Image: Green Monday
大豆ミートが市販のスーパーでも置かれるようになり、その種類も少しずつ増えてきている。アレルギー対応やヴィーガン対応の食品も選択の幅が広がりつつある。今回紹介するのは、香港発の代替豚肉を製造するGreen Monday。同社創業者でCEOのDavid Yeung氏が代替肉へのこだわりやその開発の背景について、TECHBLITZの取材に答えた。

食べたくても売ってない!を解決したい

―Green Mondayの創業のきっかけは何でしたか?

 Green Mondayの活動は、もともと2012年から教育施設や企業内で植物性の食事を週1回摂取することを勧めるレクチャーをしていたことがきっかけでした。

 2012年に始めたこの活動ですが、進めていくうちに、人々に植物性の食生活にシフトしてもらうには、そもそも植物性食品の選択肢を増やす必要があることが分かりました。アジアで最も摂取量の多い肉は豚肉なので、早急により健康的で、より持続可能で、より応用性のある代替豚肉を開発しなくてはならないと緊急性を感じたのです。

David Yeung (Co-Founder & CEO, Green Monday)
コロンビア大学でエンジニアリングの学士号を取り、米国でコンサルタントとして従事。香港に戻り2012年にGreen Mondayを創業。TEDトークや世界経済フォーラム等で講演を行い、健康的な食生活についての啓発活動に携わっている。

 私たちが開発したオムニ・ポークは、遺伝子組み換えでない大豆、しいたけ、米、エンドウ豆でできています。コレステロールゼロ、飽和脂肪酸とカロリーが3分の2に抑えられているのにも関わらず、カルシウムは3.3倍も多く、鉄分も従来の豚肉の1.5倍です。

Green Mondayが開発した植物由来の大体豚肉「オムニ・ポーク」

 ホルモンや抗生物質も一切使用していません。資源効率・環境負荷の観点から見ても、圧倒的に優れています。また、アジア料理での使われ方を考慮して開発したのも、重要な点です。このようなイノベーションが、人の健康及び地球環境にとって良い貢献となると思います。

畜産業の環境への負荷を減らし、人々の食生活を改善

―どうして代替肉である必要があるのですか。

 現在の食産業、中でも畜産業は大変に非人道的・非効率的・非持続可能なものです。今現在の生産過程は、地球の資源を危険な速度で枯渇させているだけでなく、消費者の健康をも害しています。2020年だけで、コロナウィルスに加えてアフリカ豚熱や鳥インフルが世界各地で猛威を振るいました。

 大手投資銀行ですら「石油並みに不安定なものは他に家畜くらいだ」と表明しているほどです。現在世界では、地球温暖化や、食糧危機、公共衛生など課題が山積みです。私はその全てが食産業、その中でも肉の消費が原因であると考えています。香港は、世界でも1人当たりの肉の消費量が最大規模です。もう迷っている暇はないのです。地球環境と健康のために、私たちは食生活を見直す必要に迫られています。

 そのような背景があり、Green Mondayは2012年のアース・デーに植物性食品を週に1回食べる運動を始めました。その後は、教育を通じてその大切さを訴えたり、植物性食品の開発を行い、人々に食品の選択肢を増やすソーシャルベンチャーとなったのです。

日本でもじわじわ浸透中。ヴィーガンレストランでも採用

―現在、日本企業とも提携しているようですね。

 そうですね。渋谷に本社を持つ2foods社のカフェ等で提供されていたり、自由が丘のヴィーガンレストラン「菜道」でも採用されています。

 日本の人々は、健康志向で消費するものに気を遣う印象があります。そのような社会的背景もあり、日本でも代替肉の需要が大幅に増加しています。低カロリー・低脂肪で食物繊維とプロテインが豊富なオムニ・フードのラインナップは、日本の人々の需要に応えています。日本のマーケットでこれからも持続可能で健康的な代替食品を広めていきたいと思います。

―2020年に7,000万ドルの資金調達をしました。調達した資金の使用用途を教えてください。

 企画開発、製造、広報、そしてより一層のビジネスの拡大に充てたいと思います。製品の企画から健康的な食事の推進活動まで、全てを幅広くカバーすることが目標です。 アジア、米国、英国を含み既に20以上の市場に参入してきました。さらに国際展開を加速できるとよいですね。

オムニ・シーフードを開発

―今後のビジョンをお聞かせください。またそのビジョン実現のために、どんな企業と提携していきたいですか。

 最近新しいシーフードのラインナップオムニ・シーフードを発表したばかりです。海洋生物は、海洋汚染からマイクロプラスチックや鉛の汚染に晒されています。私たちは、ツナやサーモンといった一般的な魚類の代替版を開発しました。短期的には、この新製品を市場に持ち込むのがゴールです。例えば米国では、植物性原材料からできた魚介類は、全植物性製品の1%にも満たないのです。なので、この市場はポテンシャルが大きいと思います。

植物性原材料からできた代替シーフード Image: Green Monday

 どのような団体でも、環境に良い足跡を残し、食生活の改善に興味があるなら、私たちにとってだけでなくそのコミュニティにとってもポジティブな影響があると思います。

 既にこれまでマクドナルドや、スターバックス、タコベルといった大手企業と連携を図り、一緒に植物性の原材料を使った製品を宣伝してきました。法人でも、レストランでも、同じ価値観を持っていれば歓迎します。みんなが集まって少しずつでも環境に貢献できたらそれだけで変化が生まれると思います。

 私たちのモットーは “make change happen, make green common”です。これからも Green Mondayは人々の意識の向上を図り、健康的な食生活の普及に努めていきます。



RELATED ARTICLES
既存の監視カメラをAIでアップグレード、製造・物流現場の安全性を向上 Spot AI
既存の監視カメラをAIでアップグレード、製造・物流現場の安全性を向上 Spot AI
既存の監視カメラをAIでアップグレード、製造・物流現場の安全性を向上 Spot AIの詳細を見る
宇宙の「ラストマイル問題」に取り組む、北海道大学発スタートアップ Letara
宇宙の「ラストマイル問題」に取り組む、北海道大学発スタートアップ Letara
宇宙の「ラストマイル問題」に取り組む、北海道大学発スタートアップ Letaraの詳細を見る
ソフトウェア開発のエンジニアと「共に歩む」AI 市場を席巻するGitHub Copilotがライバル Augment Code
ソフトウェア開発のエンジニアと「共に歩む」AI 市場を席巻するGitHub Copilotがライバル Augment Code
ソフトウェア開発のエンジニアと「共に歩む」AI 市場を席巻するGitHub Copilotがライバル Augment Codeの詳細を見る
自発的に学習する航空業界向けAI開発 精度バツグンの「ダイナミックプライシング」実現するFetcherr
自発的に学習する航空業界向けAI開発 精度バツグンの「ダイナミックプライシング」実現するFetcherr
自発的に学習する航空業界向けAI開発 精度バツグンの「ダイナミックプライシング」実現するFetcherrの詳細を見る
プラセボ治験者を「データ」に置換し臨床試験を短縮 Johnson & Johnsonとも協業するデジタルツインのUnlearn.ai
プラセボ治験者を「データ」に置換し臨床試験を短縮 Johnson & Johnsonとも協業するデジタルツインのUnlearn.ai
プラセボ治験者を「データ」に置換し臨床試験を短縮 Johnson & Johnsonとも協業するデジタルツインのUnlearn.aiの詳細を見る
人手不足の米テック企業の救世主?中南米や東欧の「隠れた凄腕エンジニア」を発掘するTerminal
人手不足の米テック企業の救世主?中南米や東欧の「隠れた凄腕エンジニア」を発掘するTerminal
人手不足の米テック企業の救世主?中南米や東欧の「隠れた凄腕エンジニア」を発掘するTerminalの詳細を見る

NEWSLETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「オープンイノベーション事例集 vol.5」
もプレゼント

Follow

探すのは、
日本のスタートアップだけじゃない
成長産業に特化した調査プラットフォーム
BLITZ Portal

Copyright © 2024 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.