2026年10月5日から7日までの3日間、大阪のうめきたエリアと中之島エリアを舞台に、Global Startup EXPO 2026(GSE2026)が開催されます。
テーマは「Deep Tech to Industry with the World」。バイオ・ヘルスケア、量子、フュージョンエネルギー、宇宙、AI・先端ロボット、半導体・通信という6領域を中心に、国内外のディープテックスタートアップや投資家、事業会社、研究者が集まります。
会期中には、トークセッションやピッチコンテスト、ブース展示、マッチングプログラムなどが予定されています。前回のGSE2025には2日間で1万人を超える来場者が集まり、国内外のスタートアップ約150社が出展しました。今回は会期を3日間に広げて開催されます。
本記事では、まず参加を表している米国のトップティアVC2社を取り上げ、続いてTECHBLITZ編集部が注目するスタートアップ5社をご紹介します。
TECHBLITZはGlobal Startup EXPO 2026のメディアパートナーとして参画します。目次
・第1部:米国のトップティアVCが大阪に来ます
・第2部:TECHBLITZ編集部が注目するスタートアップ5社
・第3部:ノーベル賞受賞者を含む多彩な登壇者
・第4部:開催概要
第1部:米国のトップティアVCが大阪に来ます
a16zが注力する「アメリカン・ダイナミズム」
まずは、Andreessen Horowitz(a16z)。2009年に設立され、2026年1月時点の運用資産は900億ドルを超えます。Facebook、Airbnb、Coinbase、Slackなどへの投資で知られる、シリコンバレーを代表するVCの一つです。
今回注目したいのは、a16zの知名度だけではなく、近年どの領域に投資を広げているかです。
同社は2022年から、防衛、宇宙、製造、サプライチェーンなど、国家基盤に関わる領域を対象とする投資プラクティス「アメリカン・ダイナミズム(American Dynamism)」を展開しています。投資先には、防衛テクノロジーのAnduril(アンドゥリル)、精密部品製造のHadrian(ハードリアン)、自律型水上艇を開発するSaronic(サロニック)などが並びます。ソフトウエアに加え、製造設備やサプライチェーンを伴う産業領域への投資を強めていることが特徴です。
こうした投資領域は、製造業や素材、サプライチェーンに強みを持つ日本のディープテックとも重なります。a16zが日本企業の技術や事業性をどのような視点で捉えるのかは、会場で注目したいポイントの一つです。
*a16zは公式サイト上で参加を表明した投資家として紹介されていますが、本稿執筆時点では登壇者の個人名は公表されていません。
DuolingoやIonQを担当したパートナーが登壇
New Enterprise Associates(NEA)からは、パートナーのAndrew Schoen氏が登壇します。同氏の経歴と投資実績を見ていきましょう。
NEAは1977年設立で、運用資産は250億ドルを超えます。Schoen氏は米投資会社ブラックストーンのM&A部門を経てスタートアップのFlicstartを共同創業し、2014年にNEAに入社しました。現在はテクノロジー投資チームのパートナーを務め、2024年6月にベンチャーキャピタル投資委員会のメンバーに昇格しています。投資領域はAI、サイバーセキュリティ、フィンテック、フロンティア技術などです。
投資先には、上場企業となった語学アプリのDuolingo、量子業界で初めて米国上場を果たしたIonQなどがあります。NEAの公式プロフィールによると、Duolingoへの初回投資は2012年、イオントラップ方式の量子コンピューターを開発するIonQへの初回投資は2016年です。量子技術が現在ほど投資テーマとして広がる前から、IonQに関わってきた投資家の一人です。
ほかにも、日本発のAIスタートアップであるSakana AI(初回投資は2024年)をはじめ、AIのClarifai、音声入力のWispr、農業ロボティクスのAigen、NYの地熱冷暖房のDandelionなど、ソフトウエアからハードウエアまで幅広い投資先が掲載されています。日本で開かれる今回のイベントという点でも、Sakana AIへの投資実績は目を引きます。
「"100年企業"を創り上げる」を理念に掲げ、約50年前の設立以来、長い投資サイクルを経験してきたNEAが2026年のディープテックをどのように見ているのか。a16zとNEAという米国のトップティアVC2社の視点を同じ会場で聞ける点も、GSE2026の見どころです。
第2部:TECHBLITZ編集部が注目するスタートアップ5社
ここからは、登壇者リストの中から編集部が注目するスタートアップ5社を挙げます。核融合、AI半導体、量子計算、宇宙、光学領域から1社ずつピックアップしました。
国策の追い風を受ける、核融合の「ピック&ショベル」
代表取締役会長兼CEO・Chief Fusioneerの小西哲之氏が登壇します。政策と資金調達の両面で、直近の動きが活発な企業です。
同社の特徴は、核融合炉そのものではなく、ジャイロトロン(プラズマ加熱装置)や熱・燃料サイクル設備など、核融合発電所に必要な周辺機器・システムを手がけていることです。ゴールドラッシュでスコップを売る企業になぞらえた「ピック&ショベル」型で、特定の炉方式に依存しにくい事業ポジションを取っています。
政策面でも動きが進んでいます。政府の日本成長戦略では、フュージョンエネルギーが17の戦略分野の一つに位置づけられました。脱炭素とエネルギー安全保障の両面から、研究開発や実証への支援拡充が進められています。
2026年8月には、シリーズDのファーストクローズとして、167.2億円の出資と90億円の融資・融資枠を合わせた計257.2億円の資金確保を発表しました。資金は、日本・米国・カナダで進める実証プログラムや、ジャイロトロンの量産体制整備などに充てる計画です。
実用化まで長い時間を要する核融合分野で、実証と量産に向けた投資が具体化し始めています。発電所を支える機器や供給体制を整える同社の事業は、第1部で触れたa16zのアメリカン・ダイナミズムとも重なる部分があります。
省電力AI半導体で、日本から世界の「エッジ」を狙う
創業者兼CEOのサキャ・ダスグプタ氏が登壇します。エッジAIの実装を支える半導体企業として注目したい一社です。
同社が手がけるのは、エッジ向けの省電力AI半導体です。AIの話題はデータセンターやGPUに集まりがちですが、工場、車両、ドローン、インフラ監視などの現場では、限られた電力や通信環境でAIを動かす必要があります。そこで重要になるのが、演算性能と消費電力のバランスです。EDGECORTIXは、高い電力効率を持つAI推論基盤を開発しています。
2025年にはシリーズBを超過申し込みで完了し、累計調達額は1億1,000万ドルを超えました。2026年4月には、インドのファブレス半導体企業アキシロ・セミコンダクター(Axiro Semiconductor)とMPower Partnersから新たな出資を受けています。政府からも約30億円の支援を受けており、国内発のAI半導体企業に資金が集まっている事例の一つです。
同社に出資したMPower Partnersからは、キャシー松井氏も登壇者リストに名を連ねています。投資家と企業、それぞれの視点を会場で聞ける機会になりそうです。
量子計算を材料開発に生かす
CEOの楊天任氏が登壇します。
同社は、量子コンピューターを産業で活用するためのアルゴリズムとソフトウエアを開発しています。研究開発向けの「QURI SDK」を提供するほか、材料開発では古典計算、機械学習、量子技術を組み合わせ、計算化学を実験や研究プロセスに取り入れる支援を進めています。
量子コンピューターの産業化には、ハードウエアの性能向上に加え、具体的な業務や研究に結びつくアルゴリズムとソフトウエアが欠かせません。QunaSysは、その応用側から量子技術の実用化に取り組んでいます。
宇宙ステーションの民間化と、日本のサプライチェーン
元JAXA宇宙飛行士の山崎直子氏がゼネラルマネージャーとして登壇します。米Vastの日本法人を率いる立場での登場です。
Vastは、商業宇宙ステーションの開発を進める米国のスタートアップです。国際宇宙ステーション(ISS)の退役後を見据え、後継候補となる「Haven-2」など、民間主体の低軌道インフラを開発しています。
GSE2026では、Day1のセッション「宇宙経済を築く――イノベーション・産業・世界市場をつなぐ」に、慶應義塾大学の白坂成功氏と共に登壇します。ロケットや衛星だけでなく、ポストISSを支える部品・素材、生命維持システムなど幅広いサプライチェーンが議論される予定です。日本企業が宇宙産業に関わる接点を考える機会になりそうです。
神戸発、光学測定で半導体産業を支える
共同創業者兼CEOの佐藤雅仁氏が登壇します。神戸を拠点に、独自の光学測定技術を事業化するスタートアップです。
同社は、光科学と情報技術を融合した「デジタルオプティクス」を掲げ、独自のデジタルホログラフィ技術を用いた精密測定装置を開発しています。2025年7月にはシリーズAで総額5.2億円を調達し、先端半導体向けソリューションの開発や製品ラインアップの拡充を進めています。
精密な計測は、製造工程の品質や歩留まりを左右する基盤技術です。半導体の微細化や大型化が進むほど、短時間で微細な形状を測る技術の重要性も高まります。兵庫県立大学発で神戸に拠点を置く同社は、関西のディープテック企業に焦点を当てるGSE2026の地域性とも重なります。
第3部:ノーベル賞受賞者を含む多彩な登壇者
登壇者リストには、研究者から投資家、アクセラレーター、事業会社の責任者まで、さまざまな立場の人が並びます。
吉野彰氏(旭化成名誉フェロー/2019年ノーベル化学賞)、坂口志文氏(大阪大学特別栄誉教授/2025年ノーベル生理学・医学賞)、天野浩氏(名古屋大学特別教授/2014年ノーベル物理学賞)といった研究者が登壇します。
また、500 GlobalのChristine Tsai氏、TechstarsのDavid Cohen氏、Berkeley SkyDeckのCaroline Winnett氏など、スタートアップの創業初期を支援してきたアクセラレーターの運営者も参加します。
さらに、AtomicoのLuca Eisenstecken氏をはじめ、NVIDIA、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの事業責任者も名を連ねます。研究、起業支援、投資、事業開発の各分野から登壇者が集まるのが今回の特徴です。
新しい技術を事業につなげるには、研究者、投資家、支援者、事業会社の連携が必要です。普段は異なる場所で活動する人たちが大阪に集まり、どのような議論や出会いが生まれるのか。そこもGSE2026の見どころになりそうです。
開催概要
名称 Global Startup EXPO 2026(GSE2026)
会期 2026年10月5日(月)〜7日(水)
会場 うめきたエリア(グラングリーン大阪/ナレッジキャピタル)、中之島エリア(Congress Square Osaka Nakanoshima/Nakanoshima Qross)
主催 GSE2026実行委員会(大阪府・大阪市・京都府・京都市・兵庫県・神戸市 ほか)
共催 経済産業省、JETRO
テーマ Deep Tech to Industry with the World
対象領域 バイオ・ヘルスケア、量子、フュージョンエネルギー、宇宙、AI・先端ロボティクス、半導体・通信
出展 国内外のディープテックスタートアップ約150社
チケット Executive Pass 15万円/Business Pass 8万円/General Pass 2万円(早割30%オフは9月23日まで)