Viomeは、内臓の微生物の状態を調べるマイクロバイオームテストのキットを提供している。微生物の状態に合わせた食べ物を摂取することが、健康維持や慢性疾患の予防になるという。自社の利益より、科学に基づき人々の健康支援という使命を重視する同社。今回はFounder & CEOのNaveen Jain氏に話を聞いた。

Naveen Jain
Viome
Founder & CEO
起業家。最初の会社である「Infospace」を1996年に設立し、2002年までCEOを務めた。2003年には二つ目のIT会社「Intelius」を設立、2015年までCEOを務めた。2010年からコラムニストとして、ForbesやWSJなどに寄稿。同年、「Singularity University」のVice Chairman & Board of Directorsと、宇宙系スタートアップ「Moon Express」のFounder & CEOに、2011年から「X Prize」(財団)のBoard of Trusteeに就任、現在も務める。2016年にViomeを設立しCEOに就任。

「正しい答え」ではなく、「正しく問う」ことが重要

―まずViome設立の経緯をお話しください。

 現代人は、高齢になると殆どの人が慢性疾患を患います。興味深いことに、製薬会社やヘルスケア事業者は、慢性疾患の原因の解明ではなく、管理に注力しています。慢性疾患患者は、生涯を通じて投薬を受けます。私は、この流れは変わる必要があると考えました。

 多くの科学者が、慢性疾患に関係しているマイクロバイオームに取り組み、「正しい答え」を求め研究しているのに、まだ「正しい答え」が見つからない。それは、「問い」が正しくないのではないかと私は考えました。これは、DNAの時と同じです。人間の遺伝子情報を理解できれば、病気を解決できると人々は考えましたが、そうではありませんでした。

 ヒトマイクロバイオームを全て把握し解明するのではなく、既に把握されている微生物が何を生み出しているかに焦点をあてるべきだと考えたのです。結果的に、微生物は状況に応じて働きを変えること、種類が違う微生物が同じものを生み出せることがわかりました。

 そして、RNAシークエンシング解析がこの「問い」を解明する技術で、その独占ライセンスを得たことがViomeの設立につながっています。

 Viomeは、技術で数十億人の人生を支援することを使命にしています。

―Viomeについて教えてください。

 例えば、アルツハイマー病、うつ病・不安症や、糖尿病などの疾患には共通点があります。それは、低悪性度な傾向があるということです。これをヒトマイクロバイオームがコントロールしています。

 Viomeでは、腸内細菌を調べるマイクロバイオームテストと、その結果に基づき食事のアドバイスをアプリで提供しています。

 テスト用キットは郵送で届き、ユーザはキットに含まれる試験管に検体を入れ、専用の返信用封筒を使い検体を返送するだけです。
 届いた検体はRNAシークエンシング解析され、腸内細菌の状態を正確に把握します。これはつまり、人体の内部で起きていることを把握するということです。この1年半の間に、10万人がテストを受けました。その結果に基づく当社のアドバイスに従い食生活を変えたことで、慢性疾患の症状が緩和したという報告を多く受けています。

 機械学習を使い、テスト結果から何が炎症を引き起こし病気の原因になるか、健康を保つためにどの微量栄養素を摂取すべきかを特定します。これにより、普段の生活において、摂取を避けるべき食べ物と、摂取すべき食べ物かがわかります。例えば、私のマイクロバイオームは、ほうれん草の酸を消化するための酵素を生産していない状態にあるため、ほうれん草を食べると炎症を引き起こすことがわかりました。ほうれん草は他の人にとって健康的な食べ物でも、私にとっては有害になります。

―マイクロバイオームテストは定期的に行うものなのでしょうか。

 そうですね、ヒトマイクロバイオームは変化しますから。

 現在は疾患の理解と治療介入を目指し、より多くのテストを行い、データを集めることに注力しています。テストは利益を度外視した価格ではありますが、有料です。

 将来的にはテストは無料にし、体が必要としている微量栄養素をサブスクリプション方式で提供したいと考えています。テストは数ヶ月毎に、その人それぞれの必要に応じ行います。結果に従い、プロバイオティクスでも、プレバイオティクスでも、一人ひとりに完全にパーソナライズした微量栄養素を提供するイメージです。

利益追求ではなく、技術の恩恵を消費者に

―海外戦略、特に日本への進出について聞かせてください。

 Viomeは科学に基づき設立された会社で、潤沢な資金を受けた会社でもありますので、この技術で利益を追求するのではなく、正しい使い方を目指しながら、事業を拡大していくつもりです。

 海外は、まずはヨーロッパに進出しています。次はシンガポール、日本、インドや中国を目指します。中国は当社にとって参入は難しいかもしれませんね。

 アジアでは病気が内臓から始まることを認識している人が多いですし、アジア市場は規模も大きいです。地元の企業との提携も視野に入れ、進出を検討していきます。

―地元のパートナーを探すということですね。

 そうですね。消費者向けのビタミンやサプリ商品を流通させている大手企業や、グローバル展開しているアメリカ企業。病院や保険会社などにつなげてくれるヘルスケアビジネス関係の会社がパートナー候補だと考えています。

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