【シリコンバレー流DX・オープンイノベーション】UCバークレーのエグゼクティブプログラムは何を教えているか?

【シリコンバレー流DX・オープンイノベーション】UCバークレーのエグゼクティブプログラムは何を教えているか?

Silicon Valley / University / UC Berkeley
2020/11/05
先進的な日本企業へ向けて提供が始まったUCバークレーのエグゼクティブ教育プログラム。同プログラムではデータサイエンスやデジタルトランスフォーメーション(DX)、ベンチャーキャピタル、オープンイノベーションなど、最先端のビジネステーマを取り扱っている。米国名門大学のエグゼクティブ教育プログラムは、日本企業に何をもたらすのか。今回は教育カリキュラムについて責任を持つRichard Freishtat氏に話を聞いた。
関連記事:【UCバークレー】米国名門大学が日本のエグゼクティブ教育に乗り出した理由
※TECHBLITZを運営するIshin Groupは「UC Berkeley Executive Education」の日本展開パートナーを務めています。

本場シリコンバレーで学ぶ、データサイエンス・DX・オープンイノベーション

――UCバークレーのエグゼクティブ教育プログラムは、日本企業向けにもプログラムを提供しています。具体的にどんなテーマを扱っているのですか?

 例えばデータサイエンスとデジタルトランスフォーメーション(DX)です。データサイエンスがなければDXはできず、この2つのテーマは密接に関連しています。バークレーには、この2つの分野で卓越した専門家がおり、双方をひもづけたプログラムを提供しています。

 また同じテーマであっても、受講する階層ごとにプログラムの内容は変えています。例えばCTOを対象としたデータサイエンスプログラムでは、コーディングやアルゴリズムを教える必要はありません。CTOはデータサイエンスチームのメンバーが適任者かどうかを確認する方法や、そのチームから提出されたデータやインサイトに基づき、戦略的な意思決定を行うための方法を教えるのです。

 一方、データサイエンスチームから直接レポートの提出を受けるマネージャーやディレクターであれば、技術的な知識やスキル、そして事業戦略を理解する能力の両方が必要です。データサイエンティストは、データに関しては素晴らしいスキルがあっても、ビジネス的な知識を十分に持っていないことがあります。ですからマネージャーやディレクターは、データやアルゴリズムを理解するだけでなく、マーケティングやファイナンスの知識も駆使して、経営幹部が戦略的な意思決定をするために必要なデータやインサイトを見出す必要があります。  

Richard Freishtat
UC Berkeley Executive Education
Vice President
2012年から、UC BerkeleyのCenter for Teaching and LearningにてSenior ConsultantとDirectorを歴任した後、2018年に同校Executive EducationのVice President of Curriculumに就任。

――データサイエンスやDXは日本企業にとって関心の高い分野ですね。他にはどんなテーマを教えていますか。

 ベンチャーキャピタルをテーマとしたプログラムを提供しています。いま多くの日本企業がCVCを検討しています。オープンイノベーションの担当者を設けている企業も多いでしょう。そのニーズに応え、日本に特化したVC・CVCのプログラムを東京で開催する予定です。

 オープンイノベーションも日本企業で非常に人気があるトピックですね。私も日本企業の経営幹部の方と話すと、「スタートアップやシリコンバレーによって、私たちの会社はディスラプションの危機にさらされている。今度は私たちがディスラプションする側に回りたい。そのためには何をすればいいのか?」といった質問をされます。

 こうしたニーズに応えるために、「オープンイノベーション」の名付け親であるヘンリー・チェスブロウ教授による、オープンイノベーションプログラムを提供しています。このプログラムでは、オープンイノベーションとは何か、それを促進するモデル、フレームワークとプロセス、そしてオープンイノベーションへの投資について取り上げます。チェスブロウ教授は景気が後退している時は、「イノベーションに投資すべき時」だという考えで、そのための戦略的な方法があると主張しています。

 このオープンイノベーションプログラムは、実はチェスブロウ教授自身から提案があり、実現したプログラムです。教授は多くの日本企業に関わってきました。日本企業の失敗も成功も、様々なケースを見てきました。そして、オープンイノベーションに役立つプログラムが必要であり、そこにチャンスがあると教授から提案があり、新たに始めることになったのです。

 このプログラムは、新型コロナウイルスにより様々な予算が削られる中で、イノベーションへの投資方法を戦略的に考え、イノベーションを推進し、現在の経済的な危機を乗り越える指針となるでしょう。

世界中の企業が「取り残されている」と感じている

――日本企業の抱える課題は、欧米企業の課題とは異なりますか。

 欧米企業も、日本企業と同じような課題に直面しており、実はそんなに大きな違いはありません。私は様々な国の企業から相談を受け、話を聞いてきました。その結果言えるのは、違いより類似点の方がはるかに多いということです。

 例えば、エイブリィ・デニソンというラベルやタグなどのメーカーがあります。本社はカリフォルニアにあり、グローバルに展開している企業です。今から約1年前にCIOがDXが必要だと判断し、私たちは同社のグローバル全域のリーダー300人を対象にカスタマイズしたプログラムを提供しています。

 エイブリィ・デニソンは、何をデジタルに移行したいのかなど、優先順位を付けることができずにいました。DXは、データを使った実験的な要素も持っています。プログラムでは、DXにあたり、リーダーが知っておくべき知識を教え、彼らがリスクを取って実験を行える環境を用意し、実験の結果を経営幹部にプレゼンする場を設けました。実験が失敗した場合でも、そこから何を学び、どう改善したかをプレゼンします。これが重要です。

UCバークレーのエグゼクティブ教育プログラムの受講企業例。

 日本でのホットなテーマは、DX、データサイエンス、オープンイノベーション、SDGs、そしてVC・CVCですね。これらは、どの国でもホットなテーマとなっています。

 DXは、今は世界中の全ての企業が検討していますが、新型コロナウイルス以前から多くの企業から相談を受けていたテーマでした。DXに成功している企業は、本当にごく一部ですから、多くの企業が同じような課題感を抱えています。

 データサイエンスも、オープンイノベーションも同じく、世界中の企業が取り組んでいる課題です。SDGsは、ヨーロッパで大きなトピックですし、米国でも注目されています。

 他には、様々な国の企業でリーダーシップが課題になっています。特にハイテク企業でリーダーシップが必要とされています。例えば、エンジニアが作ったスタートアップが、50人規模から500人規模に成長したら、そのエンジニアはチームを主導し、マネジメントしなければなりません。しかし、彼らには、経験がありません。こうしたケースでは、リーダーシップ、文化、経営、交渉など、リーダーやマネージャーが行う必要があるトピックのプログラムを、それぞれの企業にカスタマイズして提供しています。

――日本企業の中には、他のグローバル企業から置いていかれていると感じている企業もいるようです。

 面白いことに、これは様々な国の企業が言っていることです。自分たちは他の企業に遅れを取っている、取り残されているように感じていると、多く相談を受けます。そういう時は、こう言います。「私たちが、1週間で何社から同じ相談をされるか、知りたいですか?」と。

 取り残されていません。同じように感じ、同じ課題を持った企業はたくさんあります。これは、挑戦でありチャンスなのです。

 例えば、DXやデータサイエンスの活用面で取り残されていると感じている日本企業に対しては、「まだ活かすことができていないチャンスがある」とお伝えしています。克服できない課題ではありません。

オンラインで教育プログラムを受ける価値とは

――新型コロナウイルスはプログラムにも大きな影響を与えたのではないですか。

 そうですね。新型コロナウイルスは、ファイナンス、マネジメント、リーダーシップ、コミュニケーション、データサイエンスなど、あらゆる面でビジネスに影響を与えています。それを無視すべきではないと考えています。

 例えば「データとビジネスモデル」のライブセッションでは、新型コロナウイルスがデータやビジネスモデルにどういった影響を与えているかといったテーマを盛り込みました。私たちは、既存のプログラムであっても、その時々のコンテキストを適用し、新しいコンテンツを開発しています。

――新型コロナウイルス以降は、オンラインプログラムにシフトしました。移行はスムーズだったのでしょうか。

 もともと私たちにとっても、デジタルに移行することは重要な課題でした。これまで対面で行ってきた会議やプログラムは、現在はZoomやGoToMeetingなどのプラットフォームを使い、オンラインで行っています。

 これも「挑戦でありチャンス」でした。以前は、クライアントや参加者と関係を築くには、対面でのコミュニケーションが必要だと考えていましたが、オンラインでも想像していた以上にうまくいくことがわかりました。

――日本企業は対面でのプログラムを好むのではないでしょうか?実際にUCバークレーのキャンパスに行って皆さんにお会いするのと、オンラインで会うのでは違いがあると思います。

 もちろん違いはあると思います。皆さん、バークレーのキャンパスに来るのが好きなようです。バークレーには伝統と歴史があり、それにワクワクする方もいますが、やはりシリコンバレーという立地も魅力的です。この地域ではデジタル革命を10年、20年とリードしてきたシリコンバレーのハイテク企業の創業者に会えるチャンスがあります。この場所に来れることは、オンラインにはない付加価値だと思います。

 一方、オンラインのコンテンツのレベルや、そこから得られる学びのレベルは、対面と同じか、それ以上です。例えば、オンラインコンテンツは、動画を何度も見ることや、記事を読み返すことができます。個々に合わせたペースでも学習が可能です。

 また、オンラインだと勉強グループなどに参加しやすく、ピア・ラーニングの機会が増えると思いますし、日常のなかでコースを受講できます。会社を休んでコースに参加する必要がなくなります。出社前に90分のセッションを受講して、新しいツールや、フレームワークなど、新しいことを学び、それをすぐに会社で活かすことができます。ネットワークを築きたい人にとって、オンラインはより多くグローバルにネットワークを築くチャンスがあります。

 コロナ禍、多くの企業がオンラインでの教育プログラムに取り組み始めています。オンラインも対面も、両方にメリットがあります。オンラインのメリットを生かして、ぜひ活用していただきたいと思います。

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