image: mentalmind / Shutterstock
K-POPがアジアを飛び越えて世界各地で認知を広めているように、スタートアップ業界でも「K-STARTUP」が無視できない存在となりつつある。今年1月に米ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー展示会「CES」では、今年も「韓国の存在感がすごい」と来場者の間で話題に。それもそのはず、スタートアップの参加社数は本場の米国を抜いて韓国が最多だった。韓国スタートアップの参加熱の背景には、グローバル進出への積極性や、韓国政府の後押しがあるようだ。

※TECHBLITZでは、韓国/韓国系スタートアップを独自に調査。記事後半では、中でも注目の5社を紹介します。

<目次>
韓国スタートアップが米国を数で圧倒
ユニコーン企業数で後塵を拝す日本
TECHBLITZが選ぶ、韓国/韓国系スタートアップ5選
 1. Dot(大韓民国)
 2. Graphene Square(大韓民国)
 3. Sendbird(米国)
 4. Tridge(大韓民国)
 5. StradVision(大韓民国)

\紹介企業5社の詳細はこちら/

韓国スタートアップが米国を数で圧倒

 主催者発表によると、CES2024には全体で4,300社を超える企業が出展し、そのうちスタートアップは過去最多となる1,400社超を記録。このうち、スタートアップは韓国が約500社と、米国を大きく引き離して最多となった。

 韓国の中小ベンチャー企業部(日本の省に相当)によると、今年は韓国のスタートアップ128社がイノベーション賞を受賞し、全体の35%を占めた。2019年はわずか7社だったため、5年間で20倍近くに増えたことになる。

 さらに、各分野の中で最高の評価を得た製品に送られる「ベスト・オブ・イノベーション」には、3Dプリント製のロボット義手を開発する「Mand.ro(マンドロ)」、ブロックチェーン技術を利用したオンライン投票システムの「zkrypto(ジクリプト)」、エアロポニックス技術による栽培ソリューションの「Midbar(ミッドバール)」など8社が選ばれた。

 会期中には、MicrosoftのCEOであるSatya Nadella氏がMand.roや、音声生成AIの「Gaudio Lab(ガウディオ・ラボ)」のブースを訪れ、製品の説明に熱心に耳を傾ける一幕も。MicrosoftはOpenAIの初期投資家として知られ、近年は投資動向にも注目が集まっている。

スタートアップが集まるCES会場内の「Eureka Park」を目指す来場者(Consumer Technology Association提供)

ユニコーン企業数で後塵を拝す日本

 韓国スタートアップの参加社数が群を抜いている背景には、韓国政府や関係機関が協力し、100社が出展可能な「K-STARTUP」の大型ブースを運営するなど公的機関の支援が充実していることに加え、CESでの実績がスタートアップにとって有効なマーケティング施策と捉えられている風潮などもある。

 そもそも、韓国政府は文在寅政権時代の2017年、スタートアップ育成支援などを掲げて中小企業庁を中小ベンチャー企業部へと格上げ。政府主導でエコシステムの構築に取り組んできた。Crunchbaseの集計によると、2024年2月時点の韓国のユニコーン企業数は21社で、日本の14社を上回っている。

 中小ベンチャー企業部のオ・ヨンジュ長官は「デジタルエコノミーのボーダレス化および国内市場の頭打ち感を鑑みると、スタートアップがインターナショナルに活躍の場を広げていくことは選択肢の一つではなく必要不可欠なことだ」とし、グローバル化への支援を続ける意欲を示している。

TECHBLITZ編集部が選ぶ、韓国/韓国系スタートアップ5選

 数ある韓国スタートアップの中でも、過去にCESで「ベスト・オブ・イノベーション」を獲得したスタートアップや、ユニコーン企業として活躍するスタートアップはとりわけ注目に値する。TECHBLITZ編集部が選ぶ、韓国/韓国系スタートアップ5社はこちら。

1. ​​Dot

​​Dot
デバイスに点字を付与し、スマートシティに貢献
設立年 2015年
所在地 大韓民国 (韓国) ソウル
 Dotは、各種デバイスに適用できる、可動式点字技術。高さ1mm未満の点が凹凸に動くことで点字を生成 (アクチュエータによって駆動)。ATMや発券マシン、電子掲示板、ヘルスデバイス、車のハンドルなどあらゆる機器に適用できる。2023年のCESベスト・オブ・イノベーション賞を受賞。
image: Dot

2. Graphene Square

Graphene Square
グラフェンを大量生産し様々な商品として販売
設立年 2012年
所在地 大韓民国 (韓国) ポハン
 Graphene Squareは、産業規模のグラフェン生産技術と、研究機関や一般消費者向けの様々なグラフェン関連商品。ソウル大学からのスピンオフである同社は、特許取得済みのR2R化学蒸着技術により、高品質グラフェンの大量生産を実現。2023年のCESベスト・オブ・イノベーション賞を受賞。
image: Graphene Square

3. Sendbird

Sendbird
チャットや音声通話機能をアプリ内に構築
設立年 2013年
所在地 米国 カリフォルニア州 サン・マテオ
 Sendbirdは、チャット / 音声 / 動画によるコミュニケーション機能を、アプリ内に容易に導入できるプラットフォーム。ヘルスケアやデートアプリ、カスタマーサービスで活用されている。2021年4月に、$100Mの資金調達を実施。韓国発としては12社目となるユニコーン企業となった。
image: Sendbird

4. Tridge

Tridge
農産物バイヤーに起こりうる取引リスクを抑制
設立年 2015年
所在地 大韓民国 (韓国) ソウル
 Tridgeは、データ提供と人的サポートによって、バイヤーがスムーズに世界の食品 / 農産物を取引できるプラットフォーム。三井物産、Lotte Mart、Costco、Nestle、Walmart、Carrefourなど、農家からグローバル小売業者まで幅広い顧客を持つ。
image: Tridge

5. StradVision

StradVision
ディープラーニングによる物体認識技術
設立年 2014年
所在地 大韓民国 (韓国) ソウル
 StradVisionは、高額なセンサーを用いずとも車両や物体を高精度に認識する、自動運転や先進運転支援 (ADAS) 向けの物体認識ソフトウェア。深層学習ベースの知覚アルゴリズム技術を活用した同社の物体認識ソフトウェア「SVNet」は、高額なセンサーを用いずともカメラ画像から車両や物体をリアルタイムかつ高精度に認識、検出可能。
image: StradVision

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