(2022年にSalesforceが買収。2023年6月追記)
CRMツールを最大限活用するため、メッセージアプリを統合
―まずはTroops誕生の経緯について教えてください。
私は、もともとスタートアップの人材部門にかかわっていたので、CRMのカテゴリの重要性は強く感じていました。役員をしていた会社が、CRM業界のリーダーであるSalesforceに買収されたことから、彼らとも非常に密な時間を過ごしましたが、なかなか使いこなすのがむずかしい、というのが正直な感想でした。
そんな中で2015年、Troopsを立ち上げたのは、やはり仕事におけるメッセージアプリの必要性を実感したからです。当時、世界で人気10のアプリのうち6つがメッセージングアプリというほど、需要は高まっていました。民間企業がロケットを飛ばすほど技術は進歩しているのに、仕事の現場ではいまだに昔と同じ悩みを抱えて苦労していました。
たとえば、CEOがある営業案件について疑問がある場合、わざわざ担当者を探してメールなどで「この案件の進み具合はどうだ?」とたずねるなど、非常に手間がかかりました。データ顧客営業活動と直接かかわりのない作業に時間が多かったのです。そこでふと思いついたのです。CRMとチャットアプリを統合できたら、どんなにいいだろうと。
そこで、我々はSalesforceなどのシステムからミッションクリティカルな情報すべてを、Slackに取り込み、ワークフローおよび自動化テクノロジーを構築したのです。
―SalesforceとSlackを結び付けるというのは画期的ですね。それによってセールスチームがどのように変わるのか、具体的に教えていただけますか?
Slaesforceは交渉から顧客管理まで、営業活動全体を網羅しているので、おのずとTroopsの効能もその範囲に及ぶといえます。営業担当や経営陣側が営業予測や、ビジネスの健全性を把握するのにも使えます。
具体的には、取引名から担当者名、進捗状況、金額や交渉終了予定時期など、すべての基礎データが一目瞭然で確認できることはもちろん、「コカ・コーラとのミーティングが終了しましたが、次のステップや記録したいメモはありますか?」などSlackがテキストメッセージでエレガントかつ楽しくアラート通知してくれます。
また、取引が終了したときにチーム全体に通知がいくので、大規模な取引が成立したことを経営陣全体が瞬時に知ることもできます。取引が終了すれば、実際の作業が開始されることになりますから、こうした情報共有によってワークフローが促進されます。他にも、顧客からの評価を表示し、問題があった場合に瞬時に対応することで、顧客保持にもつながります。
最大の敵は「何もしない」こと
―競合はいますか?また他社にはない、御社の強みはどのような点でしょうか?
我々の最大の敵は、「何もしない」ということですね。私たちは今、最新の手法で、古いタイプの問題を解消しているわけですが、それを問題だと認識していない企業も多いのです。
多くの企業では「うちはもうSalesforceを使っているし、これ以上コミュニケーションを強化しなくても大丈夫」などといいます。はじめてパソコンが登場した時と似ていますね。
Slackはただのチャットツールではありません。仕事のためのコラボレーションハブで、数十種類ものツールをたった1つで賄えるほどの能力があるのです。まずは、その重要性や有用性に気づいてもらうことが大切なんです。
世界30カ国に展開
―まだ始まったばかり、というわけですね。今後のビジョンについては、どうお考えですか?
短期的には、とにかくCRMエコシステムに関わるワークフローのオートメーション化を拡大し、顧客にその価値をわかっていただく努力を続けることです。今はチャットツールのトップがSlackであり、CRMではSalesforceですが、長期的には当社のサービスを他のプラットフォームにも拡大していきたいですね。
―海外展開についてはいかがでしょう。
SalesforceとSlackがそもそもグローバルなサービスですから、Troopsもアメリカだけでなく、今や日本、ドイツ、イスラエルなど30カ国に顧客を抱えています。
―日本市場に拡大していくことも考えておられますか?
そうですね。まずは我々のサービスを理解し、そのうえで時間と言葉の壁を越えて顧客とのパイプ役を果たしてくれる相手がいれば、うまく市場を切り拓いていけると思います。