きっかけは留学先の米カンザス州で味わった苦労
――どうして会社を立ち上げようと思ったのですか。
私は中国で生まれ、2007年から留学生としてアメリカのカンザス州で5年ほど過ごしました。カンザス州は何もない辺ぴなところなので、アジアの製品やブランドを手に入れることがほとんどできずに不便な思いをしました。大学を卒業してからロサンゼルスに移ると、アジア系の人口やアジア系レストランの多さを目の当たりにしました。「アジアの製品やブランドを扱うEコマースの需要があるかもしれない」と思ったのが、Yamiを始めたきっかけです。
――大学卒業後、すぐにビジネスを立ち上げたのですか。
大学を卒業した後、Eコマースの会社を立ち上げようと、社名を考えたり、ベンダーを探したり、サイトの立ち上げ方法を学んだりと、6〜8カ月ほどかけて準備に取り組みました。そして2013年にYamiのウェブサイトをスタートしました。Yamiが私の仕事人生における、初めての会社となります。
――YamiはどんなECサイトですか。
私たちはアジア商品とブランドを専門に扱うアメリカに拠点を置くECサイトです。商品カテゴリーは美容用品や化粧品、お菓子が中心となっていますが、ママと赤ちゃんのための製品、例えばおむつなども扱っています。日本のブランドの美容用品や化粧品、お菓子もたくさん扱っています。商品数は約20万点に上ります。
私は中国出身ですが、はじめは日本や韓国のお菓子からスタートしました。というのも中国商品はリアルのマーケットにたくさんある一方、日本や韓国のスナック菓子は入手できる商品がとても限られていたからです。後に中国の商品へと拡大しました。
――Amazonなどとの違いは何ですか。
ビジネスモデルはAmazonと同じですが、アジアの商品を専門に扱っているところが最大の違いです。Amazonは需要が大きい商品に焦点を合わせてUXがデザインされているので、そこからアジアの商品、アジアのブランドを探すのはとても面倒なプロセスになります。しかし、私たちはアジアに特化しているので、アジアの商品・ブランドを探して買う場合にとても使い勝手が良いUXとなっています。
例えば、日本人の方であれば、日本の商品を探すでしょうし、中国人の方であれば、中国の商品を探すでしょう。私たちはテクノロジーを使ってパーソナライズ・カスタマイゼーションし、お客様のニーズを理解しているので、いろいろな種類の商品をリコメンドすることができます。また、フルフィルメント・センターでは、テクノロジーを使ってパッケージをより速く、より美しく仕上げることができています。
もちろんリアルのスーパーマーケット、例えばNijiyaやMitsuwaなど日系のスーパーマーケットもアメリカにはあります。ですが、多くの方々がこれまで以上にオンラインでショッピングする機会が増えていますね。
Image: Yami
――ソーシャルメディアの使い方も工夫しているようですね。
はい。私たちは、ソーシャルメディア・マーケティングに多くの投資をしています。なぜなら、多くのお客様がソーシャルメディアに時間をますます費やすようになっているからです。顧客の獲得に向けて、例えば、なぜ日本のブランドは最高なのか、優れているのかなどの情報発信にソーシャルメディアを活用しています。
急成長の理由は、アジア人口増とアジアブーム
――YamiはtoC向けの販売ですが、どんな顧客に多く利用されていますか。
私たちのお客様は一般の消費者で、その多くはアメリカに住むアジア人と、アジア製品が好きな非アジア系の方達です。日本のスナック菓子は、アジア人以外にも人気があります。
会員は200万人以上おり、年間に数億円の売上があります。創業以来、平均して2倍ずつ成長してきました。Yamiはアジア製品のeコマースとしては、米国で最大規模を誇っています。アジア系以外の顧客も増やしていきたいです。
――なぜYamiはそれほど急成長できたと思いますか。
それは足元の市場が成長しているからです。今、北米に移住するアジア人、留学するアジア人学生が増えています。また、アジアの文化、食文化、ポップカルチャーの人気を受けて、アジア人以外のお客さまも増えています。例えば、アメリカ人は日本の漫画が大好きで、それによって日本の製品全般に興味を持って好きになります。顧客基盤がどんどん増えているからこそ、ビジネスも急速に拡大しているのです。
Image:Yami
――新型コロナの影響は出ていませんか。
プラスの影響もあれば、マイナスの影響もあります。プラス面では、多くのお客様がオンラインで買い物をするようになったことです。マイナス面は、人手不足に陥ったことです。韓国や日本、中国からの国際的な海上輸送のコンテナ費用はどんどん上がり、人件費も上がっています。
――2022年3月には、シリーズBラウンドで5000万ドル(約68億円)をBalsam Bay Partners、Altos Ventures、JP Morganなどから調達しましたね。
調達資金はサプライチェーンの強化に投資しました。日本でもオフィスを開設し、ベンダーやブランドとの関係強化に努めています。
そのほか技術への投資も行っています。より多くのお客さまにアプローチできるように、ショッピング体験の改善を続けます。そして、プロダクトを作るのは人ですから、採用を強化し、優秀な社員を雇用していきます。
Image:Yami
顧客が求めているのは文化体験 アジアと西洋の架け橋になりたい
――日本の大企業に求めたいパートナーシップはありますか。
私たちは既に大手の化粧品ブランドや食品メーカーなど日本企業の製品を多く取り扱っています。商品の半分は日本のブランドであり、日本のベンダーとも強いつながりがあります。今後も、日本のブランドや商社とパートナーシップを築きたいと願っています。もし日本の投資家が、私たちに興味を持ってくれるなら、投資家の方とも協力したいですね。
――最後に御社の長期的なミッションを教えてください。
私の長期的なビジョンは、Yamiを通じてアジアと西洋との架け橋になることです。母国から遠く離れたアメリカやカナダなどで暮らすアジア人にとっては、私たちが販売する製品を通じて故郷とのつながりを感じることができます。
アジア系以外のお客様には、アジアの製品を通じて、背景にあるアジア文化を理解してもらいたいと思っています。例えば、日本のお菓子を食べたり、麺類を食べたりすることで、日本の食文化に触れることができますよね。
もともとYamiの社名は「Yamibuy」でした。みんなに美味しい商品を買ってもらうためのEコマースという意味で名付けました。しかし、お客様にとっては商品を買うだけのサイトではありません。私たちは友達、コミュニティのような存在です。母国を離れても、私たちのサイトを通じてつながりを感じられる場所なんです。だから社名を「Yami」と変えました。これからもアジアと西洋諸国に橋を架ける存在になりたいと思います。