先端情報をもとに「未来のサントリー」をつくる
サントリーホールディングス株式会社の100%子会社として、先端技術やトレンドをもつ米国動向を調査することを目的として設立されたSuntory America。
その中のサンフランシスコオフィスで幅広い情報収集を行う木下氏に、BLITZ Portal導入の背景や効果について話を聞いた。
<ポイント>
- 飲食に限らず、「未来のサントリー」につながる領域調査に活用
- グループ全体のセキュリティシステム導入につながる
- 数十時間のトレンド把握業務が一瞬で完了することも
※本記事は、イシン株式会社が提供するイノベーション情報ポータル「BLITZ Portal」の導入インタビューです。
シリコンバレーで調査をすすめる、5つの注力領域
ーまずはじめに、木下様が所属されている組織について教えていただけますでしょうか。
Suntory Americaは若い会社で2018年から事業をスタートさせています。お酒を売ったりマーケティングをするわけではなく、米国を中心とした世界の先端トレンド調査がミッションです。そのなかで私のいるサンフランシスコオフィスはお酒など既存事業の枠にとらわれずに、様々な領域にアンテナを張って活動しています。シリコンバレーに近いという地の利を活かし、サントリーの今というよりは、ちょっと先もしくはかなり先を見て、我々の事業やビジネスを変革できるような技術・サービスにアンテナを張って情報を集める拠点として作られました。
2018年4月に私がオフィスを立ち上げたところからスタートしましたので、3年ちょっと経過したところです。当時、調査ミッションでサンフランシスコに赴任したのは私一人のみで、その後も入れ替わりはありますが私を含めた2名で活動しています。
General Manager, Strategy Business Planning
ー1-2名という規模で「既存事業の枠にとらわれない調査」を行うのは大変ですね。具体的にはどう言ったテーマで調査をおこなっていますか?
最初は「どんなテーマで調査をおこなうか」自体を決めるところからはじめました。
少人数でかつ実績のない組織なので、最初から会社のお金を用意してもらいスタートアップ投資をするようなことはできません。そのため世界中のサントリー各部署から困りごとをヒアリングし、情報を繋ぎ合わせるハブとなることを目指しました。その結果として、現在は5つプラス1つのテーマを設定しています。
その5つとは研究開発、サステナビリティ、ヘルスケア、オペレーション効率化、デジタルマーケティングです。プラス1つというのは、5つのテーマに含まれないが面白い技術のことを指しています。例えば人事系のサービスで、こんなことをやって人材の評価をやったらいいんじゃないですかとか、システム関係でこんなセキュリティソフトウェアが出てきて良さそうだ、などが該当します。それらを見つけたタイミングで、各国のチームに紹介しています。
ー5つプラス1つのテーマを調査するうえで、弊社情報サービス(当時はBLITZ Portalの前身のレポートサービス)導入前は、どのような手段で情報収集をおこなっておりましたか?
当然ですがシリコンバレーに赴任したと言っても、それだけで現地の情報が集まってくるわけではありません。そのため社内で話し合い、3つの方法で情報を取得していこうと決めました。
まず1つ目が「足で稼ぐ」ことです。シリコンバレー周辺では、数多くの展示会やピッチコンテスト、アクセラレータープログラムの講演会などが行われています。そこに実際に参加し、興味深い内容の場合は話しかけてみる、ということを続けていました。
2つ目は「ソーシング会社」の活用です。展示会は毎日やっているわけではありませんから。設定している5つのニーズをさらに細かく分解したものをソーシング会社に伝え、その条件に当てはまりそうなものを紹介してもらうというスキームです。このソーシング会社は米国に限らず、ヨーロッパの企業もお付き合いがあります。
3つ目は「VC」の活用です。親会社のサントリーホールディングスが資金を投入しているVCを通じて情報を入手していました。
数十時間の業務効率化
ーそこにTECHBLITZのサービス(当時は情報ポータル型のBLITZ Portalではなく、毎月10社のレポーティングを行う形式)を追加したのですね。導入理由はなんだったのでしょうか?
我々からみると、TECHBLITZの立ち位置はユニークです。日本企業がシリコンバレーで活動しているということもあり、現地の情報を把握しつつ日本企業特有の悩みについてもよくご存知です。その点に期待をして導入することにしました。
ー実際に利用してみて、いかがでしたか?
その通りでしたし、出てくる情報もちょっと違うなと感じています。我々の中ではBLITZ Portalは2つ目の「ソーシング会社」に分類しているのですが、その中でも情報の幅が広いです。
他の多くのソーシング会社は、”今”この技術を知りたいというお題に対してピンポイントで調査を行うサービスを提供しているところが多いです。それは勿論ありがたいです。一方でBLITZ Portalの場合は広めに網を張っておけるので、ピンポイントの調査では見つからない企業や技術が引っかかってくることがあります。最初に説明した5つプラス1つの「プラス1つ」に引っかかる情報も出てきます。
ーその情報から得られた成果はありましたでしょうか?
分かりやすい物だと、レポート情報をきっかけとして、サントリーグループ全体でセキュリティのサービスを導入しました。
日本のシステム部署で、社員が様々なクラウドサービスを利用する前提のセキュリティ対策を行う必要が出てきた際に、TECHBLITZのレポートに掲載されていたセキュリティサービスを紹介しました。その会社以外も含めて数社を検討した結果、そのサービスが一番だと判断になり導入をきめました。まずは日本国内で導入することになり、その後に世界中で利用することになったと聞いています。またそれ以外でも、毎月最低1つはグループ内の各部署にスタートアップを紹介しており、その中から実際に検討導入がすすんだものもいくつかあります。
スタートアップレポート以外に、業界トレンドレポートを活用することもあります。シリコンバレーにいる関係で、他部署から業界トレンドのレポーティングを求められることもあるのですが、リソースの問題から普段は断っています。ただBLITZ Portalでは主要業界のトレンドレポート情報もあり、その中にフードもあるので、それを渡して喜ばれることもあります。もし自分でまとめるとしたら、数十時間はかかる内容なのでありがたいです。
ー話が前後しますが、BLITZ Portalは具体的にどのように活用しているのでしょうか?
サンフランシスコオフィスにいる2名でBLITZ Portalを適時検索し、グループ内の各部署のニーズに合致する情報があれば随時共有しています。共有は出来るだけ、直接時間をとって口頭で行うようにしています。メール等で情報を送ることで、そのメール自体を見逃されないためであったり、彼らのニーズを再把握するためです。そのなかで紹介した各部署側も興味をもったものについてはスタートアップに直接連絡を行う流れです。直接連絡する以外に、TECHBLITZに紹介を依頼することもあります。
以前は「月毎のルーティーン」として行おうとしたこともありますが、ニーズによって対応しきれないことも多いため、探索業務は随時行う形になっています。
ーBLITZ Portal内のスタートアップレポートの良い点を教えてください。
私が見ている上で良いなと感じているのは、スタートアップ解説の最後のページに「類似企業」が掲載されている点です。競合と比較することで差が理解できたり、事業概要をみてピンとこない場合でも類似情報をみて認識が変わることもあります。
足元の課題解決から「未来のサントリー」作りへ
ー他社さんの話を伺っていると、新規事業探索部署と本社事業部の連携に苦労するという話を多く聞きます。その点はどうクリアされましたか?
もちろん苦労しました(笑)
形になっている要因の一つとして、「顕在化した足元の課題」に注力して早期に成果を出しに行ったことが挙げられます。アーリーステージのスタートアップに出資する・共同研究するといった動き方では、どうしても成果が得られるまでに時間がかかります。まずは社内の理解を得る必要があったため、課題解決のためのサービス導入に注力しました。
ーBLITZ Portalに関連して、今後の抱負がありましたら教えてください。
これまで我々は導入する会社・サービスの数を目標に立て、取り組みを進めてきました。もちろん社内で我々の活動の意味を理解してもらうためにも数は重要ですが、今後はより質にも拘っていきたいと考えています。自分たちの中で、これが入ったらサントリーや世の中に対してインパクトが大きいサービスを導入するような取り組みを増やしていきたいです。
ー先ほども出てきた、「今のサントリーではなくて未来のサントリーをつくる」という部分ですね。我々も貢献できるよう、BLITZ Portalをより良いモノにしていきます。ありがとうございました!