Varo Money(以下 Varo)は、OCC(米通貨監督庁)から全国銀行憲章の予備承認を受けた FinTech企業だ。米国史上初モバイル特化型銀行としての承認も遠くないと見られている。Varoの目標は、伝統的な銀行サービスにおける「当たり前」を革新し、バンキングサービスを通じて人々の生活にプラスの影響を与え、経済状況を改善することだ。世界金融危機を切り抜けた金融業界の大物でもある、同社のCEO & Co-Founder Colin Walsh氏に話を聞いた。

「私たちは銀行業の未来を変えている」

―なぜフルサービスの銀行免許を取得しようと考えたのか教えてください。

 国法銀行の承認プロセスには、資本要件や銀行業界における豊富な経験など、通常のFinTech企業にとって厳しい要求や規制がありますから、最初は皆に「頭がおかしくなったのか!」と言われました。

 Varoは、現代のニーズにマッチしていない従来型の銀行サービスに対し、ユーザー体験を重視したサービスを提供すること。伝統的な金融商品やサービスが対象にしてこなかった、収入が少なく資産がない層を対象にした金融サービスを提供することで、彼らが金融資産を保有できるようにし、財政を健全にすることを目標にしています。

Colin Walsh
Varo Money
CEO & Co-Founder
ウェルズ・ファーゴ銀行(米国)にてEVP(Executive Vice President)を9年間務めた後、VISA EuropeのMember Board of Directors、ロイズ銀行(英国)にてManaging Director、アメリカン・エキスプレス・ヨーロッパ法人で、英国および国際Currency Card部門のCEOと、Proprietary Cardサービス部門のEVPなど、大手金融企業で要職を歴任。2015年にVaro Moneyを共同で設立しCEOに就任。
 預金の収益化はFinTechには許可されていない銀行の「特権」の一つです。今まで銀行が対象にしてこなかった少額預金を収益化し、革新的なサービスを消費者に提供するには「銀行」になる必要があります。また、従来の銀行は、実店舗を維持しキャッシュを取り扱うためのコストなど、様々なコストがかかっており、消費者がそれを負担していました。デジタル・バンキングは全く違うコスト構造なのでサービスを無料で提供できます。従来とは違う銀行サービスを「銀行」として提供することに意味があります。

 銀行免許を取り、既存の仕組みの中でスケールすることは、銀行業務を私たちのやり方で収益化するためにも、FinTech企業として従来とは違う収益構造を築くためにも必要です。銀行免許の取得は道理にかなっています。

―既に、OCCから免許を暫定取得されていますね。

 融資免許は自社で取得し商品を提供していますが、許認可が必要な銀行業務は、Bancorp銀行(米国内最大規模の地方銀行の一つ)との協業により提供を始めています。

 私たちは、金融危機以降、国法銀行免許は一度も付与されていないことを踏まえ、Varoのビジネスコンセプトを実証し実績を作らなければ免許の取得は不可能だということを十分理解していました。そのため、実績を重ねるのと同時進行で、2016年にはOCCに国法銀行免許を取得したい意向を伝え相談を始めました。OCCは、Varoの強い組織力や金融業界における高い経験値、銀行改革に関する十分な知識があることをすぐに理解し、前向きに協議が進みました。免許の暫定取得までかなり長い道のりでしたが、銀行の安全性や健全性を保護したいOCCと、預金保険基金を保護し消費者を守るFDIC(連邦預金保険公社)が求めるスキルを、Varoが持っていることを実証できたのだと思います。

3年以内には、銀行として自社でフルサービスを提供したい

―従来の銀行サービスとの主な違いを教えてください。

 従来の銀行サービスでは、口座開設手数料など、消費者が当たり前のように手数料を負担しています。少額預金に対する金利は低く、手頃な金融商品はありませんでした。また、従来の銀行ではユーザーが我慢していました。

 Varoは、オンライン口座の開設は無料ですし、ATMも無料で使えます。50ドルまでなら預金残高を超えてお金を引き出すことができ、これも無料です。少額預金でも最大金利2.8%と高いです。他にもVaroアプリには、AIを使った支出のトラッキングや自動貯蓄ツールなど、お金の管理や、財政状況の健全化をアシストする機能があり、無料で使えます。消費者は、今まで銀行に払っていた手数料を貯金でき、それを元手に買える価格帯の金融商品も揃えています。

 また、サービス提供においても、ユーザー体験を最重視しています。VaroアプリのNPS(Net Promotion Score 顧客推奨度)は70台で、かなり高評価を得ています。ニーズにあった商品やサービスに加え、こうした面でも多くの消費者を惹きつけ、2018年にはユーザー数が前年の3倍に増え、7,500万人になりました。

―今後の展望について、どう考えていますか。

 現時点で既に普通預金口座、当座預金口座、貯蓄預金口座、無担保ローンやデビットカードなど、最終目標の半分は提供していますが、今後3年以内に銀行免許を取得し、クレジットカードや住宅ローンなど、自社で消費者向けの商品やサービス一式をフルで提供できるようになると想定しています。

 アメリカ国内だけでも、Varoがターゲットにする層は約1億8千万人いると考えられています。Varoをスケールさせることで、より多くの消費者がVaroのサービスが使えるようになり、人々の生活にポジティブな影響を与え続けたいです。

 今から5年後には、Varoがアメリカ最大規模の銀行の一つになるつもりです。そして、次は世界的に事業を拡げていきたいと考えています。



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