製薬会社によって有効性が確認された独自技術
―まずはPostEra設立の経緯を教えていただけますか。
私は、機械学習を使い、複雑な分子を合成する方法を予測する研究と、優れた薬剤になり得る分子なのかを予測する研究に取り組んできました。この技術は、創薬における実際のワークフロー改善に有効だと、ファイザーなどからも認められています。私は自分の研究を実社会で役立てたいと常々考えていましたし、幸運なことに、大学院からの友人であるAaron (Morris氏)と、私の生徒だったMatthew (Robinson氏)が、アイデアを実現するために集ってくれ、3人でPostEraを設立しました。Biotechや大手製薬会社を対象に、創薬スピードを加速させるテクノロジープラットフォームを提供しています。
ありがたいことに、当社は、Y CombinatorのWinter 2020 Batchに参加しています。実は、学術雑誌に掲載された私の論文を読んだ、Y CombinatorのBiotech担当パートナーから「Batchに申込まないか」、と誘いを受け申込みに至りました。最初に連絡を受けた時は感動しましたし、3人で大喜びしました。
創薬プロセスを加速させる「レシピ」を創造
―具体的にどういったサービスを提供しているのでしょうか。
創薬における機械学習の活用は、非常に注目されている分野ですし、薬剤設計に機械学習を活用するのは、当社が初めてではありません。そこで、私たちは一歩下がった視点でワークフローにおける主な問題点を見つけることにしました。
前臨床試験における、薬剤の設計は三段階に分かれています。最初に、紙の上に分子を描き、分子構造を考え出します。次に、研究室でその分子を合成します。最後に、作った分子が機能するかを確認する試験を行います。
これまでは、分子の設計や分子を描画するため、または新しい構造の創造に機械学習が使われていました。しかし、前臨床試験の三段階において、最もコストがかかり時間を要していたのは、研究室で分子を合成する際に行われる合成方法の“試行錯誤”でした。そこで私たちは、「何を作るか」と「どうやって作るか」を統合し、最適と考えられる複雑な分子を設計するためのアルゴリズムを開発し、優れた薬剤になり得る分子を合成する「レシピ」を短時間で創るプラットフォームを築きました。どれだけ短時間かと言うと、1時間かかっていたところが数分で済みます。
当社の「レシピ」は、化学反応を非常に高精度で予測し、薬剤になり得る分子を対象とした合成方法を予測するため、従来は非臨床試験に到達するまで、1,000以上の分子を試さなければならなかったところを、250から500で済ませます。また、データセットをトレーニングできるため、小規模なデータセットから「レシピ」を創ることが可能です。
日本のBiotechや製薬会社と提携し日本市場に参入したい
―日本市場も視野に入っていますか。
当社のテクノロジープラットフォームは、低分子薬剤を使い創薬する、全てのバイオテクノロジー分野で、ワークフローを加速します。
地理的な理由から、現在は米国やヨーロッパのクライアントのみで、日本企業とは一切接触がありませんが、日本のBiotechや製薬会社とつながりを持ち、提携して一緒に仕事をしたいです。そして、アジア市場全般とつながりたいと考えています。