Convertlab(本社:中国上海市)は、中国初のマーケティングクラウドソリューションベンダーとして誕生したスタートアップ。創業当初、認知されていなかった「マーケティングクラウド」や「MarTech」を中国国内で普及させ、新型コロナウイルスの流行開始を起点として顧客を急速に拡大。共同創業者でCEOの高鵬(Peng Gao)氏によれば「地獄級の難易度」を誇るという中国企業向けサービス市場で成長してきた。同社は現在、中国国内における日系企業との案件を複数推進すると同時に、2023年以後の日本市場展開を視野に入れている。高鵬氏に創業の経緯とプロダクトのポイント、そして日本企業との連携の現状やその将来展望について話を聞いた。

※TECHBLITZのコンテンツパートナーであるジャンシン(匠新)の協力で、中国スタートアップの情報を紹介します。

マーケティングクラウドの本質は、顧客が業界の内部競争を勝ち抜く支援をすること

――創業の経緯とその動機について教えてください。

 私は、SAPで12年間勤めている間、大企業でイノベーションを行うことは困難であるとますます感じるようになりました。そこで、2012年以降、新しい機会を探し始めました。その時ちょうど企業内部で、従来型のプロセスドリブンから当時としてはまだ目新しかったデータドリブンへの、一種のアプリケーションにおけるパラダイム転換が起こっていることに気が付きました。

 しかし残念なことに、SAPでは様々な合理的な理由により、イノベーションの推進に滞りがありました。2011年の年末から私が担当していたグローバルのSE(小企業)クラウドコンピューティング業務が、2015年2月に内部スピンオフ失敗を経験しました。同時に、当時、中国国内では政府の双創(大衆による創業、民衆によるイノベーション)政策が実施されていました。それに背中を押されたこともあり、思い切ってConvertlabを創業するに至りました。

高鵬(Peng Gao)
Convertlab
Co-Founder & CEO
復旦大学を卒業。SaaSと企業クラウドコンピューティングの分野で20年以上の経験を持ち、企業アプリケーション、企業管理、MarTechの3つの分野で豊富な経験と深い洞察を有する。SAPグローバルにてVice-Presidentを務め、複数のSaaS製品の研究開発とマーケティングをリード。ゼロからSAPのグローバル中小企業向けクラウドコンピューティング製品事業部を設立。2015年7月にConvertlabを共同設立し、CEOに就任。

――貴社のプロダクトやソリューションについて詳しく教えてください。

 Convertlabの主要製品は、マーケティングクラウド、というものです。この製品は、北米地域では早くから普遍的でしたが、中国国内では創業当初この名称を誰も知りませんでした。しかし、ビッグデータマーケティングやプライベートトラフィック、DX(デジタルトランスフォーメーション)といったような同じ意味の様々な名称が飛び交っていました。

 マーケティングクラウドの本質は、顧客の経営体系の運営をサポートし、それをオンライン化、デジタル化、自動化、そしてスマート化することにあります。さらに深堀すれば、顧客が内部競争の激しい市場に対応していくことを支援することがその本質です。つまり、企業が自社の高精度の運営能力でライバルと競争しなくてはいけなくなるように迫られてこそ、マーケティングクラウドの価値は高くなるのです。

 実は、創業から3年以上経った後の2018年に初めて、私たちの製品に対する初期のニーズが少しずつ出現してきました。そして、2020年にコロナウイルスが流行し始めた後、中国のマーケティングクラウド市場はようやく急速に成長を始めました。

 2021年には、広汽トヨタ(広州汽車とトヨタ自動車の合弁ブランド)、広汽ホンダ(広州汽車とホンダ技研工業の合弁ブランド)、上汽GM(上海汽車とGMの合弁ブランド)といったような中国国内の自動車ブランド企業が、一斉に私たちの製品のような、「顧客を中心に据えた、デジタル化オペレーションが可能なインフラ」を必要とし始めました。最終的に、自動車OEM企業だけでも、2021年だけで一気に12社から14社の顧客との契約を結びました。

MarTech大会開催で、認知の面から顧客の思考を変えていく

――2018年以前には、貴社と直接マッチするニーズが基本的になかったとのことでした。そのときは、どのようにして貴社のプロダクトの普及を図ろうとしたのですか。

 例えば、駆け込み営業をはじめとした各種の手段を試みました。しかし、中国国内の大企業は、私たちのマーケティングクラウドに対する普遍的な認知が不足していることに気が付きました。色々試すも効果がなく、2017年には、私たちは絶望し始めました。

 その後、思考をめぐらす中で、最終的に認知の面から顧客の思考を変えていくことでしか、市場の突破口をこじ開けることはできないという考えに至りました。確かにコストと時間の観点からすれば、スタートアップ企業は潜在的な市場に対していわゆる市場の形成のための「教育」を自ら行うべきではありません。しかし、MarTechという概念が依然として浸透していない市場に対して、私たちは背水の陣で、中国国内初の第1回MarTech大会を開催しました。

 その後、2018年6月から8月にかけて、顧客の高精度運営管理に対するニーズの出現を目の当たりにしました。ちょうどそのころに、私たちの初期の顧客に当たるスターバックスやユニクロ、そしてIKEAなどのブランドが、MarTechやマーケティングクラウドを受け入れ始めたのです。

――現在、貴社はすでにユニクロをはじめとした日系企業との事例があるとのことでした。ユニクロ以外の日系企業との事例には、他にどのようなものがありますか。

 私たちは、2021年の下半期から日本企業との案件を本格的に探索し始めました。当時はまさに日本市場に進出したいという非常に簡単な判断に基づき、動き始めました。その中で、私たちの2020年の2回にわたる資金調達の投資家でもある騰訊(テンセント)とのご縁を通じて、日立との協業を開始し、共に日本企業の顧客を開拓し始めました。その進展は、現在に至るまで非常に順調です。

 例えば、私たちの日系企業の顧客の1つであるバンダイの案件では、まずプライバシー強化技術により、業務上喫緊で必要な外部のデータへの安全な接続を確保します。そして、そのデータに見られる多元的な特徴をモデルコンピューティングやその予測に利用しています。

 彼らのマーケティングクラウド導入の取り組みは、すでに初期の成果を出しています。その中で、私たちは彼らが自身の製品の人気度の変化トレンド観測や潜在的なターゲット顧客の高精度特定による新規顧客獲得を図るにあたり、その予測と意思決定の補助の面で支援をしています。現在は、その初期の成果に基づき、ソリューションの更なる体系化を進めているところです。そのほか、多くの日系企業との案件が初期・中期の段階にあります。

日本市場へSIerの協業パートナーを探索 その後専門チーム発足へ

――現在の海外展開戦略はどのようにお考えですか。その中で、日系企業、特に大企業を顧客とした案件や日本市場展開において、どのような協業パートナーシップを求めますか。

 私たちは、まず中国周辺の国々に当たるアジア地域への展開を進めていく予定です。東南アジアも1つの有力な進出先ですが、非常に断片化・分散化の傾向が顕著な市場であることを考えた場合、大企業が密接に集中している日本市場を主な展開先にしていく方針です。

 しかし、まずは中国国内における日本企業との幅広い案件に注力したいところです。日本市場への進出に至っては、現在も機会を伺い続けています。私たちは、現在の状況下では、協業パートナーがいて初めて日本でのプロジェクト推進が可能になります。そこで、1社以上の日本現地に籍を置くSler(システムインテグレータ)の代理企業との協業の機会を探しています。

 それと同時に、代理協業パートナーを得たとしても、その後遅くとも1年半までには、日本市場で独立して製品のオペレーションを展開する能力を有する日本市場専門チームを設置する必要があると考えています。

Image: Convertlab

――日本市場をどのように捉えていますか。

 中国市場と比べて、日本市場は非常によい市場であると捉えています。私たちは、中国大陸の企業向けサービス市場を「地獄級の難易度」を有する市場だと呼んでいます。というのも、市場は確かに大きいように見えますが、日本市場のような単一市場と異なり、同一の顧客でも、地域が異なるだけで、必要なサービスや環境が全く異なってくるからです。

 同時に、日本は、米国と同等レベルの優秀なソフトウェア市場である一方で、閉鎖的な市場でもあります。そのため、Slerの協業パートナーが非常に重要になります。日本市場はDXを中心としたその発展空間が大きく残されているため、必然的に現地での競争に直面することになりますが、私たちにはその競争を突破する自信があります。私たちのスローガンは最も専門的な技術で最も挑戦的な課題を解決することです。同業他社もできることをやり続ければ、市場シェアがますます低下してしまうため、製品能力において、より価値を出していきたいです。

――つまり、今後の海外展開のためには、貴社はデジタルマーケティングの顧客運営を共同で行うための協業パートナーが必要であるということですか?

 その通りです。私たちが今必要としているのは、人工知能(AI)に基づいた業務のスマートオペレーション能力を増強し、そのオペレーションに関連するコストやハードルを低減することです。AIでこの課題を解決しようとする理由として、現在の私たちのオペレーションサービスは、普遍的に人間の専門家の経験に依存しており、運営側・顧客側がともに莫大なリソースを投入しないといけないという背景があります。

 そのため、私たちはAIの力を借りたデータ探査能力やモデルアルゴリズム、そして予測能力により、業務のオペレーションを可能な限り自動化・スマート化し、顧客のオペレーションコスト削減をサポートするのに加えて、人間への依存を減らし、AIからクオリティの高いマーケティングの意思決定に関するアイディアを得ることができるようになります。これも、私たちの競争力となるでしょう。

2023年には日本市場へ 「無人の域」でより完成度の高い製品を追求

――もし今後日本市場のような国外市場に進出するとなった際には、資金調達が必要になりますか?

 新しい資金調達の機会も非常に歓迎しています。もし、追加の資金サポートがあった場合は、海外進出をより加速していくことができるようになります。というのも、日本市場の場合、その他地域の市場と異なり、敏捷かつ直接的なアプローチで参入することは難しいため、より多くの時間を必要とすると考えています。

 とりわけ、現在の経済情勢のもとでは、もし外部の資金提供があれば、日本市場進出の時間軸を必ず前倒しすることができるでしょう。

Image: Convertlab

――最後に貴社の今後のマイルストーンと将来的なビジョンについて教えてください。

 私たちのビジョンの1つは、製品の最も実践的なスマートオペレーションとリモートオペレーションに対応した体系を構築していくこと、もう1つは、中国市場から出ていき、海外市場への進出を進めていくことです。そのマイルストーンとして、2023年に日本市場に進出し、2025年には同市場で1000万ドルの販売額を達成することがあります。これを達成するためにも、継続的な研究開発へのリソース投入が必要であるほか、現地の協業パートナーのサポートも必要になります。

 私たちの一部の製品は、スマートオペレーション能力などにおいて、いわゆる「無人の域」に進入し始めていると自己分析しています。北米地域の大企業を中心とする同業他社ですら、この分野においては、注目される、あるいは極めて成熟したシステムのレベルには至っていないのが現状です。

 注目したいのは、北米の同業界の著名企業はすべて大企業であるということです。彼らは、2015年から2018年の間、会社の買収と合弁だけでも、1社あたり平均100億ドル以上を費やしているとのことです。 それに対し、弊社の現在(2022年11月下旬)までの資金調達金額は合計で1億ドルにすぎません。

 したがって、私たちのビジョンを今後実現していくためには、非常に莫大なリソースが必要であり、その実現の過程では、研究開発と企業生存を秤にかけながら意思決定をしていくほかありません。いずれにせよ、私たちがすでに到達しているこの「無人の域」で、より完成度の高い製品を追求するとともに、マーケティングクラウド業界における競争力を形成していく予定です。



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