生粋のエンジニアが生み出した、最新のワイヤレス充電システム
―まずは、Chrisさんのこれまでのビジネスキャリアを教えてもらえますか。
私はマサチューセッツ工科大学の出身です。当初は応用物理が専門だったのですが、どうも私は紙の上だけの数字では飽き足らず、それを使ってプロトタイプを作っていくことに楽しみを覚えてしまったため、電気工学に転向し、最終的には機械工学に行きました。プラットフォームテクノロジーシステムの構築にはまってしまったんです。あとは、さまざまなプロトタイプを作っては他のエンジニアに「これで何する?」と聞いて回っていました。
私は、研究というのは、他の研究者と一緒に何か新しいものを作り上げていく促進剤になるものだと考えています。エンジニアたちがより良いものを作れるように、コア部分を提供していく、それが会社であり、テクノロジーだと思っているんです。大学時代も、宿題そっちのけで物理の実験をやっていましたね。実体験を通じて学びを得たかったんです。
大学を卒業してから、アクセラレータのY Combinatorのプログラムに参加し、すぐに今の会社を作りました。
―生粋のエンジニアなのですね。御社では今どのような製品を扱っているのですか?
当社が取り扱っているのは、広範囲に対応するワイヤレス充電機器です。離れたところから、さまざまなデバイスに電力供給するものです。Wi-Fiの電波をイメージしていただけるとわかると思います。
商品は主に2種類で、1つは閉鎖空間でのハイパワー充電システムです。クローゼットやツールボックスなどに充電したいアイテムを入れて、まとめて充電する形ですね。あとは、IoT機器やセンサー用のオープン空間向け充電システムになります。1つ1つの電力供給が小さい分、広範囲に使用することができます。
ワイヤレス充電は「あれば便利」から「欠かせないもの」へ
―そもそもの質問なのですが、なぜワイヤレスである必要があるのでしょうか?携帯電話なども、コンセントに差せば充電できますよね。
たしかに、一般的にワイヤレス充電というのは「あれば便利」という認識も多いです。でも、産業界ではそうとも言えません。たとえば、Amazonの倉庫などでは数十万というカメラセンサーで商品の状態を管理しています。しかし、センサーを常時フル起動していては、すぐに電池が切れてしまう。しかし、センサーの真のポテンシャルを活用するにはすべてのデバイスに効率的な電力供給したい、というジレンマがあります。そこが、ニーズです。つまり、広範囲のワイヤレス充電はすでに「欠かせないもの」になっているのです。
Image: Reach Labs
―なるほど、業界ではすでにニーズがあるんですね。ちなみに、御社が今、一番力を入れている業界は?
実は、今そこを検証している最中なんです。先ほど、当社にはいくつか製品があるとお話しましたが、これを1つに絞っていきたいと思っているのです。ですから、今は各領域で少数のクライアントを受け入れ、その中で進捗状況や成果を追跡し、どの領域が最もクライアントに価値を提供できているのか、検証しています。現状、仮説は立っています。ただ、それを裏付けするデータが不完全なので、まだそれを見極めているところです。
技術を最大限に活かせる領域を模索
―御社の収益モデルについて教えてください。
たとえば、顧客から「IoTセンサーをまとめて充電したい」や「終業時にアイテムをまとめてツールボックスに入れていくと、翌朝充電完了しているようなシステムが欲しい」などと依頼を受けたとします。我々は実際の運用方法など詳しい内容を聞いたうえで、実証実験を行い、プロトタイプにかかる費用を提示します。そこでOKが出れば、仮運用、そして実装工程に移ります。お客様のニーズに合わせて、システムをカスタマイズする感じですね。
―それぞれのニーズにしっかり応えていくのですね。この分野は競合も多いと思いますが、御社ならではの強みがあれば教えてください。
たしかに、ワイヤレス充電というのは今盛り上がっていますから、競合も多くあります。最大のライバルはOssiaという会社です。彼らの送電システムも素晴らしいと思います。ただ、当社のものと比べると送信機と受信機の最適化に手間がかかり、効率が悪くなるという欠点があります。
その点、我々Reach Labsのシステムでは独自のアルゴリズムがアンテナの動作を制御して、あらゆるデバイスに電力を供給するための最適な経路を検索して特定するので、パフォーマンス効率が高いのです。同じ条件化なら、10倍も20倍も効率的なんですよ。
―よくわかりました。次に、将来のビジョンをお聞かせください。
まずは、先ほども言いましたが、もっとも付加価値のある製品ラインを見出していきたいですね。今はまだ絞りきれていないので、力を入れるべき方向性を決めたうえで、クライアントのニーズに応えていきます。あとは、コアのハードウェアに、どれだけソフトウェアを上乗せしていけるかも課題になってくると思います。
―日本を含めた海外展開も視野に入っているのでしょうか?
日本の自動化やイノベーションは素晴らしいと思います。当社をひいきにしてくれているクライアントでも、日本の製品を使っているところはたくさんありますし、日本企業との取引も多くあります。これからもっと日本の製造業や物流業について学びたいですし、どこかのタイミングで日本に行きたいと思っています。