※TECHBLITZでは、「AI x 新素材」に関する国内外のスタートアップを独自に調査。記事後半では、中でも注目の5社を紹介します。
機械学習やデータマイニングなどの情報科学(インフォマティクス)を用いて、材料開発の効率化を図る取り組み。データ駆動型で、経験や勘に頼ることなく研究開発が行える。
<目次>
・わずか数週間で新素材候補を発見
・異分野からMI領域への参入
・TECHBLITZが選ぶ、「AI x 新素材」関連スタートアップ5選
1. Materials Zone(イスラエル)
2. Mattiq(米国)
3. Citrine Informatics(米国)
4. Cradle(スイス)
5. Arzeda(米国)
わずか数週間で新素材候補を発見
Microsoftが発表したのは、米エネルギー省傘下のパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)と共同で実施した全固体電池向けの新素材の開発に関する研究結果。
それによると、Microsoft側が担当した新素材の絞り込み作業は大きく2段階に分けて実施された。第1段階では、トレーニング済みのAIが3200万種類に上る無機材料を候補出しし、化学構造的に安定した50万種類にまで絞り込み。第2段階で、コストなどを含む各材料の実用性を評価し、候補となる素材を18種類にまで絞った。第2段階にかかった時間は、わずか80時間だったという。
共同研究には、Microsoftが提供する量子計算プラットフォームの「Azure Quantum」が用いられた。この新素材はすでに合成に成功しており、プロトタイプのバッテリーが製造されているという。PNNLのCDO(最高デジタル責任者)を務めるBrian Abrahamson氏は「バッテリーが長期的に有用かどうかは関係なく、この発見スピードは非常に説得力がある」とコメントしている。
image: Dan DeLong / Microsoft
異分野からMI領域への参入
このように、AIや高性能コンピューティングの発達により、近年は素材メーカーや化学メーカーだけでなく、異分野からMI領域に参入する動きが増えてきた。成果も着々と出始めている。
例えば、GoogleのAI研究部門は2023年11月、AIを駆使して220万種類の新たな結晶構造を予測したと発表。ローレンス・バークレー国立研究所との共同研究で、AIツールの「GNoME(Graphical Networks for Material Exploration)」を活用した。
この結晶構造うちの38万種類は現実世界で合成できる可能性を秘めており、すでに外部研究者によって700種以上が生成され、実験されているという。これらは、コンピューターチップやバッテリー、ソーラーパネルなどへの応用が期待されている。
TECHBLITZが選ぶ、「AI x 新素材」関連スタートアップ5選
マテリアルズ・インフォマティクスは、膨大な計算量の高速計算を可能にする高性能コンピューティングに加え、AI技術の進歩によって加速度的に発展しており、材料の物理的な挙動の予測やインサイト提供などにAIを活用するスタートアップが登場している。TECHBLITZ編集部が選ぶ、「AI x 新素材」関連のスタートアップ5社はこちら。
1. MaterialsZone
設立年 | 2017年 |
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所在地 | イスラエル テルアビブ |
2. Mattiq
設立年 | 2023年 |
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所在地 | 米国 イリノイ州 スコーキー |
3. Citrine Informatics
設立年 | 2013年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 レッドウッドシティ |
4. Cradle
設立年 | 2021年 |
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所在地 | スイス チューリッヒ |
5. Arzeda
設立年 | 2009年 |
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所在地 | 米国 ワシントン州 シアトル |