※追加取材した内容をもとに、記事を加筆しました。(2020/3/9)
オフィスは不要になり人材に国境は消え、HRが課題に
―まずはRemote設立の経緯を教えてもらえますか。
私は、GitLabの初期メンバーでした。当時のメンバーは、オランダ、ルーマニア、セルビア、そしてウクライナと、さまざまな国に暮らしていました。当然、全員が通勤できるオフィスを持つことは不可能だったので、オフィスを設けず仕事を進めました。GitLabではこのやり方が上手くいき定着しました。そして、居住地に関係なくスタッフの採用を行い続けた結果、現在は世界67カ国に住む、1,300人の社員が働いています。
新しい国で社員を雇用した際、適切な雇用契約の締結、給与の支払いと福利厚生の提供方法などHRに課題がありました。この課題を解決するためにあらゆるサービスを試しましたが、満足できるソリューションがありませんでした。社員の居住国に会社を設立すれば、こうした問題は解決できますが、これはソフトウェアビジネスでは利点がなく現実的ではありません。私は、この問題を解決するために親友のMarceloと共にRemoteを起業したのです。
国外人材の人事業務をRemoteの海外拠点が全面支援
―具体的にどういったサービスを提供しているのでしょうか。
例えば、オランダの顧客企業がポルトガルに住んでいるジェーンさんを雇いたい場合、当社にジェーンさんの給与額、福利厚生など待遇や条件をご提示いただきます。当社のポルトガル支社が、顧客企業が提示した待遇と条件でジェーンさんを雇用します。顧客企業は、わずらわしいHRの手続きをすることなく、ジェーンさんを社員待遇で迎えることができます。
―競合他社との違いを教えてください。
グローバルな雇用サービスや、大手人材会社など、競合は多くいますが、彼らは対応までに時間がかかり、融通がきかず、料金も高いです。
当社では、独自の管理プラットフォームをご提供しており、そのプラットフォームへの登録は数分で終わります。また、サービスの利用料は1社員につき月額299ドルからご提供しており、他社と比較して非常にお手頃です。
これらに加え、当社の柔軟性が特に他社と違うところです。当社は、独自のグローバルインフラを持ち、全て自社内で行っています。例えば顧客企業から福利厚生に新しいメニューを加えたいとリクエストがあり、それが対象国内で提供可能なものであれば、すぐにメニューに加えることができます。
Image: Remote
2020年は売上・顧客が倍々ペースで成長
―今後のビジョンについて聞かせてもらえますか。
2020年4月の資金調達前までは、6ヶ国のみでサービスを展開していましたが、資金調達を経て2020年に30ヶ国に広がり、2021年には80ヶ国に広げたいと考えています。2020年は顧客も売上も毎月倍々のペースで成長しています。
私たちは、GitLabでの経験を踏まえ、スタートアップなどの企業が、より簡単にスケールアップできるよう支援したいと考えています。優秀な人材を見つけ、その人材を雇用し会社に定着させることは、企業が成長する上で重要で難しい課題です。顧客が本業に集中できるように、こうした課題をRemoteが解決していきたいと考えています。
―日本での展開も予定していますか。
そうですね。日本企業で、他国で人材を雇用したいと思っている方は、私たちを通して雇用することができます。しかし、日本の個人が海外の会社で働きたいと思っている場合、まだできません。
当社のサービスは、居住国を変えずに世界中の企業で働く機会を提供するものです。コロナ危機により、リモートワークが一気に浸透した今、国内だけでなく国外で人材を探す動きが世界中で加速しています。日本には優秀な方が多くおり、そうした優秀な人材にアクセスしたいと考えているグローバル企業は多く需要があります。2021年には実現できるようにしたいと考えています。