「コンピューティング技術の進化を示してきたムーアの法則は実はもう成立していません。進化のスピードは遅くなっているのです。しかし、データは異常な速度で蓄積され続けており、企業にとってその処理・分析の重要性は高まる一方です。全ての企業は、Oracle Database・SAP HANA・Microsoft SQL Serverなどに代表されるようなデータベースに大量のデータを保有しています」と業界が抱える問題について、TidalScale のCEOであるGary Smerdon氏は語る。

Gary Smerdon
TidalScale
President & CEO
Duke大学後、テクノロジー業界において25年以上にわたり最高経営責任者、マーケティング・オフィサー、最高戦略責任者、事業開発担当副社長、営業担当副社長、GMなど、様々な役職を経験。3つの特許を保有。AMDでは初の高速パーソナル コンピュータに直接関与し、PCの標準機能としてのネットワーキングという画期的なコンセプトを考案し、実行。LSI Coporationでは、その歴史上最も急成長したビジネスを立ち上げ、24ヶ月以内に収益を1億ドルにまで成長。LSIによるSandForceの4億ドルでの買収、Fusion-ioのSanDiskへの13億ドルでの売却を経験。2016年にTidalScaleのPresident & CEOに就任。
 その課題に対して、TidalScaleが提供するソリューションが、ソフトウェアによる仮想サーバーだ。業界大手のVMWareが仮想的にサーバーを細かく分割する機能を提供する一方で、TidalScaleは仮想サーバーの柔軟なサイズ変更を可能にする。これによって「集約」によりビッグデータに対応するための拡張性を実現したり、「縮小」によりサーバーにかかるコスト削減を実現したりと、状況に合わせた価値を提供する。

 これまで様々な企業が同種の課題解決に取り組んできたが、TidalScaleの大きな強みは、リアルタイムの機械学習をアプリケーションの下のレイヤーにおいて実装したことだ。これにより、エンドユーザーは何もせずとも、システムが自動的にデータ処理を最適化してくれる。



 日本市場について、Smerdon氏は「DRAM技術などに現れているように、多くの日本企業はデータ処理技術がもたらすインパクトを理解しています。我々のサービスコンセプトに対するる理解度も高いのではないかと期待しています」と話す。2018年10月に日本市場展開に向けて、デジタルテクノロジー(以下、DTC)と販売代理店契約を締結。日本国内におけるプロダクトの販売・導入・保守は、DTCがDell EMCサーバーを通じて提供している。

 コロナ禍でリモートワーク、クラウドサービスが広がり、企業が抱えるデータ量が劇的に増える一方で、不景気によるコスト削減圧力という板挟みになる中で、TidalScaleのサービスへの需要はますます高まっている。

 TidalScaleの長期的なビジョンは、そのソフトウェア仮想サーバー技術により、ネットワークやストレージのように、サーバーも自律的に最適化する仕組みを普及させることだ。そして、サーバー管理に注がれているエンジニアの労力をより付加価値の高い業務にシフトさせることを目指している。



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