Q Bioは効率的な健康診断と、自分の健康情報にアクセス可能な包括的プラットフォームを提供する企業だ。今回は創業者兼CEOのJeffrey Kaditz 氏に話を聞いた。

個人の健康状態を「主観的な情報」から、「客観的データ」へと変換

―まずはCEOの経歴やQ Bio設立までの経緯をお聞かせください。

 私は、カーネギーメロン大学で物理学とコンピュータ科学の学士号を取得し、大学院に進みました。しかし起業家になるという夢が捨てられず、2004年以降、ネットワークセキュリティや家電、Syntechなどさまざまな分野での起業を経験しました。

 その中で、物理学出身の自分が客観的データに基づいて「人の健康」というテーマを掘り下げていけないかと考えるようになりました。私たちは、自らの健康状態についてあまりにも無知で、主観的ですから。こうしたことをテーマにして生まれたのが、Q Bioです。

Jeffrey Kaditz
Q Bio
Founder & CEO
カーネギーメロン大学で物理およびコンピュータ科学について学ぶ。卒業後はマイクロソフトやDeNAなどの企業の勤務や起業家として複数の会社設立、運営に関与。2015年にQ Bioを設立、CTOおよびCEOに就任。
 

―Q Bioでは具体的にどのようなサービスを提供しているのでしょうか。

 私たちのミッションはより低価格で、効率的に人々の健康を維持することです。貧富の差が健康の差になることは、非常に悲しいことですから。当社の製品はユーザや臨床医が、「体の中で起きている変化」を追跡するためのプラットフォームなのです。

―通常の健康診断などと、何が違うのでしょうか。

 どんな健康のリスクがあって、どんな変化に気を配らなければいけないのかをチェックし、それを早期に検出するためのプラットフォームが我々の製品です。

 少なくともアメリカでは健康診断に毎年通っている人の死亡率が低いという調査結果はありません。健康診断で集められる情報を見ると、人間の身体は300年間、変わっていないわけです。ですから、これは私の考え方ですが、我々は健康診断で適切なデータを測っていないと考えました。

 我々は身体にちょっとした変化があれば、それを早期に発見し、ユーザーにアラートを出します。これはGoogleのインデックスのようなもので、身体にインデックスを作成して問題を見つけられるようにするということです。

健康情報を一カ所で管理することで、病気のリスクや体調の変化をいち早く察知

―ユーザーは御社とメンバー契約し、健康診断を受け、データ解析を依頼するということになるのでしょうか。

 そうですね、基本的には1年契約で、随時更新していただくかたちになります。契約内容にもよりますが、基本的には1年に1度当社で提供している健康診断を受けていただき、その結果を後日テレビ電話などでご報告します。その際、ホームドクターなどが同席していてもかまいません。

 それぞれの健康データはBio Vaultという当社のシステムに蓄積し、健康履歴のようなかたちで随時確認していただくことができます。自分のデータを信頼する医師に提供することも可能です。通常は健康や検診のデータは病院に保管されますが、当社のシステムではユーザー個人がその情報を把握、管理することができるのが、大きなメリットですね。

―健康診断ではどのようなデータを収集するのでしょうか。

 こちらで実施している健康診断は世界最速の75分です。歯のクリーニングするのと変わらない時間で、体にかかわるあらゆる数値を測定します。ユーザーへのアンケートで病歴を調査するほか、遺伝子解析や血液、唾液、尿の検査、そして全身MRIまで行い、1人1人の体の構造を分析します。継続的に同じ検査を受けていただくことで、それぞれの変化をしっかり追跡できるんです。この短時間でこれだけの情報量を測定できるメディカルチェックは世界でも類をみないはずです。

 遺伝病歴や家族の既往歴、そして個人の病歴と健康状態を時系列で確認できるので、何らかの変化が起きたときに「これは10年前に起こった、○○と関連している」など、素早く原因の特定ができるようになります。これだけの情報を一カ所に集め、誰が見てもひと目でわかるようなプラットフォームは、画期的でしょう。

誰もが「自分の健康データ」を管理、追跡できるように、世界へと拡大

―日本市場を含め、海外市場への参入も視野に入っているのでしょうか。

 はい、世界各地からリクエストをいただいています。まだあまり多くは語れないのですが、かなり積極的に拡張計画をすすめています。近いうちに、いくつか大きなプロジェクトを発表していく予定です。今でも、当社のサービスを受けるために海外から訪れる方もいるんですよ。

―海外展開するというと、検診のための施設なども海外に建設するということでしょうか。

 そうですね、できるだけ早く実現するために施設をカスタマイズしています。できるだけ価格を下げて、あらゆる人に安くて迅速な健康情報を届けたいと思っています。

―海外展開に必要なパートナー像はどういったものでしょうか。

 医療ネットワークをすでに所有している企業やハイリスク患者へのケアを提供する企業などと連携してデータ収集やディストリビューションに注力することがまず重要だと思います。医療機関もそうですね。我々は医師の敵ではなく、むしろ医療従事者のためのプラットフォームでもあるので、力を合わせていければいいですね。

―最後に、読者にメッセージがあればお願いします。

 私たちは前の世代よりも健康的な未来を生き、治療できるはずの病気で命を落とすこともなくなると信じています。最善の治療や病気の早期発見は全ての人が利用できるものであるべきです。その第一歩として、まずは誰もが自分の体に関する情報に確実にアクセスできるようにしたい。我々はその思いを胸に、これからも拡大していきたいと考えています。



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