世界で400を超えるブランド企業・小売業者が利用
―まずNarverの事業概要を簡単に教えてもらえますか。
Narvarは、オンライン購入後の消費者をサポートするソフトウェアプラットフォームです。ブランド企業や小売業者と連携し、商品購入後の消費者サポートを可能にしています。現在、あなたが消費者としてGapやSephoraなどからオンラインで商品を購入する場合、きちんと商品を会計することはできます。しかし、商品の配送状況や返品条件については理解するのが難しいでしょう。そこで、私たちのプラットフォームを使うことで、ブランド企業や小売業者は配送状況の追跡や返品といった機能を消費者に提供することができるのです。
現在、世界中の400を超えるブランド企業と小売業者が当社のサービスを活用しています。そして世界で2億人以上の消費者にサービスを提供しています。
―収益モデルはどうなっていますか。
SaaSモデルです。年間のプラットフォーム利用料を前払いでいただきます。
配送状況の追跡や返品機能を提供
―御社のホームページでは、まずTrack(追跡)とReturn(返品)の機能を打ち出していますね。
ええ。消費者がリアルな店舗に行き、支払いをすれば、すぐに商品を手に入れることができます。一方で、オンラインで購入した時はどうでしょうか。消費者は支払いはしたが、商品はまだ手元にはなく、「いつ商品が届くのだろう」と気がかりになります。しかし、消費者はいつ受け取れるかわからず、配送状況の通知も受け取ることができません。そこで、Narvarは小売業者が消費者に情報を提供することをサポートしています。商品の配送状況を、消費者が受け取るまで通知するようにします。その注文の配送が遅れているとか、本日に配送不可能であるとか、そういった情報を伝えることができます。
―Return(返品)についてはどうでしょうか。
消費者がアパレルの商品を購入したときに起こりがちなのは、これが自分に合った商品かどうかよくわからないということ。同時に、返品条件についてもよくわからないというケースが多い。「どこで商品を返すことができるのか?配送業者が来て、私の家から持っていってくれるのか?」などと考えます。こういった返品条件は消費者にはわかりづらいので、私たちがとてもシンプルで分かりやすい方法で返品できるようにしています。返品の際は、消費者が返品理由を選択できるようにして、ブランド企業や小売業者にフィードバックしています。
まとめると、私たちのプラットフォームでは、消費者に商品が到着する日を伝え、損傷や遅延などの問題がある場合は事前に通知します。そして商品が届いた後、商品を返品するいくつかの方法について通知しているのです。
Image: Narvar
チャットボットにも対応し、電話応対を15%以上削減
―マーケティングとロジスティックをハイブリッドしたソフトウェアですね。御社では独自の物流ネットワークは持っていない?
その通りです。私たちはソフトウェアプラットフォームなので、独自の物流ネットワークを持っていません。350以上の流通業者と連携しています。
―消費者への連絡はどのようにしているのですか?
複数のチャネルを持っています。Webサイト、モバイル、Eメール、Facebookのようなメッセージツールにも対応していますね。いまテクノロジーが進化しており、顧客もボイスメッセージやチャットボットにも対応しているので、私たちのプラットフォームにも同じ機能を備えているのです。
―チャットボットについてはどのように活用していますか。
すでに消費者はチャットボットを使っています。米国では消費者はFacebookを使い、日本ではLINEを使い、他のエリアではWhatsAppがよく使われているでしょう。
「店舗の営業時間はいつですか?」「いつ店舗からこの商品を手に入れることができますか?」「どうすれば返品できますか?」。こういった質問には、私たちがチャットボットを使って答えることができます。消費者はコールセンターに電話する必要はありません。当社のサービスを通じて、顧客は少なくとも15〜20%の電話応対を削減しています。
Image: Narvar
「一貫した顧客体験」と「流通の専門性」が強み
―改めてまとめると、御社の強みは何だと言えるでしょうか?
ひとつは、私たちがブランド企業、小売業者と提携して消費者にショッピングを通じた一貫した顧客体験を提供していることです。もう一つは、サプライチェーンとロジスティクスについて深い専門知識を持っていることです。私たちは様々な倉庫会社や流通業者と連携して、顧客に親しみやすいデータとインテリジェンスを提供しています。
―データを利用するにあたり、御社でAIは活用していますか。
はい。商品がいつ届くかを計算して予測するために、AIと機械学習を利用しています。他にも、配送ネットワークでどんな問題が起きそうなのか、商品が返品される際、倉庫に商品を運ぶ最も安い方法は何かなどといったテーマについてAIと機械学習を利用します。
―大企業とのパートナーシップについて聞かせてください。すでにSalesforceやIBMといったパートナーがいますね。
おっしゃる通り、SalesforceやIBMと緊密に連携しています。彼らはEC市場で大きな存在感を持っているからです。また、先程お話ししたように、サプライチェーンやロジスティクスの分野でも多くのパートナーがいます。さらに現在は、FacebookやGoogleのメッセージ機能のパートナーシップもあります。Google Homeの新しい機能についても検討もしています。当社はグローバルレベルで企業とのパートナーシップを結び、当社のプラットフォームを強くしていきます。
消費者の買い物をもっとシンプルに、楽しくしたい
―そもそも、なぜこのようなビジネスを始めたのですか。
私のキャリアは小売業者としての仕事がほとんどです。まず家具メーカーのWilliam Sonomaでサプライチェーンの最適化の業務を行い、その後はWalmart、Appleでグローバルな出荷と配送の仕事をしていました。私はWalmart、Appleなどで働く中で、大事な顧客体験が欠けていると気づきました。私の構想するプラットフォームをつくることで、もっと顧客体験を変えることができると確信したんです。そこで、私はAppleを2012年に退職し、翌年2013年に当社を設立しました。
―最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
私たちの実現したいことは、とても簡単なものです。消費者の日々の生活をもっとシンプルにしたい。それに尽きます。現在、ショッピングには多くの軋轢があります。複雑な買い物の仕方、返品や配送などの頭の痛い事柄があり、ショッピングの楽しみがあまり残されていないのです。だから、私たちのプラットフォームが、一貫した顧客体験を提供し、消費者にショッピングを通じて楽しい思いをしてもらいたい。それが私たちのなすべきことであり、そのために様々なブランド企業や小売業者と連携していきます。