Image: Michael Traitov / Shutterstock
2013年設立のPatternは、ブランドがグローバルのオンラインマーケットプレイスで売上を上げるためのプラットフォームを提供している。そのポイントはデータサイエンスの活用だ。データを活用することで、さまざまなブランドがグローバルで売上を伸ばしているという。2021年10月には2億2500万ドルの資金調達を実施し、時価総額は2000億円を超えた。アジア展開も見据えている同社CEOのDavid Wright氏に詳細を聞いた。

独自の成功方程式で、ブランドのグローバルECを成長させる

――Patternのサービスについて教えてください

 PatternはグローバルECのアクセラレーターです。 私は17年にも渡りデータサイエンス分野に携わっていたので、Patternでは、データとテクノロジーを使いアクセラレーションを実現しています。

――起業のきっかけは何でしたか。

 当初は、小規模なプロジェクトとしてスタートしたのですが、このように大きくなるとは全く思っていませんでした。

David Wright
Pattern
CEO
ブリガムヤング大学で会計・IT分野で学士号を取得後、Autolivでデータベース関連の業務に従事。04年以降はモルモン教会内のデータシステム管理を11年間に渡り担当する。2012年にPatternを立ち上げる。

 アイデア自体は、友人の妻がハンドメイドの子供用の髪飾りを販売していて、そのビジネスでデータを活用していることを聞いて、面白いなと思ったのがきっかけです。そこで彼の話を聞いていて、「自分だったらこうするのに」と思う点がいくつかあったのです。

 ECは、検索ドリブンでキーワードが非常に重要となります。そこではデータが欠かせません。ただ、私は別段クリエイティブでもないし、ブランドを持っているわけでもありません。

 そこで、いくつかのブランドに提携の話を持ちかけてみました。実際に一緒に働いてみて、どのブランドもどんどん成長していきました。最初は年商20億円に満たなかったブランドも、現在は年商140億円規模になったり、年商12億円弱から30億円まで伸びたりと、ブランドのアクセラレーションに成功したのです。そこで、私たちは「トラフィック×コンバージョン×価格=売上」という成功方程式を持って、国際展開を踏み出したのです。

Image: Pattern HP

 ブランドとして、売上を上げたいのなら、まずどこからトラフィックを得ているのか把握しなくてはいけません。注目が集まったとしても、それをコンバージョンしてもらわなくてはいけません。そして、一定の価格で購入してもらわなくてはいけません。私たちはこのようなやり方で国際展開を行い、会社としてここまで成長させてきたのです。

――どうしてグローバルなEC支援が必要になるのでしょうか。

 様々なブランドと働いていて気づいたのは、会社の規模に関わらずECに携わるチームは、たいてい小さいということです。例えば、パナソニックやネスレといった大規模な会社でも、蓋を開けてみるとECチームのメンバー数はわずか数人程度です。一体どうしてそうなのかと聞いてみると、例えば15ある部門が複数のブランドを管理していたりします。中央集権化されていないので、3〜10人程度で構成されるEC担当のチームが全てのブランドの意思決定を任されるのです。

 売上を上げるため、サイトのトラフィックを増やす方法を考えるのは簡単ではありません。例えば、ネットで話題になるようなビデオを撮ってSNSにあげてみたり、世界を変えるというミッションを発信してみたり、その方法は多種多様です。さらに、データサイエンスまで活用しようとなると、数名で構成されるチームでは対応しきれません。

 したがって、ブランドは特定の部分を外部にアウトソースすることになります。私たちも、ブランドのEC全てを対応することはありません。ブランドは自社のECサイトを管理することに長けていたとしても、日本の楽天や中国のT-mallを管理するリソースはありません。だからこそ、われわれのようなグローバルなEC支援企業が必要なのです。

日本進出は、2022年の目標の一つ

――2012年の起業から現在までを振り返ってみてどうでしょうか。

 素晴らしい会社になるかどうかは、その会社で働く人たちで決まると思います。良い会社には良い人間がいます。平凡な会社には平凡な人間がいます。どれだけCEOが優秀であろうと、その会社にどれだけ良い戦略があろうと関係ないのです。逆に人さえ良ければ、少し失敗してもうまく立ち直れるのです。

 私たちにとってのこの数年間でのチャレンジは、従業員が楽しく働けるような環境づくりだったと思います。刺激的で、成長でき、意思決定ができ、経済的にも魅力的な職場をどう作っていくか。これが重要であり、今後の私たちの成功もこれができるか次第だと思います。

Image: Pattern

――調達した資金の使い道と今後の目標を教えてください。

 私たちは、Objectives and Key Resultsの頭文字をとったOKRというコンセプトを利用しています。もともとIntelが導入していて、その後テック業界で広がりGoogleも採用するコンセプトです。来年に向けて、現在7つの目標がありますが、その中で重要なのは「2022年に日本市場に進出する」ということです。また、一部の技術は特許の取得待ちで、技術開発を続けることも目標です。調達した資金も国際展開とテクノロジーへの投資に充てる予定です。

――日本進出についても検討しているのですね。

 ええ。日本ではオフィスはありませんが、取引は行っています。東南アジアにチームを置いていて、香港、シンガポール、中国にオフィスを置いています。日本もビジネスを行うのに最適な国で、進出したい国の1つです。

 私たちが進出を決める際に注目しているのは、商品の総販売量です。日本は人口に対して総販売量が多く、私は日本市場に期待し注目しています。



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