AIを用いたコンピュータ支援診断の先駆け
―まずはCEOの経歴と、VoxelCloud設立の経緯を教えていただけますか。
私は中国出身で、祖父母が医師だったので医療に近い環境で育ちました。こうしたバックグランドがあったため、UCLAの大学院では心臓画像に特化した医療用画像分析を研究し、それと同時にシダーズ・サイナイ医療センターで、医師向けのAIを用いた医療分析ツールを開発していました。「interest is the best teacher」で、研究と開発に夢中になり、3年弱で博士号を取得し、UCLAの共同研究プログラムの一環でVoxelCloudを立ち上げました。
私が博士号を取得した2015年当時、医療分野でも3D画像は多く使われていましたが、3D判定はまだありませんでした。また、ディープラーニングを使った医療用画像の研究はほとんど行われておらず、コンピュータ支援診断は実用化されていませんでした。これは、医療用のAIアプリケーションを開発したかった私にとってはチャンスに映りました。他よりも先行したこともあり、現在も当社がこの分野における最大手だと思います。
複数のイメージングモダリティとコンディションにマルチに対応
―他社の製品との違いを教えてください。
特定の病気と、一つのイメージングモダリティ(CTやMRIなど医用画像を撮影する装置)のみを対象にした、AIを用いたコンピュータ支援診断サービスを提供している企業はいますが、複数のイメージングモダリティと、複数のコンディションにマルチに対応しているのは、当社だけです。
私たちは、設立当初から、あらゆる種類のイメージングモダリティを対象とし、様々なコンディションにも対応するマルチなAI技術の構築を目指しました。その結果、世界で最も広域にイメージングモダリティに対応し、複数のコンディションを網羅する製品になりました。例えば当社の製品は、160以上の肌コンディションをカバーしています。2019年にはデータをアップグレードし、一つの製品で460のコンディションをカバーできるようになりました。
現在は、放射線医学、眼科、皮膚科、心臓病学において診断を支援するツールを複数提供しています。一部はまだFDA(米国食品医薬品局)への承認申請中なので詳しくはお話できませんが、当社の製品は様々な国で使用され、導入事例も600を超えます。
アジア市場の導入実績あり、日本でもすぐに展開できる品質と安全性
―既に海外展開されているようですが、日本でも導入実績がありますか。
アメリカとアジアで実績がありますが、日本市場にはまだ参入していません。アジア人を対象に開発した製品があり、日本の皆さんにも安心してご利用いただける品質のラインアップが既に揃っています。当社としては、日本市場への参入に非常に興味があります。
国によって、医療ケアのシステムやワークフローは全く違います。日本市場に参入するのであれば、投資家そして、そういった事情に詳しい専門家の協力が必要です。大手医療機器メーカーとつないでくれるようなビジネスパートナーも探したいですね。
当社の製品は医師の診断を支援するだけではありません。例えば、消費者がより適切な一般用医薬品を入手できるように、製薬会社に当社のコンピューター支援診断サービスをご利用いただくことも考えられます。また、日本は、国民健康保険制度だと思いますので、効果的なコスト管理が必要でしょう。当社のAIはそういったことにも活用が可能です。