医者が患者の診断に集中できるようにしたい
SukiはAIを利用した医者向けの音声認識デジタルアシスタントを構築している。Sukiのデジタルアシスタントは主に医者が患者を診察している最中に、対話の書き起こしをする。「医者にとってのAlexaです」とCEOのSoni氏。
世界中にいる医者たちには多くの書類や請求書の作成などで負担がかかっている。そして患者が再び病院を訪れた際に備えて、それらの内容を記録しておかなければいけない。現在、これらのことは電子カルテ上で行われているが、医者たちは1日の2〜3時間を患者の情報を入力することに費やさなければならない。または医者たちは書き起こし用のソフトウェアの利用や、「メディカルスクライブ」と呼ばれる実際に横でノートをとる人間の雇用、もしくは海外にあるエージェンシーに音声を送って書き起こしを外注している。これらはコストがかかる上に、セキュリティの面でも問題がある。「このデジタルアシスタントのゴールは、医者が書類作成に費やす時間を減らし、患者を診ることに集中してもらうことです」とSoni氏は語る。
AIを利用して、話者の特徴を学習
このプロダクトの特徴は、他の書き起こしソフトウェアにはない、“コマンド”が使用できる点だ。例えば医者がSukiのデジタルアシスタントに“患者が再診察に来るように”と指令を出すことができるのだ。
またAIは話者のアクセントや抑揚などを学んでいくため、より正確な書き起こしが可能だ。Sukiのソフトウェアは利用するたびに医者の言葉を学び、よりカスタマイズされていく。「一般の方がSiriに話しかけるのとは違い、医者には専門的用語がたくさんあります。それらは一般的に使われる言葉よりもより幅の狭いものになります。ですから、より高度な音声認識が可能なのです」。セキュリティ面でもHIPAA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)をクリアした最初の音声認識デジタルアシスタントプラットフォームとなっている。
医療業界のイノベーションへ
Soni氏はヘルスケア業界において新たな進歩を生み出したいと考え、Sukiを設立したという。設立して約一年で、6箇所で医者たちにフルタイムで運用されている。
Soni氏は、医者にとっての問題は書類作成だけではないと言う。将来的にはマシンラーニングと音声コンピューティングによって医療業界にあるさまざまな障壁を取り除くことが目標だ。「Sukiによって、5年後、10年後に医者は本当に患者を診ることだけに集中できるようにすることを目指しています」。