自転車競技から得た起業のアイデア
――WorkBoard起業のきっかけは?
2つの気づきがきっかけでした。ひとつは、チームの成果測定のスピードと透明性が、成果達成のスピードと効率性を大きく左右すること。もうひとつは、ビジネスの進捗状況の確認は容易であるべきことです。
私はIBMでかつて携わっていた事業で、連携や成果測定に時間がかかることに不満を抱いていました。創業者でCTOのDaryoushはエンジニアとして働く一方、自転車競技の選手としてアプリを活用して記録や測定を行っているときに、透明性や結果比較、チャートがトレーニングの最適化と効率向上につながり、好成績を達成できたことに気がつきました。
問題とその解決策、チャンスが一体化した結果、WorkBoardが誕生したのです。
WorkBoardは、目標管理のフレームワーク「OKR(達成すべき目標と主要な成果指標)」をベースに、チームに共通言語と3カ月単位のプロセスを提供しています。これにより、目標を設定し、測定可能な成果に狙いを定め、随時データを入手して学びを得ることができます。OKRはチームが計画に沿ってプロジェクトを進めていくためのプラットフォームなのです。
OKRを活用すれば、組織の潜在能力を引き出せる
――WorkBoardが解決を目指す大きな問題とは何でしょうか?
現代の組織は、スピードと機敏性のある戦略実行アプローチを必要としていますが、潜在力がフルに発揮されておらず、思うように成長できていません。WorkBoardを頼ってくる企業幹部は次のような悩みを抱えています。
たとえば、「戦略は単なるコンセプトにすぎず、従業員に行き渡っていない」「戦略実行を阻んでいる問題が特定できない」「計画は平凡で、実行スピードが遅い」「従業員やチームの連携ができておらず、目標が達成できない」「上層部の熱意や希望が共有できていない」などです。
けれども、OKRというフレームワークがあれば組織の方向性と目標成果を定義できます。
――フラッグシップ製品とその機能は何でしょうか。
「Enterprise Results Platform」という製品を用いた業績アドバイザリーサービスを提供しています。クライアント企業が連携と目的意識を高めて急成長を達成し、競争上の優位を得ることが目的の製品です。アストラゼネカやマイクロソフト、シスコ、ワークデイ、IBM、3Mをはじめとした大企業や成長企業から信頼を得ています。
Image: WorkBoard
製品には次のような機能があります。
- コラボレーション:チーム内外と透明性の高い協力体制を構築します。
- ワンクリック・レポーティング:プランや進捗状況、報告などをワンクリックでまとめ、共有できます。
- プロジェクト&ワークストリーム:プロジェクトや戦略上の優先事項、OKRを可視化します。
- マンツーマン・ミーティング:使いやすいコーチング用フレームワークで、ジャーナル化が可能です。
- スマートボット&チャット画面:ボットが進捗状況の確認や更新を行います。
- 成果アクセラレータ:コーチが成果達成を後押しします。
- 高い統合性:SlackやOutlook、Googleアプリなどと即時統合でき、導入がスムーズです。
- モジュール型アプローチ:必要なものを必要なだけ取り入れられます。
- 高い安全性:アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が高い安全性を保証します。
――主なクライアントを教えてください。
シスコ、IBM、マイクロソフトなどの有名テック企業のほか、金融、製造、ライフサイエンス、医療分野の企業にも続々とご利用いただいています。
ソフトバンクやa16zなどから累計150億円超を調達
――競合企業はありますか? WorkBoardの差別化要因は何ですか?
5年以上も前にOKRをシステムに初めて導入して業界標準を打ち立てた私たちにライバルはほとんどいません。OKRツールベンダーが誕生していますが、無料ツールを小規模企業に提供しているところばかりです。
資本力も突出しており、資金調達額は累計1億4,000万ドルです。2021年5月にはソフトバンク主導で7,500万ドルを調達しました。
――調達した資金の使い道は?
製品のメリット加速化や、顧客コミュニティの構築、販売とマーケティングの拡大に投じる予定です。
――有名投資家から支援を受けていますね。
SoftBank Vision Fund 2やAndreessen Horowitz、GGV Capitalなど多数の投資家に支援をいただいています。
――新型コロナウイルス感染拡大で、事業に変化はありましたか?
金融や製造、ライフサイエンスや医療など多様な業界とのつながりができました。戦略上の優先事項の調整、リモートでの連携、可視化などには、WorkBoardのようなプラットフォームが必要です。
――日本市場についてはどう考えていますか?
日本には仕事で訪れたことがあります。WorkBoardは欧米と共通点がある日本企業の力になれるはずです。とくに製造業への進出を目指しています。
――今後の展望は?
チャット型ソリューションを先ごろリリースし、これからは会話型体験に力を入れていく予定です。世界的なOKRコミュニティの構築にも引き続き取り組んでいきたいと思っています。