Very Good Securityは、機密データを持つ企業向けに、データの保管と保護のサービスを提供する会社だ。データ所有に伴う、企業のリスクや負担の低減を実現している。今回はCo-founder & CEOのMahmoud Abdelkader氏に話を聞いた。

企業の負担を解決する、データ保管システム

―まずはCEOの経歴と、Very Good Securityを設立した経緯を教えてください。

 私は大学でコンピューターエンジニアリングを学び、副専攻として、離散数学を学びました。卒業後は4年ほどウォールストリートにて金融業界で働き、大学時代の友人の誘いでPalo AltoにあったMilo.comというスタートアップに参画しました。その後、自らもBalanced Paymentsというスタートアップを起業しました。Stripeとの競争に敗れ、次に何をしようか悩んでいたところ、複数の会社から支払いに特化せずにデータ保護に特化したBalanced Paymentsのような製品を作れないかと持ち掛けられました。このとき、Very Good Securityのようなシステムが必要なのだと気づいたのです。これが、会社設立のきっかけでした。

 企業はあくまで経営目標を達成したいだけで、データ自体は経営の目的ではないですし、データ保護の責任を負うことも望んでいません。そこで私たちVery Good Securityは、データ保護に特化した会社として、企業が責任を委ねることができるようにしました。お金を管理する銀行のように、データを保管し、必要な時にデータを取り出せるシステムの構築です。企業が既存のシステムを変更しなくて済むようにすることも、重要でした。

Mahmoud Abdelkader
Very Good Security
Co-founder & CEO
メリーランド大学でコンピューターサイエンスを学んだのち、ウォールストリートやパロアルトの複数の企業でエンジニアとして働く。2011年、共同創業者としてBalanced Securityを設立。2016年にVery Good Securityを共同設立、CEOに就任。
 

データの所有を不要にし、リスクから解放

―御社のサービスと、ビジネスモデルについて教えていただけますか。

 Very Good Securityは、スタートアップや大手企業がデータ保護のリスクや責任を負うことなく、繊細なデータを扱い、必要なデータを利用できるようにする、機密保持とデータ保障の会社です。現在、お金を手渡しでなくても他人に渡せるように、手元にデータがなくても、データを取り扱えるようにしました。

 われわれは動作中・使用中のデータを傍受し、アッパーメタデータを漏らすことなく、基礎データを合成代替データに置き換えます。そして必要時にのみ、本来のデータを開示し、そのデータを扱えるようにします。つまり、たとえ企業がハッキングされたとしても、データは偽装の代替物なので、まったくの無意味というわけです。Very Good Securityでは、情報漏洩のリスク防ぐことで、スタートアップと大手企業の間でもさっと取引ができるようになり、より短期間で今までのビジネスを覆すような発展を促すことが重要だと考えています。

―他社にはない、御社ならではの強みは何でしょうか。

 私たちの特徴は「ゼロデータミッション」を掲げていることです。これは、基本的にVery Good Securityがデータを保管し、必要な場所でのみ開示されるよう制限をかけるので、企業はデータを持つ必要がない、という考え方です。機密データを手元で保管する必要がないため、企業がビジネスそのものに集中できるようになるだけではなく、データを漏洩させることも、データを盗まれることもなくなります。

世界中の情報の保護を目指し、革新の実現へ

―海外での事業展開について教えてください。

 現在、ビジネスの25%は、海外の顧客が占めています。データ保護は世界的な問題です。通貨の違いこそありますが、このサービスを他の地域でも利用できたらと考える方は多くいます。

 実は日本でも、Origami Payが私たちを利用してくださっています。Origami Payのケースでは日本以外でも事業を展開しようとしていますが、各国の司法に基づいてデータを保護しなければなりません。そんなとき、データ保護の方法やデータの主権、データの保管場所を新たに構築せずとも現状維持する一つの手段が、Very Good Securityです。これは利用者にもあてはまることで、Origami Payが参入している国では日本と全く同じ方法でOrigami Payを利用することができます。

 正直なところ、Origami Payはあまり典型的な日本企業ではないと思っていて、日本でビジネスを展開していくには、より日本のビジネスの土壌を理解し、歩調を合わせていくようなことが必要になると考えています。それは日本に限らず、中東やヨーロッパの場合でも同じです。単にその国のことを理解するだけではなく、現地の顧客に合ったサービスを提案し、提供していくことが必要だと思います。早ければ、来年頃には日本で展開していければと考えています。



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