今まで多くのSF映画が世に送り出されてきたが、シリコンバレー、テクノロジー関連の映画も数多い。今回「The Silicon Valley Startups 100」編集部では、映画×テクノロジーをテーマに、「実写化されたシリコンバレー」「テクノロジーの未来」「リアルライフテクノロジー」の3つに分けて映画を紹介する。
実写化されたシリコンバレー
Apple創業者Steve Jobsは一体どんな人物だったのか「Jobs」(2013)(日:スティーブ・ジョブズ)
1974年の大学時代から2001年のiPod製品発表までのスティーブ・ジョブズを描いた作品。Appleの創業、資金調達、そして自らが創業した会社を解雇され、その後CEOに復帰するまでを描く。ハリウッド俳優であり自身も投資家として活動するアシュトン・カッチャーがスティーブ・ジョブズを演じた本作。2015年の映画Steve Jobsとは違い、ジョブズの半生を追っていく。ジョブズと激似と言われたアシュトン・カッチャーの容姿にも注目だ。
製品発表会の裏で巻き起こるドラマ「Steve Jobs」(2015)(日:スティーブ・ジョブズ)
公式伝記「スティーブ・ジョブズ」を映像化。1984年のMacintosh、88年のNeXT Cube、98年のiMacという3回の製品発表会の舞台裏を描く。物語は1894年、Macintoshの製品発表会本番40分前、どうしてもMacintoshに「ハロー」と挨拶をさせたいスティーブ・ジョブズの姿から始まる。完璧を追求し部下を叱咤する姿や元恋人クリスアンとの喧嘩、その間にできた娘リサを認めない姿などを通してスティーブ・ジョブズの内面や矛盾を描いている。「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイルが監督を務め、「X-Men」シリーズのマイケル・ファスベンダーがスティーブ・ジョブズを務める。実際に一部のロケはシリコンバレーで行われた。
Facebook誕生の秘密「The Social Network」(日:ソーシャルネットワーク)
世界最大のソーシャルネットワークサービス「Facebook」の誕生を描くドラマ。ハーバード大学2年のマーク・ザッカーバーグはボストン大学に通う恋人のエリカとデート中に振られる。マークは帰宅後、彼女に振られた腹いせに彼女の悪口をブログに書き、ハーバード大学のサーバーをハッキングし女子の品定めサイト「Facemash」を立ち上げる。それは立ち上げから2時間で2万2000アクセスを集める。一見若くして成功したように見えるマーク・ザッカーバーグの苦悩とFacebookが世界中に知れ渡るまでにあった金、女、仲間からの裏切りを丁寧に描く。「セブン」のデヴィッド・フィンチャーが監督を務める。プライバシー問題で現在も色々な問題を抱えるFacebook。Facebook誕生にはどんな困難があったのか。シリコンバレーで若くして成功した起業家に迫る。
Googleが舞台のコメディ「The Internship」(日:インターン)
ビリー・マクマホンとニック・キャンベルは高級時計を売るセールスマンコンビ。ある日顧客から会社が倒産したことを聞かされた二人。社長に詰め寄ると「何もかもがコンピューターの時代だ!」と言われ、仕事を失ってしまう。しかし、ビリーが見つけてきたGoogleのインターンに応募してみたら、なんと二人とも面接に受かってしまったのだ。Google協力のもと撮影された本作。コメディ映画常連のヴィンス・ヴォーンとオーウェン・ウィルソンの掛け合いが面白く、テクノロジーと無縁のおじさん二人がいきなり最先端テクノロジーに直面する姿とGoogleの企業文化をユーモラスに描いている。Googleの共同創業者である、セルゲイ・ブリンがカメオ出演を果たしている。
テクノロジーの未来
未来の世界で人々はVRに逃避するか「Ready Player One」(日:レディ・プレイヤー1)
2045年、荒廃した世界に希望失った人々が「オアシス」というVR世界に現実逃避をする時代。オアシスでは創業者であるジェームズ・ハリデーの遺言により、勝者にはハリデーの莫大な遺産とオアシスを操る権限が与えられるという「アノラック・ゲーム」が開催されていた。プレイヤーはハリデーがオアシス内に隠したイースターエッグを手に入れるための3つの鍵を手にするべく毎日ゲームに挑んでいた。貧困街に母とその彼氏と住むウェイド・ワッツもその中の一人だったがウェイドが最初の鍵を手にしたことにより、大きな陰謀に巻き込まれていく。巨匠スティーブン・スピルバーグが監督・製作を務める本作は現代にすでにあるテクノロジー「VR」がどのような未来を作り出せるのかを体感できる作品だ。
またハリデーとモローの関係はスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックの関係を彷彿とさせる。
日本人には嬉しいことに数多くの日本のゲームやアニメキャラクターが登場する映画でもある。また日本の俳優である森崎ウィンがメインキャラクターの一人であるトシロウ役演じている。
ロボットは敵かそれとも味方か「I, Robot」(日:アイ, ロボット)
舞台は2035年。すでにロボットが人間とともに生活している世界。ロボットたちはロボット三原則というルールに従い、人間を支援する役割を果たしていた。シカゴ警察に勤めるロボット嫌いのデル・スプーナーはロボット工学の第一人者であり、スプーナーの恩人であるアルフレッド・ラニング博士が死亡したとの連絡を受ける。そしてその容疑者として浮上したのは人間に危害を与えられないはずのU.S.ロボティクス社が新たに開発したNS-5型の「サニー」と名乗るロボットだった。主演をハリウッド俳優のウィル・スミスが務める本作。ロボットとAIが発達した世の中で、人間はロボットとともに共生できるのか。AIとロボットは本当に人間を支援する存在となり得るのか。現在様々なロボットの開発やAIを利用したテクノロジーが社会にはあるがそれらは今後どのような進化を遂げていくのか。この映画は一つの答えになるかもしれない。
コンピューターに支配された世界。「Matrix」(日:マトリックス)
ニューヨークでサラリーマンをしているトーマス・アンダーソンは凄腕のハッカー、「ネオ」という裏の顔を持っていた。ある日、ネオはコンピューターに現れた謎のメッセージに導かれ、トリニティという女に出会う。トリニティの仲間、モーフィアスと会ったネオは現在自分が生きている世界はコンピューターによって作られた仮想世界であり、現実の自分はコンピューターの動力源として培養されていることを知る。世界的大ヒットを遂げたMatrixシリーズ。主演はキアヌ・リーブス、脇をローレンス・フィッシュバーンらが固める。技術的にもワイヤーアクションやVFXを利用し「映像革命」と言われた本作。コンピューターの反乱によって、人間が奴隷化されるという衝撃的内容だが、AIが発達してきている現在、このような未来がもしかしたら人類を待っているかもしれない。
ちなみに冒頭で流れる緑色のコードがカタカナであることに気づいている方も多いと思うが、あれはお寿司のレシピだそうだ。
電脳化技術が進んだ近未来「Ghost in the Shell」(日:ゴースト・イン・ザ・シェル)
電脳化技術が進み人がネットに脳から直接アクセスそして義体化(サイボーグ化)するようになった未来。全身サイボーグの少佐率いる、サイバー犯罪やテロ行為を取り締まるエリート捜査集団「公安9課」。少佐は仲間のバトー、クゼらとともにハンカ・ロボティクス社の関わる事件を捜査していたが、その最中に少佐は自分の記憶が改ざんされていることに気がつく。原作は日本の漫画「攻殻機動隊」。原作内では電脳化技術が発達し、ロボット、サイボーグが共存する世界でテロやサイバー犯罪に挑む、草薙素子少佐と公安9課の仲間たちの活躍を描いている。主演にスカーレット・ヨハンソン、そして日本のビートたけし、桃井かおりも出演している。
物語の中心にある電脳化技術は現在、イーロン・マスクがCEOのNeuralinkなどが取り組んでいるNeural Network技術やBrain Machine Interface (BMI)という言葉で知られている。脳から直接インターネットに繋げる時代はすぐそこかもしれない。
リアルライフテクノロジー
人工知能OSに恋をしてしまった「Her」(日:her/世界でひとつの彼女)
代筆ライターのセオドアは妻と別居し、傷心の日々を送っていた。ある日、セオドアは人工知能OSサマンサの声に惹かれるようになり、サマンサに恋愛感情を抱く。人工知能OSに恋をするというSFファンタジーな作品ながらも傷心の孤独な男の繊細さと愛する気持ちを描いた恋愛ドラマ。監督は鬼才スパイク・ジョーンズ。主演はグラディエーターのホアキン・フェニックス。魅力的な声、サマンサを演じたのはスカーレット・ヨハンソン。現在Siriなどの音声AIアシスタントがすでに人間をサポートしているところを見るとよりAIアシスタントが進化し自然な会話ができるようになれば、音声アシスタントに恋をしてしまう人も出て来るかも。
世界を救う実業家「Iron Man」(日:アイアンマン)
スターク・インダストリーズの社長であるトニー・スタークは、自身が開発したクラスターミサイルのプレゼンテーションのためアフガニスタンを訪れる。アメリカ軍基地を訪問中にテロ組織に襲撃され、ミサイルがトニーが乗った車を直撃、意識を失う。意識を取り戻すと自身はゲリラの本拠地に拉致されていて、胸に車載用のバッテリーにつながった電磁石が繋がれていた。爆発の際にトニーの心臓を直撃した破片を電磁石で引き止めなければ死んでしまうという。トニーは解放の条件であるクラスターミサイルの組み立てを了承し、組み立てを同じく捕虜で捕まり電磁石をトニーの心臓につなげたインセン博士とともに開始する。作業中に生命を維持するため、エネルギーを生み出す熱プラズマ反応炉「アーク・リアクター」の小型版を密かに作成することに成功し、それと連動するパワードスーツ「マークワン」を開発する。言わずと知れた「アイアンマン」シリーズ、そして「マーベル・シネマティック・ユニバース」第1作目。
シリーズを追うごとに進化していくアイアンマンのパワードスーツであるが、これを現実にしようとしているスタートアップがあることをご存知だろうか。イギリスのスタートアップGravityはアイアンマンのように飛べるジェットスーツを開発している。
Image: Gravity
またトニー・スタークのキャラクターは起業家であるイーロン・マスクがモデルの一人と言われており、実際にロバート・ダウニーJr.は2008年のアイアンマン撮影の際にイーロン・マスクに手助けを求めたという。ちなみにIron Man2ではイーロン・マスク本人がカメオ出演を果たしている。
テクノロジーを題材にした映画はまだまだある。後編へ続く。