2010年に設立されたTipaltiは、あらゆる通貨や支払い方法に対応した自動決済システムを提供するスタートアップ。作業効率の向上、人的ミスの軽減から法令順守までを網羅した一括管理サービスで、企業を支える。今回はCo-founder & ChairmanのOren Zeev氏にインタビューした。

Oren Zeev
Tipalti
Co-founder & Chairman
1990年、イスラエル工科大学卒業。IBMに勤務後、INSEADビジネススクールでMBAを取得。ベンチャーキャピタルのパートナーなどを経て、2007年にZeev Venturesを設立。2010年にTipaltiを設立し、Co-Founder & Chiarmanに就任。

各国の決済制度、支払い方法に自動で対応

―Tipaltiのビジネスモデルを教えてください。

 我々は、企業向けに自動決済システムを提供しています。現在、サプライヤーへの支払いプロセスは手作業によるものが多く、これを自動化することで作業を80%減らすことができます。その分、別の業務に人材や時間を割くこともできますし、人的ミスも減らせます。また、コンプライアンスの観点からも、システム化することで法令順守を堅持できるようになります。

 グローバル化が進む今、企業はさまざまな国の通貨や制度に対応しなければなりません。支払い方法も銀行送金からペイパルまで多岐にわたり、しかも日々変化し続けています。各企業がそれぞれに対応していくには限界があるでしょう。Tipaltiを活用すれば、基本的なデータを入力するだけで、さまざまな国の制度や支払い方法に自動的に対応します。

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―さまざまな決済サービスとの関係はどうなっているのですか。

 我々は決済サービス自体を提供しているわけではありません。ですから、彼らは競合でなく、我々は一段上の層に位置していると考えています。今はニーズの大きな10〜11種類の決済サービスをシステムに統合し、サポートしています。将来的に新たなサービスが登場したら、それも我々のシステムに加わることになるでしょう。

顧客の99%が継続利用

―Tipaltiならではの強みはありますか?

 我々の強みは、決済業務を包括的に取り扱っていることです。支払い方法や各国の税制、支払先の信用度チェックもそうです。どこかの国で規制や法律が変更されたら、我々がそれを追跡し、システムに取り込みます。クライアントはただ、支払相手と金額を指定するだけで、あとは我々が担当します。ここまでやっている企業は他にありません。創業して6年ですが、一度利用していただいたクライアントの98%が当社サービスに満足しています。顧客満足度の高さは、我々の誇りです。

―起業したきっかけを教えてください。

 まずは私のアイデアがきっかけでした。私の経営している企業が大きくなるにつれ、作業量を減らすために、自動決済システムが必要だと感じたのです。ただ、はじめは小さな会社向けに始めた事業でした。大企業なら、きっと何らかの解決策を見出しているだろうと思ったのです。しかし、それは違いました。自動決済システムは売上に直接的に結びつかないうえに、多くのリソースを必要するため、どうしても後回しになりがちです。その結果、支払い業務を自動化せずに手作業で行っている企業が非常に多かったのです。

 そしてここ1年半ほどで、我々のソリューションが非常に普遍性の高いものだと気がついたのです。一定以上の規模に成長した企業、つまり数百社ものサプライヤーを抱える企業なら、いずれも決済システムの需要があると考え、事業拡大することにしたのです。

Image: Tipalti

ミス防止用のアルゴリズムを搭載

―電子送金や税制度、請求書対応に、Tipaltiはどのように使えますか。

 電子送金の場合、国によってフォーマット等が異なるので、それぞれに対応するのはかなりの手間になります。また、手作業だと入力ミスという問題があります。Tipaltiならミスがあっても通知してくれます。一度入力したデータは残りますから、同一の顧客ならいちど情報を入力すれば、次はシステムが自動入力してくれます。

 アメリカの税制では、支払先が国内か国外かで、年末の申告方法が変わります。12月になってからデータの不備が見つかり、経理部門が当時のサプライヤーへの確認作業に追われることがよくあります。Tipaltiでは、初回にデータ入力すれば、あとは自動処理になるので、作業量を軽減できます。請求書も同様に、手作業による手間とミスを減らすことができます。

―当初のデータ入力時にミスがあった場合はどのように対応していますか?

 支払先のデータは、ほとんどの場合、サプライヤー自身に入力してもらいます。データに間違いがあれば支払いを受け取ることができませんから、かなり慎重に正確なデータを入れてくれます。もちろん、ミス防止用のアルゴリズムも搭載しています。2万6千にも及ぶルールを用いてダブルチェックを行い、ミス等があればフラグが立つので、我々から各クライアントやサプライヤーに確認の連絡を入れます

ヨーロッパ、アジアにも進出計画中

―自動決済市場全体の現状と将来図について教えてください。

 世界がボーダーレスになるにつれて、自動決済システムの需要は高まります。市場は無限にあるといっていいでしょう。

―Tipaltiの将来的なビジョンを聞かせてください。

 短期的な視点でいえば、決済プロセスを短縮するため、あらたなベンダー向け財務ソリューションを間もなくローンチする予定です。また、テクノロジー業界以外の顧客も獲得していきたいですね。もちろん、グローバル化も視野に入れています。この1、2年でヨーロッパやアジアにも進出していきたいと考えています。特に通貨の種類が多いアジアではニーズが高いと思っています。

 当社のサービスは長期的に継続可能だと信じています。業界の枠を超え、市場は広大です。我々のサービスを利用することで、無駄な業務やミスから解放される企業はまだまだたくさんあります。我々は、そういったクライアントの声に耳を傾け、どのように役立てるかをしっかり考え、今後も成長していきたいと思っています。

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