創業から約11年。立ち上げたバッテリー会社は今では世界各国と取引するまでに
―はじめに、Primus Power(以下、Primus)創業までの経緯をお聞かせください。
私はエンジニア畑出身です。主に半導体分野に携わってきました。はじめてエネルギー貯蔵市場を知ったとき、80年代の半導体市場と同じように急成長しており、非常に大きな可能性を秘めていると感じました。そして、約11年前の2009年に、エネルギー貯蔵の革新性と独創性、可能性にとても引き付けられて、Primusを共同創業したのです。
―なるほど。では、Primusの具体的なサービス内容を教えてください。どのような顧客と取引があるのでしょう?
一言でいうと、私たちは電力貯蔵会社です。大型のマルチアワーバッテリーを製造し、電力供給会社、再生エネルギー企業、商業施設や産業施設などの顧客の電力コスト削減に貢献しています。
太陽光発電や風力発電は安価ですが、電力の供給は安定しません。私たちの提供するバッテリーは、そうした再生エネルギーもグリッド(様々な発電方式を組み合わせて電力を顧客に届ける仕組み)で統合することができるのです。メインマーケットであるアメリカ以外に、中国や南アフリカ、ヨーロッパ、シンガポールなどにバッテリーを導入しています。
電力保存の総合提案で発電コストを極限まで抑える
―つまり、Primusは新しいタイプのバッテリーを販売する会社なのですか?
イエスでもあり、ノーでもあります。顧客は我々からマルチアワーバッテリーのみを購入するわけではなく、電力保存の包括的なソリューションを買っています。このソリューションには、電力貯蔵のハードウェアだけでなく、インバータや制御システムも含まれます。
―競合他社と比較した場合、御社の主な強みを教えてください。
私たちのマルチアワーバッテリーの特長は、発電コスト(均等化発電原価:LCOE)を業界最安値あたりにまで引き下げられることです。理由としてはまず、とても安価な原料を利用していることが挙げられます。リチウムイオンの約半分の価格で、かつ強力な化学物質を使用しています。
2つ目の理由は、他のフロー電池と比べ私たちのバッテリーは半分の部品でできていることです。タンクは2つではなく1つだけです。他のバッテリーにはあるイオン交換膜もありません。圧倒的に多くの電流を流せる金属電極を使っているので、より強力な電力を生み出せるのです。もちろん、寿命もとても長いです。ノートパソコンやiPhoneのバッテリーのように、時間とともに衰えることもありません。これは重要なポイントで、低価格帯を実現する要素でもあります。
2020年は収益化し、日本参入も視野へ
―御社の今年の目標は何でしょうか。
中期的なゴールとしては、国の発展度合いに関係なく、世界中で戦略的パートナーを見つけ、関係を構築することです。2020年は、徐々に成長していく年になると思います。日本のようなこれまで参入のなかった国に展開する際、速すぎず遅すぎずこのぐらいの成長スピードが必要だと考えています。
また、私たちにとって念願である黒字転換への明確な道筋を作って、2020年を終えたいです。すでにその手応えがありますし、黒字化実現までもう少しのところまで来ています。
―今後の展望、特に日本市場への参入について詳しく教えてください。
日本進出はまだこれからですが、まずは私たちの主幹である電力貯蓄において日本市場参入を手助けしてくれる日本のパートナー会社を見つけたいと思います。私たちのバッテリーが、日本のさらなる経済発展に貢献できると確信しています。私自身、日本の文化はとても好きですし、居心地の良さを感じますね。
―パートナー企業として、どのような会社を考えていますか?
候補として、再生エネルギーの発電所を保有する電力会社が理想的ですね。私たちのマルチアワーバッテリーは、フローバッテリーで電力の持続時間を様々に調節できます。そのため、太陽光発電の仕組みと合致するのです。
例えば、晴れた日の日中などの太陽光のピーク時は、エネルギーをバッテリーに蓄えることができ、太陽が沈んだ後は、グリッドの代わりに、マルチアワーバッテリーから電力供給をすることができます。たいていの場合、太陽光蓄電はグリッドからの電力購入より安いでしょう。
―最後に御社のビジョンは何でしょうか?
私たちの企業理念は、結果にコミットすることです。世界中で再生エネルギー発電率100%を目指しています。私たちは、再生可能エネルギー市場に大きなインパクトを与えられると信じています。