SQream Technologies(本社:イスラエル)は、製造、通信、金融、リテールなどの業界向けに、ペタバイト規模のビッグデータ分析用SQLデータベースを開発、提供している。GPU(画像処理ユニット)を活用するSQreamDBは、企業が持つ膨大なデータを余すところなく分析し、パフォーマンス向上、フットプリント削減につなげる。加えて、分析対象データ量においてコスト効率のよいスケーリングを可能にする。企業がビッグデータから重要なインサイトを導き出すことを支援する同社。共同創業者でCEOのAmi Gal氏に、創業の経緯や製品の優位性、今後の展望について話を聞いた。

膨大かつ複雑なデータセットからインサイトを 企業の競争力を向上させる

――SQream Technologiesの創業経緯を教えてください。

 1990年代後半に、大規模なデータ中心のコールセンターとCRMソリューション開発を手掛けるManov社を創業し、2000年にMagic Software Enterprisesに売却した後、同社でR&Dマネージャーや事業開発のシニアポジションに就きました。その頃から、私はスタートアップへの投資を始めており、2010年末にはSQream Technologies(以下、SQream)を共同創業しました。

 私の趣味の一つはゲームなのですが、共同創業者と共に、ゲームで使用されるGPUを活用し、効率的な方法でエンタープライズSQLクエリを開発することができたら素晴らしいと考えたことがSQream創業のきっかけです。趣味であるゲームと、私の専門である高パフォーマンスコンピューティングのビジネスが融合したようなものです。

 また、私は数社のスタートアップと数人の創業者のメンター、投資も行っています。創業者が大きな会社を作るのを手助けするのも私の趣味です。

Ami Gal
SQream Technologies
Co-Founder & CEO
大規模なデータ中心のコールセンター及びCRMソリューションの開発企業Manovを1998年に共同創業し、CTO、VP R&Dなどを務める。Magic Software EnterprisesがManovを買収後、同社でR&Dマネージャーや事業開発のシニアポジションに就く。20年以上に渡り、テクノロジー業界の専門知識と経営者としての経験を活かした後、2010年にSQream Technologiesを共同創業、CEOに就任。スタートアップへの投資のほか、IBM Smartcamp、Seedcamp、Kamatechなどの新興企業プログラムでメンターを務めた経歴もある。

――御社のミッションを教えて下さい。

 SQreamは、テルアビブ、ニューヨーク、シアトル、欧州等に渡り、現在150人強の従業員がいます。この世界で我々がやりたいことは、企業がビッグデータから重要なインサイトを導き出すことを支援することで、「夢の実現」への後押しをすることです。

 今日、大規模なデータセットや複雑な課題、多次元クエリ、データスケールなどを処理することは困難であり、すべてのデータからインサイトを得ることが非常に難しくなっています。一方、インサイトがあれば競合他社より優位に競争できるため、インサイトを得ることはビジネスで最も重要なものになりつつあります。

 私たちは、企業にとってのこの問題を解決するために、あらゆるサイズのデータセットでも、あらゆる複雑なクエリでも、オンプレミスでもクラウドでも、企業が必要とすることになんでも対応できるようにしています。

 そして、ビッグデータを扱うあらゆる規模の顧客に対して、インサイトを得るための障壁を取り除いています。それは、エンジニアリングやデータに精通した人がいない企業であることもあれば、莫大な量の複雑なデータセットを持つSamsungやLGのようなグローバル企業の顧客もいます。これが私たちの使命です。

製品の優位性は、スケーラビリティ、高速性、導入の容易さ

――ペタバイト規模のデータに必要なソリューションを提供する次世代分析データベースである、SQreamDBについて教えて下さい。

 私たちの主力製品である、分析用データベースプラットフォームSQream DBは、GPUを使用しています。これにより、膨大なデータセットをより高速に処理することができ、圧縮・解凍、暗号化・復号化、そして分析を、より大きなスケールでより速く行うことができるようになりました。

 アーキテクチャ全体は、GPUなどの複数のアーキテクチャをサポートするためにゼロから構築しました。今日、企業が使用している典型的なアーキテクチャはCPUに基づいており、スケーラビリティ及びパフォーマンスはかなり制限されています。

 当社の強みは、スケーラビリティと高速性、他の製品と比較して導入が非常に簡単なことです。昨今の経済的背景では、導入が簡単なことは非常に重要になってきています。

 また、2021年末にPanoply社を買収しました。Panoplyは、ノーコード データ プラットフォームを手掛けていました。同製品は、エグゼクティブ、ビジネスマンまたはデータの専門家ではない人々、データエンジニアではない人を主要顧客としてフォーカスしています。いくつかのボタンをクリックするだけで、データに関するダッシュボードが表示されます。多くの企業が、使いやすさの課題を解決しようと取り組んでいます。

 当社の顧客層においては、半導体および製造業界が最も成長している業界となります。続いて、通信事業者、そして銀行、決済・クレジットカード会社、フィンテック等を含む金融業界が主要3大顧客層になります。また、リテール、eコマースでのニーズも拡大しています。

 一般的なユースケースとして、通信企業のお客様は、ネットワークタワーの不具合を事前に修正するために予測分析を利用しています。非常に大きなデータセットの上で機械学習アルゴリズムを実行し、故障を予測するのです。また、顧客行動分析を行っている顧客もいます。

 一方、半導体、製造業では、データの正常性を発見し、製造プラットフォームを修正することで、歩留まり率を向上させることができるトレーサビリティ、金融機関では顧客リスク分析、詐欺や不正検知のリスク分析での利用が高いです。

――AI、機械学習の利用が増加している今、御社のサービスの需要は著しく増加しているのではないでしょうか。

 そうですね。特に機械学習アルゴリズムのおかげで需要が高まっていると考えています。その他、最近の傾向では、最適化に注力している企業が増加していることを背景に、莫大な量の複雑なデータセットから真のインサイトを得て、コスト効率化を推進するための需要が著しく増加しています。

韓国での成功体験活かし、日本市場参入へ 日系企業との協業に関心

――御社は、アリババグループ等を含む多くの投資家から、累計7,700万ドルの資金調達に成功しています。資金の使途について教えて下さい。

 資金の大部分は、製品の堅牢性を向上させるためのIP、R&Dに投資しています。また、新市場参入のためにも投資を増やし始めています。日本参入は、今後数年間の主要ターゲット市場の一つです。北米への投資も大幅に拡大しています。パートナーシップ、販売員、チャネル管理と、顧客サポートとの市場開拓への取り組みを拡大するために投資しています。

――日本市場への参入に関して、御社の考えをお聞かせください。

 私たちはまさに今、日本市場への参入を検討しており、日本の現地企業と提携を結びたいと考えています。今年は、私自身が日本に行き、潜在的なパートナーとの面会などを計画しています。日本では半導体、製造、金融、通信分野の企業との協業に注目しています。また、自動車メーカーの製造部門との協業に注目しています。

 当社は、Samsung、SKテレコム、LGなどの韓国の大企業と共に、韓国市場で大きな成功を収めています。これまでの経験上、システムインテグレーターと非常に良好な提携関係を築き、現地の言語と文化を持つパートナーと共に市場に参入してきたことは、私たちの成功体験となっています。

 そして、これが日本で成功する唯一の方法だと考えています。私たちは、日本での適切な業界の適切な企業とのパートナーシップを築くことを優先に考えています。

――最後に、御社の長期的なビジョンについて教えて下さい。

 私たちは膨大かつ複雑なデータセットを世界で最も簡単に活用するソリューションを提供する企業として、業界をリードする存在になりたいと考えています。データセットは、指数関数的に今後も増加し、企業にとって最重要な資産になります。私たちは、企業がすべてのデータセットを必要な場所で常に処理できるようにしたいと考えています。

 私たちは、データウェアハウス企業のSnowflakeやDatabricksといった企業より、更に成長できる可能性があると思います。今後3~5年で、数億ドルの収益を上げ、世界中に重要なパートナーシップを持つ企業となることを目指しています。その中でも、日本市場は私たちにとって非常に重要な市場であると考えています。



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