撮影した動画から積荷量を認識
―創業した経緯を教えてください。
引越会社で法人移転部門を立ち上げた時に、驚いたことがきっかけです。価格設定がとても高くなっていたこと。現場にはテクノロジーはなく、全て紙の資料のみ。従業員が顧客のことを考えていなかったわけではありませんが、街に一つだけの引越業者という意識から、テクノロジーで業務を改善しようとはしなかったのです。しかし私は、引越サービスを改善するようなテクノロジーを生み出せると考えました。顧客は今までとは異なるエクスペリエンスを求めていたのを私は見ていました。そこで退職し、創業しました。
引越会社の仕事は世界中どこでも同じです。顧客が電話し、引越会社が見積りのため顧客の家を訪れます。しかし顧客には、引越し会社の人間を家に入れたくない人もいました。そうした顧客のためにもなるテクノロジーを生み出せないか、と考えました。
―どのようなテクノロジーでしょうか。
そこで、Google Web RTCを使って、一つのアプリケーションを開発し、これを2016年にアンドロイドとiOSで稼働可能にしました。それは、顧客が動画を撮影することで、アルゴリズムにより荷物の体積や重さを認識できるというアプリケーションでした。私達はやがてこれをSaaSプロダクトとして世界中の引越会社に販売するようになりました。
2018年夏には、83か国、1000超の地域、11言語をカバーする世界最大の引越会社のネットワークを築きました。この時期、引越会社は収益性で苦戦していました。そこで引越会社はプロセスをどんどん当社に任せることに気付きだしたのです。当社は、荷物量の計算、価格提案、案件の予約、顧客の変更など、ますます多くのことを引越会社から引き継ぐことになりました。
―どのようにマネタイズしていますか。
まず、引越会社へのソフトウェア販売です。そのうえ、販売で築いたネットワークを活用し、企業がオークションで入札のできるマーケットプレイスを運営しています。オークションではトラック、梱包、引越サービスまで全てを扱います。
例えばシドニーから東京へ2立方メートルの荷物を移送する注文があった場合、40フィートのコンテナに空きがあれば、その「空き」へ入札することができます。入札することで一般よりも低価格で移送することができます。落札価格の数%を私たちに払っていただく仕組みをとっています。
Z世代やミレニアル世代に注目
―日本でも展開していますか。
日本では、Allied Pickfords日本法人、日本通運と協業しています。日本は機会の大きな市場と見ています。なかでもZ世代やミレニアル世代が、社会をどう見ているか、何を購入しようとしているか、どんなエクスペリエンスを求めているかを知ることを大切にしています。
―今後のビジョンを教えてください。
中期的には欧州とアジアで事業を拡大していく目標です。現状はコロナパンデミックの影響でアジアでの展開は遅れていますが、終息したら拡大させる考えです。長期的にはモビリティ分野において確固たるブランドを築くこと、人々がどこにでも移動できる機会を作っていくことです。