Image: Zest AI
Zest AIは、金融機関向けに、AIを活用したローン審査モデルを構築している。このモデルを採用するにより、借り手の信用力を公平に評価でき、従来ローンを借りづらかった有色人種などがローンを組めるようになるという。そしてローン対象者を増やすことで金融機関のビジネスチャンスも増やしている。今回はCEOのMike de Vere氏に話を聞いた。

今までローンを組めなかった人々が、車や住宅を購入できるように

――まずはZest AIのミッションを教えてもらえますか。

 当社のミッションは、革新的な技術を使い、全ての人の「信用力」を公正かつ透明性を持って測れるようにすることです。私たちは、金融サービスのあり方を根本的に変革しようとしています。そして経済的なインパクトを与えるだけでなく、社会全体に対して貢献していきます。

Mike de Vere
Zest AI
CEO
カリフォルニア大学ノースリッジ校を卒業後、市場調査およびコンサルティング会社J.D. Power and AssociatesにてExecutive Directorを務めた。南カリフォルニア大学にてMBA取得。住宅ローン融資会社Radius FinancialにてCOOを務め、市場調査およびグローバルコンサルティング会社Harris InteractiveにてPresident & CEOを務めた。GoogleのAdvisory Board MemberやNielsenにてManaging Directorなど要職を務めた後、2018年にZest AIのCOOに就任、2020年よりCEO。

――どんなサービスを提供しているのでしょうか。

 金融機関向けにAIモデルの構築を支援しています。金融機関のローン審査では、アンダーライティング(引き受け業務)により融資が決定されますが、私たちは借り手の信用力を判断するためのAIモデルを提供しているのです。

 まず機械学習を活用し、信用評価を行うモデル構築を支援します。そして、モデルの実装、検証、そして当社のサービスの特徴でもある対象市場における規制やコンプライアンスへの準拠および必要書類の提供も行います。導入後のモデル運用も支援します。

 ビジネスモデルの形態としては、ソフトウェアラインセンスの契約になります。3年から5年の長期契約になることが多いですね。また、お客様がトレーニングやコンサルティングを求める場合は、別途サービスフィーをいただいています。

――御社のサービスは、どのような形で社会貢献につながっているのでしょうか。

 金融機関が「正しい判断」を下すことで、ローン審査の公平性が高まります。例えば、米国内の住宅ローン商品を取り扱っている金融機関では、今までは対象にならなかった何万人もの有色人種も対象になることがわかりました。今まではローンを組めなかった人々が、住宅を購入できるようになります。

 また、米国の大手信用組合は、当社のモデルを導入すると、3ヶ月で新たに組合員が1万5000人以上も獲得できるとわかりました。組合員になり融資が受けられれば、例えば車を買えるようになり、家族のもとに早く帰れるようになります。個人の生活に直接的なインパクトがあるのです。

 このように私たちは金融機関向けに素晴らしいサービスを提供するだけでなく、個人に対しても良いインパクトを与えています。

Photo:fizkes / Shutterstock

ローンの審査承認率が20%上がり、貸し倒れが30%減った

――どういった金融機関が御社のソフトウェアを利用しているのでしょうか?

 当社の顧客は、ミシシッピ州の小規模信用組合から、ヨーロッパの最大手銀行までいます。専門家がいない企業から社内にデータサイエンティストを抱える規模まで様々ですが、規模は違っても信用評価という同じ問題を抱えています。

 中には、金融商品の開発に当社のシステムを活用している顧客もいます。通常は開発に18ヶ月かかっていたところ、当社のモデルを使って自動化したことで、数週間で可能になり大きな変革をもたらしました。他の機能もそうですが、当社のモデルは他社と比べ、スピード面でも優位性があります。

 また、当社のモデルを導入したことで、審査の承認率が20%上がったケースや、貸し倒れが30%減ったケースもあります。当社のモデルによる、顧客の財務上の影響は数千万ドルにもなり、そうした効果を求めている顧客もいます。

 他には、融資業務におけるより包括的な活用を希望する顧客もいます。公平性、リスク管理あるいはコンプライアンスなど、それぞれの顧客が重視する要望と企業の規模や、社会の変化などにも柔軟に迅速に応えられるサービスを提供しています。  

――今後の目標として日本での展開も視野に入っていますか?

 そうですね、興味があります。私の海外展開の基準は、規制の厳しい国であるかどうかです。日本もヨーロッパと同じように厳しい規制がありますので、厳しい規制に対応できる当社のサービスは相性が良いと思います。また私の妻は日本人ですから、そういう意味でも日本には縁があり、日本でビジネスを展開できたらとても嬉しいですね。



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