目次
・オムネキーがAI広告で解決したい課題とは?
・競合他社に負けない3つの差別化要因
・オムネキー自身もAI広告活用で成長
・ハーバード大卒、日本画家の父も影響
・全デジタル体験の自動化を目指す
オムネキーがAI広告で解決したい課題とは?
デジタル広告の世界は、もはや一瞬の勝負だ。千住氏は「デジタル広告のうち、2秒以上閲覧されるのはわずか4%。モバイル端末では平均1.7秒しか見られていません」と、コンテンツ消費が加速している現状を数字で示す。ユーザーの注意は分散し、広告がきちんと「見てもらえる」時間は極端に短くなっているのだ。
コンテンツ量の課題も深刻だ。コンテンツをパーソナライズする重要性は高まっているが、この作業に頭を悩ませるマーケターの割合は59%。また、今後5年間でコンテンツ需要は20倍に膨れ上がると予測される。一方で、同じ広告が表示された後に起きる「広告疲れ」がコンバージョンを減少させる問題も顕在化しているため、ブランド体験の重要性をないがしろにすることはできない。
こうした状況を踏まえ、千住氏は「限られた時間でも魅力的なクリエイティブを大量に制作できなければならない。ただ、無関係な広告はブランド体験を損ないます。そこで、AIがコンテンツを自動生成し、改善まで行うプラットフォームを開発しました」と語る。
オムネキーは、広告制作に量も質も求められる時代の主要な課題を、「AI広告」によって解決しようと試みている。
競合他社に負けない3つの差別化要因
オムネキーのプラットフォームは、①ブランド・広告データ蓄積 → ②分析・提案 → ③コンセプト・クリエイティブ生成 → ④承認・配信という主要な4段階で構成される。特筆すべきはAIによるフィードバックループ。配信結果を自動分析し、次の制作に反映する学習システムにより、ワークフロー全体が継続的に最適化されていく仕組みだ。
デジタル広告領域ではAI活用を掲げる企業が増えているが、オムネキーの差別化要因は主に3つあるという。
1つ目は、生成AIモデルの技術的優位性だ。「競合企業は存在しますが、生成AI広告分野では2番手か3番手程度の市場シェアを持っていると考えています。7年間モデル開発を続けており、生成AI広告のクオリティは、ぜひ競合他社と比較してご利用いただければと思います」
コンテンツの品質には強い自信を示しており、「オムネキーが生成する広告コンテンツのクオリティは、競合に比べて圧倒的に優れていると自負しています。これは、最新のモデル開発に集中しているからです。美意識とデザインセンスは私自身のバックグラウンドの一つでもあり、この分野に非常に注力しています。技術的なクオリティが競合より優れているため、より高速で低コスト、かつ大量生成が可能です」と千住氏は語る。
2つ目は、ブランドの安全性。「多くの生成系ツールはブランドガイドラインの遵守が弱い。オムネキーは色、フォント、トーンまで細かく管理し、ブランド価値を損なわないクリエイティブを担保します」。特に日本語フォントの扱いなど、細部の品質までこだわる点が特徴だ。
そして3つ目は、成果に直結するデータ活用能力だ。「最新の広告データを統合し、コンバージョン改善につながるクリエイティブのみを生成・推奨します。単に『画像ができる』ツールではなく、『成果が出る』ツールであることが最も重要です」
この成果主義を支えるのが、広告プラットフォームとの深い連携だ。「アドテク領域の連携を強化し、取得データを生成モデルに循環させる予測モデルを構築しています」と千住氏は説明する。
image : Omneky
オムネキー自身もAI広告活用で成長
技術的優位性は、すでに明確な成果として現れている。「あるビーガン化粧品ブランドでは前年比売上200%、収益35%増を達成しました。フィンテック企業では制作から運用までを自動化し、広告コストを10分の1、リード獲得単価を90%削減、業務効率を8倍に高めています」
同社自身の成長も凄まじく、「毎月2〜3倍の成長を続けています」と千住氏は語る。背景には、オムネキーが自社でもAI広告を積極的に活用し、その効果を証明している事実がある。「世界中に広告を配信し、広告投資として黒字を実現しているのは私たち自身です」
2025年5月にはセルフサービス型のツールをリリース。これが世界的な利用拡大を一気に加速させた。インタビュー中、千住氏はリアルタイムのダッシュボードを画面で共有し、ヨーロッパ、米国、日本など世界各地からユーザーが次々とログインしている様子を示した。
セルフサービス化の効果は鮮明だ。「リリース以降、ユーザー数は2〜3倍のペースで急増しています」と千住氏は強調する。グローバルでアクティブユーザーが増え続ける状況は、同社の勢いを象徴している。
image : Omneky
ハーバード大卒、日本画家の父も影響
千住氏がオムネキーを創業した背景には、生成AIへの早期の着目があった。「東京で生まれ、ハーバード大学でコンピューターサイエンスを学びました。最初期の生成AIモデルに強い関心を抱いていたのですが、日本画家である父の影響もあり、AIが芸術を生成することにものすごく魅力を感じていたのです」と当時を振り返る。
生成AIへの興味を事業へと結びつけたのは、マーケティングでの実務経験だ。「教育系スタートアップを立ち上げてYup.comへ売却し、同社でマーケティング責任者を務めました。そこでの経験と、芸術を生成するモデルへの関心が重なり、2018年にオムネキーを創業するに至ったのです」
創業時のビジョンは明確だった。「AIは人間より優れた生成能力を発揮し、個人向けコンテンツも高精度で生み出すことができます。膨大なマーケティングデータを活用し、効果的なコンテンツを自動生成してパーソナライズする――その未来を前提に会社を立ち上げました」と語る。
さらに、千住氏は創業当初から長期的な構想を見据えていた。「最終的には、すべてのデジタル体験をパーソナライズできる世界を実現したい。企業のデータを活用し、あらゆるタッチポイントを最適化することでコンバージョンを高めることを目指しています」
全デジタル体験の自動化を目指す
今後のロードマップについて、千住氏はまず動画領域への拡張を挙げる。「動画広告の生成と運用を展開していきます。しかし、より大きなビジョンは『すべての顧客デジタル体験の自動化』です」
この長期ビジョンを、同社は「ジェネレーティブエクスペリエンスマネジメント」と呼んでいる。「私たちはこの領域のパートナーになりたいと考えています」と千住氏は語る。
5〜10年後についても構想は明確だ。「大企業から中小企業まで、あらゆる企業が生成AIを使いこなすようになります。デジタル体験そのものが自動生成され、個々の需要に応じてパーソナライズされる未来が来る。そのインフラになることが、オムネキーの目標です。生成し、運用し、アクティベートするところまで担います」
その対象は広告に留まらない。「画像や動画に加え、テキストコンテンツやウェブ体験もブランドを守りながら生成し、分析し、継続的に最適化する――その全体を担うプラットフォームを目指しています」
日本市場については、戦略的パートナーシップを軸に展開を進める。「マーケティング部門やデータ活用を推進したい企業と組んでいきたい。日本ではSoftBankとリセーラー契約を結んでおり、Digital Garageも投資家かつパートナーです。特に大企業の場合は、まずこのルートからの相談をお勧めします」。
一方で、セルフサービスも歓迎している。「オムネキーはサイトから直接利用することも可能です。セルフサービスは7日間無料で利用できます。広告の生成だけでなく、運用や分析まで自動化され、コンバージョンが向上していくプロセスをぜひ体験してください」
image : Omneky HP