アメリカには2種類の集団がある、と気づいた
―まずAradさんがSunbitを立ち上げた経緯について聞かせてもらえますか。
私はイスラエル出身で、ビジネススクールに通うためアメリカに来ました。それ以前はイスラエル海軍やIntelに勤務していました。その後、シカゴに拠点のある消費者向けオンラインローンの会社に入りました。2年後の2011年には最高執行責任者になり、ビジネス全体を管理するようになりました。移民の一人として、アメリカのフィンテック業界をつぶさに見ることができたのは貴重な経験でした。
そこでわかったことは、アメリカには2種類の集団があるということです。約60%の人は高い信用スコアを獲得し、好きなようにお金を借りることができます。しかし、残りの40%は信用力不足でクレジット決済ができず、現金でしか買い物ができないのです。手持ちが少ない状態では、病院に行くのもためらわれるような状況です。
クレジット決済というのは、必要なものを必要な時に買うためのシステムです。それがなければ、Eコマースの分野はここまで発展しなかったでしょう。ただ、企業の立場では、ローン返済が滞ってしまうのは困ります。だからこそ、信用力の低い人はクレジットカードを作る際に個人的な質問をされ、そのうえで審査に落とされる屈辱を味わうこともあるのです。
こうした経験から、アメリカの人々を救うビジネスにこそ好機があるのでは、と思い、Sunbitを設立しました。
なぜクレジットカードの審査に通らない人に融資できるのか?
―具体的には、どのようなサービスになるのでしょうか。
店頭で買い物をする際、当社のシステムの入った端末に免許証情報や氏名、メールアドレスなどの簡単な情報を入れていただければ、その場で簡単な信用力審査を行います。ほんの数分で完了します。あとは顧客の支払い能力に応じて上限額や毎月の支払額、利率などを決め、その範囲内で買い物を楽しんでいただけます。
その後、当社からお店のほうに代金を振り込み、手数料をいただいたら、あとは月々お客様側から返済していただく形になります。複雑な審査なしで買い物できるので、お店側としても顧客のリピート率が高まるわけですから、互いにメリットがあるシステムです。
―なぜクレジットカードの審査に通らないような方たちにも融資できるのでしょう?
クレジットカードというのは、少なくともその先数年の信用力を維持するものになります。しかし、我々の場合はその1回の買い物に対して、支払い能力、というよりは返済する意思があるかどうかを審査します。しかも実店舗で、店員の目の前で、なかなか詐欺的な行為はできませんよね。そういったシステムの違いが大きいですね。
また私たちの融資は一般的な融資に比べて、少額です。私たちは$600〜$700を貸すため、月に返済する金額は$60〜$70と少額です。この額はいくら信用スコアが低い人でも払える金額だと考えています。
―どのようなビジネスモデルをとられているのでしょうか?
販売店からの手数料と、顧客側からの利子が私たちの収入になります。
―競合はいますか?
実店舗を対象にしたビジネスですから、競争相手というのは見当たらないですね。
―画期的なサービスということですね。今後のビジョンについてはどのようにお考えですか?
今は車のディーラーが主な市場になっているので、これを歯医者など日常的に使う医療機関に広げていきたいですね。長期的には、より多くの業界に参入したいと考えています。
―日本など、国際市場への参入予定はあるのでしょうか。
今はまだアメリカ国内に重点をおいていますが、いずれ必ず国外にも進出していくつもりです。その時は中国や日本が視野に入ってくると思います。誰でも気軽にローンで買い物が楽しめるように、我々も力を尽くしていくつもりです。