イスラエル発スタートアップのZesty.co(以下、Zesty)は、人工知能(AI)の力で、クラウド・インフラの使用量を最適化するサービスを提供する。多くの企業は社内インフラのクラウド化を急いでいるが、インフラ使用量を最適化しない限りは、かえってオンプレミスシステムよりもコストがかさむケースもある。Zestyは、AIを用いたアルゴリズムで使用量を自動的に計算し、クラウド・インフラの費用を抑えるサービスを展開しているのだ。全世界で約350社をクライアントに抱える同社が目指す未来を、共同創業者で現CEOのMaxim Melamedov氏に聞いた。

クラウド・インフラ使用量の「最適化」に取り組む

――御社はどんなサービスを展開しているのでしょうか。

 Zestyは、企業のクラウド・インフラストラクチャ(以下、インフラ)を自動で最適化するサービスを展開しています。今日、IT企業は社内インフラ機能において、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)内のAmazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)をはじめ、物理サーバーから仮想サーバーへの移行を進めています。

 クラウド・インフラを一言で表現すると、これまでハードウェア機器で構築されていた物理インフラ(オンプレミスシステム)を、クラウドに置き換えたインフラだ、と言えます。ハードウェア機器のような現実空間ではなく、仮想空間上にインフラを設置しているので、管理・運用がしやすいという利点があります。さらに、セキュリティ上のリスクも低減するので、現在多くの企業がクラウド・インフラへの移行を進めているのです。

Maxim Melamedov
Zesty.co
Co-Founder & CEO
University of DerbyにてBusiness Managementの学士号を取得後、イスラエル空軍でOperations Managerを務める。その後、Logic IndustriesやFeedvisorなどでセキュリティやテック関連企業で勤務し、GimmonixではCustomer Success部門のVice Presidentを務める。2019年1月、Zestyを共同創業し、CEOに就任。

 事実、Grand View Researchによると、2021年の第1四半期に全世界でクラウド・インフラに対して支払われた金額は418億ドルで、対前年同期比35%増えています。

 しかし、クラウド・インフラはその利便性の反面、ネットワークや使用アプリ量の最適化に取り組まなければ、コストが無尽蔵に増えてしまう、という課題があります。従来のオンプレミスシステムのハードウェア機器による維持管理では数年のスパンで収支を合わせていたところ、クラウド・インフラでは毎月お金を支払わなければならないという料金体系の違いがあります。同時に、クラウド・インフラではたくさんの数のアプリケーションが常時稼働しているため(物理インフラでは使用可能アプリケーション数があらかじめ決まっている)、最適化に取り組まなければコストが膨れ上がってしまうのです。

 そこでZestyでは、使用するクラウド・インフラの最適化を実現する2つのサービスを展開しています。1つ目は、AWSとMicrosoft Azureに対応した「Zesty Disk」です。これは、クラウド・インフラ上で使用しているブロックストレージをAIのアルゴリズムで、自動で計算することで、使用量をリアルタイムで削減するサービスです。このサービスを使えば、ブロックストレージにかかる費用を約70%削減することができます。

 2つ目に、「Commitment Manager」です。これはAmazon EC2に特化したサービスで、AWSインスタンス(AWS上で稼働している仮想サーバーの数)をリアルタイムで、AIが自動的に計算する機能を搭載しています。クラウド・インフラがその時必要としているサーバーを自動で計算し、必要な分だけ買ったり、不要なものを売ったりすることが可能なのです。Amazon EC2を使用している企業では、購入したクラウドの約24%が本当は必要なかった、というデータもあります。「Commitment Manager」を使えば、60%程度Amazon EC2にかかるコストを削減することができるのです。

 現在、世界中の350社を超える企業が当社のサービスを使っています。メインユーザーは、企業のクラウド・インフラ担当者、つまりDevOpsのソフトウェア開発運営担当者、サイト・リライアビリティ・エンジニアなどです。クライアントのセクターは、Web3.0からEコマース、フィンテック、サイバーセキュリティ、ヘッジファンドなどの金融機関など、さまざまです。

Image:Zesty HP

すべてのクラウド・インフラ担当者の「夢」

――Zestyを導入したクライアントの成功事例を教えてください。

 社内携帯電話などのIT機器を管理するArmis社の事例をご紹介しましょう。同社はスマホやパソコンをはじめ、印刷機器など社内システムと統合したIoT機器のサイバーセキュリティサービスを展開しているのですが、顧客が増えるにしたがって、クラウド使用量が増加するため、その最適化を必要としていました。Zestyを使用した結果、Amazon EC2に支払うコストを約53%削減でき、年間何百万ドルもの費用削減につながっています。

 Zestyのサービスは、社内インフラにおいて、クラウドを使用するすべての企業を対象にしています。社内のクラウド・インフラ担当者は、Zestyができることを聞くと、思わず笑みを浮かべてしまうでしょう。企業のインフラ・クラウドに対する支出は大きな課題となっているからです。

――競合他社とはどのような形で差別化を図っているのでしょうか。

 Zestyが「自動化」に特化している点です。他のサービスでは「リコメンデーション」や「アラート」で、ユーザーに最適化をアシストしようとしていますが、当社は「自動」で最適化してしまうのです。これにより、企業のクラウド・インフラ担当者は、手動による最適化から解放され、業務の負担が軽くなります。

――Zestyを創業した経緯を教えてください。

 13年間テック企業で勤務した経験から、クラウド・インフラの最適化が課題だと、身をもって知っていたからです。私がクラウド・インフラに携わり始めた当初は、クライアントから、クラウド・インフラはプロダクトがまだよくできていなく、動作が遅いという苦情がよくきていました。

 しかし、キャリアを重ねるに連れ、市場自体が拡大し、クラウド・インフラが当たり前になってきたのです。しかし、コストがかかるという問題が顕在化していました。私自身がコスト高に苦しめられていたこともあり、クラウド・インフラを最適化できるサービスを構築できないかと考え、Zestyを創業したのです。

資金調達でアメリカ市場深耕 日本市場にも関心

――御社は2022年9月のシリーズBラウンドで7500万ドル、累計では1億1720万ドルの資金調達に成功しています。資金の使い道を教えてください。

 現在当社の顧客は350社とお伝えしましたが、世界中でクラウド・インフラを使用している企業は数百万社だと言われています。当社の目標は、すべてのクラウド・インフラを構築している企業にサービスを使ってもらうことです。

 そのために、2022年8月にアメリカ支社をつくりました。アメリカ市場の支持を受ければ、ほかの地域でもZestyが使われる可能性が高いと言えるでしょう。まずはアメリカ市場の深耕を考えていますが、ゆくゆくは世界的に当社のサービスが使われるよう、人員の増強をしていく予定です。

――日本市場に進出する予定はありますか。

 Zestyは、すべてのクライアントに、最高の顧客体験を提供しなければならないと考えています。現在は、日本市場でそれを可能にするカスタマーサポートを展開できる段階にないので、日本市場は最優先というわけではありません。しかし、日本経済は強く、多くの先進的IT企業がありますので、関心はあります。

 当社は、市場を「グローバル」ではなく「ローカル」に捉えています。その地域で、地域の顧客と最良の関係性を築きたいからです。将来的には、日本でも、マーケティングやウェブサイトをはじめ、サービスのインターフェースも日本語で行えるようにしたいですね。

――日本の大企業と協業したいというお考えはありますか?あるとするならば、どのような分野・業種ですか。

 もちろんです。業種はとくに絞り込んではいませんが、機械学習(ML)に特化したサービスを展開していて、クラウド使用量が多い企業が候補に挙げられます。また、協業における初めの形態としては、ディストリビューション、販売代理関係がいいと思います。



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