それがレポート内容に実際にあらわれますので、その意味で他に活用しているサービスはないですね。BLITZ Portalの情報をベースに、追加リサーチをかけて、より深く幅広く考察をしていきます。

 外部サービス以外では、DNPグループ内にもグローバルリサーチを行っているメンバーもいますが、どうしても小規模なチームですし専門性には限界がありますので、彼らが発信する情報だけではなく自分たちで情報を取りに行く必要があります。

ーBLITZ Portal導入による成果を教えてください。

 定量的な成果を伝えることは難しいですが、定性的なものは非常に大きいです。

 我々に限らず一般的な企業は、サービス毎にサイロ化された組織であることが一般的だと思います。ですが生活者に向けた事業を作るためには、製品開発、流通、決済、品質管理、保守など、あらゆる要素が必要です。BLITZ Portalにより先進情報を網羅的に取得できていることで、特に幅広い視点を持ちながら課題設計力や状況の変化に対するリアクションスピードなど感度が高い組織・人材をつくれています。

 またこれらの知見は、BtoBの協業先を探す際やセールス現場でも活きています。協業したい相手に業界・市場動向や私たちの活動の展望について具体性を持って語れるかどうかは大きな違いです。それがないと相手に納得してもらうことは難しいでしょう。

 チームメンバーには「直接自分たちとは関係しない領域の先進ビジネスも知っていないとだめ」と言い続けています。

ー同じ成果を国内情報のみで得ることは難しいですか?

 気づいたらビジネスにおけるインフラはほとんどが海外からきたものですよね。この取材もTeamsやZoomを活用していますし。グローバル企業と組むのは容易ではありませんが、少なくともグローバルに目を向けることは必要不可欠でしょう。

 他にも例えば、最近では街に実証実験を兼ねて電動キックボードが増えてきていますが、この流れは海外を見ていれば「絶対来る」とわかっていたことでした。私たちは日本からではありますが、グローバル情報をしっかりと調査して”その先”にどんな可能性があるのか、今どんなアクションを取るべきなのかをずっとディスカッションしています。ですから日本発でグローバルにイノベーションを起こせるような事業を目指したいですね。

ー本日はありがとうございました!

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