Superb AIは、機械学習に不可欠なデータラベリング作業をAI主導で自動化・半自動化してスピーディに提供する企業だ。今回はCEO兼共同創業者のHyun Kim氏に話を聞いた。

機械学習に欠かせないデータ処理を迅速、正確に実行する最新AI

―まずはSuperb AIを設立した経緯について聞かせてもらえますか。

 私はアメリカのデューク大学で電気工学と生物医学を、そして大学院でコンピュータサイエンスを学んだ後、韓国の大手通信プロバイダーのであるSK Telecomに就職しました。新しいAI研究所のSK Team Brainと呼ばれるチームに創立メンバーとして参加し、自動運転車やAmazon Echo、Google HomeなどのAIスピーカーやゲームAIの制作にかかわりました。

 これらのプロジェクトで働く中で、AIを構築するには大規模なデータにアクセスしなければならない、という問題に直面しました。その経験をもとに、SK Telecomの同僚と共同でSuperb AIを設立したのです。

―御社のビジネスについて、もう少し具体的に教えてもらえますか?

 AIモデルを構築する場合、大量のデータが必要になりますが、データはそのままの状態では使用できません。生のデータを処理し、ラベル付きデータに変換する必要があります。これはデータラベリングと呼ばれる作業で、今はおもに途上国の安価な労働力の手作業で行われています。我々のサービスは、これを可能な限り自動化します。

 具体的なサービスでいうと、今はクライアント専用のダッシュボードに生データをアップロードしてもらい、それをアルゴリズムで自動処理、あるいは契約先のエンジニアが当社のソフトウェアを用いて半自動処理でラベリングを行い、できあがったデータをまたダッシュボードにお返しする、というサービスになります。AIのアルゴリズムを使用することで、通常よりはるかに高速かつ正確にデータ処理できます。

Hyun Kim
Superb AI
CEO & Co-founder
デューク大学でコンピュータ科学などを学んだのち、大手アクセラレータのYコンビネータに参加。韓国の大手通信会社SK TelecomでAIのリサーチ業務に携わったのち、2018年にSuperb AIを共同設立。CEOに就任し、現在に至る。

―今、新たなサービスを開発中だそうですね。

 はい。3カ月後に運用開始予定なのですが、こちらは完全なオンラインのWebプラットフォームになっています。

―2つの製品の主な違いはどこにあるのでしょうか。

 1つ目のサービスでは、クライアントは生データをアップした後は処理済みの完成データをそのまま受け取ることになります。一方、2番目の製品ではオンラインで作業されるため、クライアントがデータ収集や画像データ追加などをサードパーティに依頼するなど、よりカスタマイズしやすい点が大きな違いになります。

業界をリードし、ライバル他社をもパートナーに

―競合はいますか?また他社にはない、御社の強みはどのような点でしょうか。

 データラベリングのプロセス全体を自動化、あるいは半自動化できるAIを構築したことで、我々は業界をリードする力を得られたと思っています。昨年4月に会社を設立し、9月には最初の製品を発売、今年3月頃までには約120万ドルの売上を上げることができましたから。かなりスピーディな成長を成し遂げられました。AIでのオートメーション化は、多くのクライアントに喜んでいただけています。

 また、当社ではクライアント、そして労働力を提供してくれる競合他社にソフトウェアを提供しているので、本来の競合がパートナーのような存在になったのです。

―ビジネスモデルについても教えていただけますか?

 そうですね、ビジネスモデルは2つです。1つはクライアントに生データを提供してもらい、こちらでラベリング処理して、処理済みのデータを提供します。そのため、データあるいはラベリングデータ、タグごとに課金する仕組みです。

 2つ目のビジネスモデルは、ソフトウェアプラットフォームのみを提供するパターンです。ここでは、データ処理の詳細についてリクエストを送ってくるクライアントと、彼らに対し労働力を提供するサードパーティから利用料やマージンをいただいています。

誰でもAIを構築できるプラットフォームを作りたい

―今後のビジョンについて教えてください。

 私たちは今、ラベリング用のプラットフォームを構築しています。中期的な計画としては、データラベリングに加え、データ収集もやっていきたいと考えています。大企業は既にラベルリング用の生データを大量に所有していますが、中小企業やスタートアップ企業には、まずデータ自体がありませんから。

 長期的には、誰でもAIを構築できるプラットフォームを作りたいですね。ニッチな分野にあるスタートアップ、たとえばクラウドでのデータ収集やラベリングに特化した企業でも、当社のプラットフォームで作業を総合的に完了することができる、そういう存在になりたいと思います。

―日本を含め、アジア市場への参入はどのように考えていますか?

 はい。当社の本社はアメリカにありますが、韓国にも研究開発オフィスを作って、私は今そちらにいるんです。東京にも、先週行きました。できるだけ早く日本市場にも参入したいので、今は日本の大手企業とコンタクトをとっていますが、長期的な努力を重ね、信頼関係を築いていきたいと思っています。

 日本にはまだデータラベリングの企業などはあまりないと聞いているので、我々のようなサービスが役に立つのではないかと思います。韓国と日本は地理的にも近いですから。



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