軍民連携で退役軍人の転職をサポート
―Shiftの事業について教えてください。
私は米海軍で7年間兵役を務め、爆発物処理に従事しました。軍では外国軍隊と共同作戦の遂行や訓練を行いました。
そこで、私は退役する軍人たちが自分に何ができるのか知りたいと考えていることに気づきました。軍人は潜水艦任務や爆発物処理任務など、大変ユニークな経験をしています。退役後、自らの経験や特性が民間企業でどう活かせるのか知りたいはずです。私が退役する時も同じことを考えました。
米国では毎年約25万人が退役します。彼らは退役後、民間企業に転職すれば、環境が軍とは全く変わります。軍人は退役後に就職説明会に行き、就職先を見つけます。しかし、環境も大きく違う民間企業に就職を決めることを就職説明会という場で行うのはとても難しく、その決断は彼らやその家族にとって大きなことです。
私たちは、軍と民間企業が連携したフェローシップ・プログラムというアイデアに行き着きました。これは、退役を考えている軍人が、軍に籍を置いたままで一般の都市に移り、当社の提携する民間企業で働くことを可能にするものです。最初の3ヶ月間は軍が給与や福利厚生を保障します。一方で彼らは持てるスキルを新たな環境で活かせるスキルに換える。そうすることで、彼らが適切なキャリア判断をすることを可能にします。
海外の退役軍人の転職支援にも関心
―貢献度の高いビジネスですね。転職希望者と企業をどうマッチングさせているか、教えてください。
当社は転職希望者のスキル、性格、価値観を当社独自のアルゴリズムで管理しています。このアルゴリズムが職種に合う希望者を1万人の転職希望者から10人まで絞ります。その後、私たちのチームが最も適した希望者を選択します。
また就職先の企業には徹底した理解啓発を行っています。どの軍のバックグラウンドがその企業に向いているのか。そして就職希望者にも自分のストーリーを自信を持って話し、魅力的に伝えられるようサポートしています。
当社は1年単位の課金制になっています。利用企業は1年間、当社のネットワークから一定の人数を採ることができます。
当社が提携するのは主にテック企業やメディア企業です。最近では金融系や専門系の企業とも提携を始めました。
―海外へのビジネス拡大の可能性を教えてください。
現在、英国とオーストラリアの両政府と交渉しています。これはアメリカ国内のビジネスと同じものを英国軍、オーストラリア軍の退役軍人にも提供することを考えています。
またこれはとても興味深いですが、多くのアメリカの退役軍人たちが海外で働きたいと考えています。ですから今後、その可能性も含めて海外企業との連携を考えています。
日本企業との連携にも大変興味があります。日本市場での人事や採用を理解した人材と組みたいと考えています。米国とは採用プロセスやフィーの構成が異なることは想像できます。文化も異なると思いますので、それらの理解をサポートしてくれると良いですね。
また米軍の人材にも目を向け、雇用してくれるようなパートナーも歓迎します。もちろん、日本政府と連携し、自衛隊へ我々のビジネスを提供することにも関心があります。
肉体労働から高度技術労働へのシフト
―当面の目標と、長期的なビジョンについて教えてもらえますか。
当面の目標は、多くの人々に「退役軍人の転職サービスといえばShift」というイメージを持ってもらうことです。彼らが転職するときにまた初めからやり直すのではなく、今持っている能力を活かせるようにしたいのです。
長期的には、転職会社は実に重要になっていくと考えます。自動化の影響を受ける職に就いている人々がいるからです。かたやデータサイエンスやセールスディベロップメントといった、20年前には存在しなかった職が求人トップ10に入っています。
長期的ビジョンは、肉体労働に従事する人々がキャリアチェンジの準備ができ、新たな方向に自信を持ってもらえるようにできる企業になることです。
現在当社は、軍以外にも、軍と近い性質を持つコミュニティ、たとえば平和部隊、アスリート、政府機関などにもネットワークを広げていけないかとリサーチしているところです。