ユニバーサルなデータ管理ソリューションを開発
――まずはTileDBを起業した経緯を教えてもらえますか?
私は香港科技大学(HKUST)で博士号を取得し、その後MITで客員研究員などを務め、2015年にボストンでIntelとMITが共同設立したビッグデータイニシアチブに携わることになりました。
その頃、大手ゲノミクス研究所からIntelに持ちかけられたのが、リサーチプロジェクトにおけるデータ管理の相談でした。実はプロジェクトのボトルネックは、本体の研究ではなく、複雑かつ多様なフォーマットで分散管理されていたデータにありました。
――御社ではどのようなサービスを提供しているのですか?
伝統的なデータベースやテーブルでは実現できない、多次元配列により全てのものを単一のデータ構造に格納できるソリューションを提供しています。簡単かつ安全で組織横断的なデータ共有と、スケーラブルなコンピュートを実現するサーバーレスのインフラストラクチャになっています。主要な適用領域は、ゲノミクスや時空間衛星画像などですが、その他にも金融など様々な領域での活用が可能です。
――御社の強みはどのような点でしょうか?
他社との大きな違いは、単一の製品であらゆる型のデータを処理できるため、非常にユニバーサルなストレージエンジンだということです。定番のプログラミング言語や分析ツールによるアクセスが可能になっており、柔軟かつ効率的なデータ処理を行うことができます。
また、当社のサービスは完全なサーバーレスであるため、PrestoDBやSparkといったツールとのAPI連携もサポートしています。また、企業の要望に応じて、包括的なソリューションである当社のTileDB Cloudをご利用いただくことも可能です。
Image: TileDB
――収益モデルはどうなっていますか?
メインコンポーネントであるストレージエンジンはオープンソースなので、無料です。これまでの収益源は主にプロフェッショナルサービス契約によるものでしたが、今後はSaaS型の従量課金によるサービス提供をメインに進めていきます。データをクラウドに置きたくない大企業などには、ライセンス料という形でお支払い頂く形式もあり得ます。
まずは欧米で事業基盤を固め、ゆくゆくはアジアへの進出も
――今後の展望を教えてください。
まずはエンジニアチームを拡大させ、TileDB Cloudを中心としたサービスを充実させていきます。顧客の拡大が当面の課題になりますので、マーケティングにも力を入れていきます。アメリカや子会社のあるヨーロッパ以外の地域にも拡大していきたいと考えています。
――アジア展開も視野に入っていますか?
まずはアメリカとヨーロッパで事業基盤を固めたいと思いますが、私は香港やシンガポールに住んでいたこともあり、アジア進出も検討しています。香港とシンガポール、そして日本でも研究開発を始めたいですね。どこかの市場において強いニーズが感じられれば、一気にリソースを投下することもありえます。
――もし、日本で御社の製品を展開するとしたら、どのような企業がターゲットになってくるのでしょうか?
日本市場でいうなら、製薬会社や医療関係の企業です。ボストンには日本の製薬会社がたくさんありますし、私の妻はその1社に勤めています。製薬会社は多様なさまざまなデータがあるため、TileDBを活用するのに最適な業界です。日本市場からのニーズを理解したいので、ぜひ色々な企業をディスカッションをしたいと考えています。
新型コロナウイルスの影響で、財務状況が厳しい企業も多いと思います。我々の製品なら、コストを抑えつつ最適なデータ管理ソリューションを、クラウド・オンプレミスのどちらでも提供できますので、ぜひとも力になりたいと考えています。