パーティドレスにウェディングドレス、学校等の公式行事で使用されるフォーマルウェアやスーツなどは、人生で数回しか着用しないのに値段が張りがちだ。米国発のQueenlyは、そんな高額でコストパフォーマンスが悪いものを、もっと気軽に、簡単に売買できるようフォーマルウェアのマーケットプレイスを展開している。立ち上げから2年という間もないスタートアップの道のりについて共同創業者でCEOのTrisha Bantigue氏に話を聞いた。

女性向けフォーマルウェア特化型マーケットプレイス

――Queenlyのオンラインマーケットプレイスについて教えてください。

 Queenlyは、フォーマルウェアをオンラインで販売する先進的なプラットフォームです。私たちが取り扱っているのは、多くの女性にとって重要な意味を持つブライダルであったり、パーティ向けのフォーマルウェアです。ユーザーが持っているドレスを売ったり、多くの選択肢の中から、低価格で購入できるようにしています。

Trisha Bantigue
Queenly
Co-Founder & CEO
カリフォルニア大学バークレー校で国際関係を専攻し、Facebook、Googleで総務に携わる。アジア財団での就労を経て、Uberに転職し主に製品開発や人材雇用に携わる。2019年にQueenlyを立ち上げ、CEOに就任。また自身の経歴を生かした教育活動にも取り組んでいる。

―どうしてこのようなオンラインストアを作ろうと思ったのですか。

 私は米国移民の子として生まれ、決して裕福な家庭環境で育ったわけではありませんでした。UCバークレー校に入学したのですが、学費を稼ぐために17歳で自立し、自分で生計を立てていました。そこで、奨学金を得るのに貢献したのがビューティコンテストに出場することでした。

 コンテストに出場する過程で、さまざまな女性が必ずしもイブニングドレスを購入する経済的な余裕があるわけではないという現実を知りました。みなが6万円もするドレスを買えるわけではありません。男性はタキシードを1着持っていれば十分ですが、女性の場合その都度場面によってドレスを買い足さなくてはいけませんから。また、これはビューティコンテスト以外でも起こっていることだと気づきました。

 その後、私はGoogleやFacebookといったテック業界で働き、その経験を生かして、この問題を解決しなくてはいけないという信念を持ち、2018年に共同創業者で友人でもあるKathy Zhouに話を持ちかけ、Queenlyの創設に至りました。

「こんまりブーム」も追い風に

――2019年に創業し約2年間が経ちました。これまでの道のりはどうでしたか。

 プレシードラウンドで資金調達を行う際、ほとんどの投資家が市場規模や購入力の大きさなどの知識に欠けていました。やっと資金調達をしたのち、パンデミックに見舞われたので、せっかく投資家を説得したのにもかかわらず、どのようにしてビジネスを展開していいか分かりませんでした。ロックダウン当初は、かなり参っていましたね。

 そこで、とりあえず需要がないのは仕方ないと割り切って、供給側に注力することにしました。私たちは米国でフォーマルウェアを卸している最大のサプライヤーと提携したり、フォーマルウェアを販売している中小企業と提携したりして、パンデミック中でも供給率を400%も上げることに成功しました。流行りであった「こんまりメソッド」などの大掃除ブームも私たちにとって在庫を増やす追い風となりました。

正確で強固な検索エンジンが差別化ポイント

――プラットフォームの開発では何を重視しましたか。

 Queenlyのもう1人の共同創設者であるZhouは、ソフトウェアエンジニアなのでウェブサイトもアプリも彼女が1人で開発しました。そんなこと前代未聞です。

 彼女はもともとPinterestで働いていて、ほしいものを検索し正確な検索結果を得ることの重要性を認識していました。そこで、在庫が増えるたびに、私たちは検索エンジンをより正確にすることに時間を費やしました。

Image: Queenly HP

 この業界は、歴史的にはオフラインでビジネスをすることが多かったので、オンラインでの情報はあまり多くありませんでした。私たちはドレスの特徴を色や値段とマッチングすることから始め、マシンラーニングアルゴリズムを取り入れて検索エンジンをより正確にしていきました。強固な検索エンジンを開発した経験のある方なら分かりますが、これは並大抵のことではありません。

――a16zなどからシードで資金調達しました。調達した資金の使い道や今後の目標を教えてください。

 私たちは、アジア系女性2名が立ち上げた企業で、男性にあまり理解されない製品なので常にシリコンバレーの負け組のような感覚がつきまとっていました。なので、ここまで大きなVCに注目してもらえて、支援してもらえることは予想外でした。

 ピッチを行うときも、競合他社との比較や在庫の違いなどをZoomの画面上で見せながら行いました。このプラットフォームの重要性を説得することに非常に時間を費やしたのです。

 長らく私たちはオフィスすら持たず、コストを削ってビジネスを行っていました。私は主にPRやマーケティングを担当し、Zhouは製品開発を担当していました。資金調達をしたおかげで、エンジニアを雇ってより拡張的に製品開発をしたり、マーケティング担当を雇ったり、営業担当を雇ったり、各部門担当の人材を雇用することができましたし、オフィスも構えることができました。

 これら全てはまだ最近の出来事なので、人材研修を行っている最中だったりするのですが、人手不足でできなかったことが今ではできるようになっています。機能を強化したり、アプリを強化したりすることに集中していきたいです。

国際展開をしながら伝統衣装も販売していきたい

――日本でのサービス展開は検討していますか。

 私はいつも投資家から、「ドレス以外の物も販売する予定はありますか?」と聞かれますが、私はフォーマルウェアに特化したいと思っています。その一環として、多国籍のフォーマルウェアを取り扱うことが長期的な目標です。

 衣類の売買ができるプラットフォームは既に市場にたくさんあります。しかしフォーマルウェアはその価格の高さゆえ、長らく誰からも改革されず、また秘めているポテンシャルも大きいと感じています。国際的に拡大する方が、取り扱い製品を拡大するよりもはるかに重要だと思っています。

 例えば、インドや中国の伝統衣装などがその一例です。現段階ではカナダやメキシコが一番参入しやすい市場なので、そこを最初に検討しています。すでに、英国、オーストラリア、グアム、プエルトリコ、インドネシアといった国にも発送しているので、もちろん日本にもいつか進出できたらと思います。



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