目次
・社員のスキルを「見える化」
・必要なスキルを細分化して学習計画を提示
・日本企業からのコンタクトも増加中
社員のスキルを「見える化」
テクノロジーが急速に進歩する中、企業の成長には従業員のスキル開発が欠かせない。ただ、これまで「従業員のスキル」は自己申告やeラーニングの進捗率などで測定され、基準が不明瞭という課題があった。Workeraは、こうした課題を解決するため、データ分析を徹底した従業員のスキル評価プラットフォームを提供している。
Workeraの共同創業者でCEOを務めるKian Katanforoosh氏はこう語る。「当社は、AI時代に対応できる人材を求める企業に対して、スキル・トランスフォーメーション・プラットフォームを提供しています。高度なAIを使って企業が有する人材の能力を測定し、学習内容をそれぞれの人材に適したものに改善することで、労働力を変革することに注力しています」
同氏は、ニューラルネットワークとディープラーニングを専門とし、WorkeraのCEOを務める傍ら、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスの講師を務める。2017年には、スタンフォード大学で共にAIの講義を教えるAndrew Ng教授(現Workera会長)と共に、エドテック企業DeepLearning.AIを創業している。
「Andrew Ng教授と共に、スタンフォード大学およびDeepLearning.AIを通じて、数年間で累計400万人以上にAIについて教えてきました。今は、技術の進歩が急速に加速している時期で、特にAI分野では毎日のように新しいイノベーションが起きています。企業や労働者はその進歩についていくのに必死です。そこで、スキルを測定するメンターを持つことで、パーソナライズされた学習を改善し、人々が潜在能力を発揮できるようにWorkeraを創業しました」
Workeraのプラットフォームは、企業が取り組む事業やプロジェクトの達成に必要なスキルを細分化し、テストを通じて習得測定指標に沿ったスキル測定を行う。そのデータによって、企業は従業員の強みや特性を理解することができ、プロジェクトへの最適人材の適用や人材採用、人材育成に活用できる。従業員は、自分のコンピテンシー(高いパフォーマンスに繋がる行動特性)を視覚化し、理解することができる。
必要なスキルを細分化して学習計画を提示
Workeraは、データサイエンス、AI、ソフトウェア開発など最新テクノロジーに関する項目の測定に焦点を当ててスタートした。例えば、その企業に必要なスキルが「機械学習」だった場合、「機械学習」という大項目のスキルが細分化される。その後、従業員の強みや苦手とする領域と各スキルの相関関係をAIで分析し、今後の最適な学習計画を提示する。
企業は分析ダッシュボートを使用して、チーム全体・トップクラスの人材・業界水準などと比較することで、自社の競争力・戦略を明確にすることができ、業界水準との差を知ることができるといった仕組みになっている。また、スキル測定は1回限りのものではなく、進捗状況を追跡するために継続的に行われる。
同氏はこうしたサービスを立ち上げた理由について、3つの背景があったと説明する。「1つ目は、イノベーションの世界が加速していること。2つ目は、多くの企業と労働者がAIや生成AIの可能性の大きさとその活用方法に気が付いていないこと。3つ目は、AIを正しく活用すれば、雇用を失う必要はないということです。Workeraを利用してスキルを測定することで、人材を新たな職務に適材適所で移すことができる。大組織にとって、これは非常に重要なことです」
「当社の顧客は、プロフェッショナルサービス、テレコミュニケーション、エネルギー、金融サービス、そして重工業企業などを含む、変革を遂げようとしているあらゆるセクターにいます。デジタルトランスフォーメーションの世界では、農業系の企業がロボット農業企業に、通信企業がメディア関連企業に、ヘルスケア企業や自動車企業がデータ関連企業になりつつあるという変革がまさに起きている最中で、そのような変革に取り組む大企業を対象としています」
Workeraの主なユースケースには、大企業下でのプロジェクトマッチングがある。何千人もいる従業員のスキルを測定することで、リーダーがスキルと意欲に基づいて適切なプロジェクトに人材を割り当てることができるように支援する。その他、社内での適切な異動、従業員のスキル向上にも使用されるケース、特定の領域にAIのスキルを必要とする「AI+X」労働力と呼ぶ開発を支援するユースケースもある。
「『AI+X』とは、『AI+専門技術』『AI+機械工学』『AI+電気工学』などを指します。Workeraでは、これらの従業員の細かなスキルを理解する手助けをし、従業員がAIデータの正しい知識を学び、新しいプロジェクトに迅速に対応できるように手助けをします」
image: Warkera HP
日本企業からのコンタクトも増加中
2023年3月、WorkeraはシリーズBラウンドで、Sozo Venturesを含む複数のVCなどから2,350万ドルを調達した。
資金調達の使途として、まずは経営陣の体制を盤石なものにしていくことを挙げている。また、従業員の50%以上を占めるAIチームの強化に引き続き取り組むほか、セールスマーケティングやカスタマーサクセスなどのチームにも投資していくという。
日本企業からのコンタクトも増えているといい、「現在、Workeraを社内で直接利用したいと考えている企業、社外の顧客にも提供を考えているシステムインテグレーターなど、さまざまな日本企業と対話を重ねています。また、日本の公的機関との提携にも関心があり、教育市場と民間企業をつなげることにと考えています」
今後の短期的なマイルストーンと長期的なビジョンについては、「製品に関するマイルストーンは、どんなスキルでもより効果的に測定できるようにすることです。例えば、マネージャー評価、自己評価アプローチ、会話評価、状況評価も含むなど、一連のスキル測定をそろえたいと考えています。事業でのマイルストーンでは、現在、大手企業約24社の顧客がいますが、この数を近いうちに倍増させたいと考えています」
時には雇用を奪う脅威として語られることもあるAIだが、Katanforoosh氏は、AIは正しく利用することで自分自身をより深く理解することができ、スキルを向上させることができるポジティブなものであることを伝えたいという。
「最後にビジョンについてですが、私は、みなさんが自分自身を測定し、フィードバックやベンチマークを与えることができる『AIメンター』に、世界中の誰もがアクセスできるようにしたいと考えています。誰もが自分の強み、ギャップ、そして人類にどのように貢献できるかを知ることができるようにすることを願っています。
このビジョンの最初のステップとして、企業に対してサービスを提供しています。例えば、野球やサッカーのプロチームのように、人材分析とスキルという統計データに基づいて組織を構築をするというコンセプトが民間企業にも導入されれば、従業員や管理職、そしてエグゼクティブにも恩恵をもたらすと私は考えています。Workeraが、正確で信頼できるスキル測定を企業に提供できることを願います」