Image: Noodle AI
2016年に設立されたNoodle AIは、ビッグデータやAIを駆使したマネジメントシステムでハイテクメーカーや消費財メーカーの在庫管理や製造プロセス構築を支援するスタートアップ。今回はPresident & COOのRaj Joshi氏にインタビューした。

Raj Joshi
Noodle AI
President & COO
インドのマハラジャ・サヤジラオ大学で化学工学を学んだ後、MBAを取得。アメリカでDeloitte ConsultingやInfosysをはじめ、マネジメントコンサルティングやシステム統合にかかわる会社を立ち上げたのち、Micro Strategy社勤務を経て2016年、Nooldle AIを共同設立。COOに就任。

「これまでに何が起きたのか」だけではなく、AIで「今後何が起こるのか」を予測

―まずは、御社のビジネスモデルについて教えてください。

 今の時代、ハイテクメーカーや消費財メーカーは膨大なデータを扱っています。多くの企業がERPなどで対処していますが、管理や将来予測業務に関するキャパシティが飽和状態になっているのが実状です。そこで我々はAI主導のアプリケーションでサプライチェーンおよび供給計画の策定をサポートし、企業の負担を軽減します。

 製造業はもちろん、物流や輸送関連の企業も複雑なサプライチェーンを抱えています。当社のAIアプリケーションを採用すれば意思決定が簡略化され、将来予測にも役立ちます。たとえば、企業にとって在庫管理は重要な問題です。仮に在庫過多に陥った場合、そこには根本的な問題が内在している可能性があり、それを解消しなければ現状打破はむずかしい。そこで、さまざまなデータから将来予測を行い、適切なソリューションを導き出してくれるのがAIなのです。

 これまで、企業は経験則に基づく過去のデータをもとに、意思決定を行ってきました。「これまでに何が起きたのか」ということに頼ってきたのです。しかし、AIアプリケーションを使えば「今後何が起こるのか」をもとに、予測を立てることができるようになります。これは大きなアドバンテージであり、コスト削減と収益増を実現することができるのです。

―具体的な使用例を教えていただけますか?

 たとえば、鉄鋼業。中東にある大手スチール会社も当社のクライアントですが、彼らには生産スケジュール予測のためのアプリケーションを提供しています。また、製鋼所には高価な設備や機材が多く、どれか1つでも故障すれば、売上に大きな影響を与えますし、コスト面でも打撃となります。ですから、トラブルを未然に防ぐため、設備のメンテナンスについてもアプリで適切な時期を予測、決定しています。

 他にも、グローバルな消費財メーカーで、深刻な在庫の問題を抱えている企業がありました。そこで我々は予測アプリケーションによって最小管理単位(SKU)の充填速度を予測し、それをもとにした生産管理や在庫出荷管理を行い、財務的な効果をもたらしました。このように、我々は製造業やプロセス式製造業、消費財メーカー、小売業、流通、物流など、サプライチェーンを持つ企業をターゲットに、事業展開しています。

Image: Noodle AI

AIは使いこなせなければ「宝の持ち腐れ」

―他社にはない、御社ならではの強みはどんなところだと考えていますか?

 まず、我々はこれまでに数多くの企業と深くかかわった経験があります。中にはフォーチュン1000の企業もありましたが、これらの経験から我々のチームは企業が抱える問題をしっかりと把握、適切に対処することができるのです。シリコンバレーのスタートアップで、これほどの経験がある企業は、そうありません。

 さらに、我々のアプリケーションは事業価値を提供することに重点を置いたものです。確かにAIは素晴らしい力を持っていますが、それを使いこなせなければ、宝の持ち腐れです。ですので、当社ではクライアントがAIへの投資から事業価値をしっかりと得られるよう、クライアントをリードしています。

 そして、もちろん、高度なテクノロジーも我々の強みです。当社の分析能力は誇るべきものであり、データ分析に重きを置いた正確かつ綿密なソリューションは、他社と一線を画しています。

Image: Noodle AI

AIによる将来予測は、効率的な事業運営に不可欠

―COOの経歴と、創業までの経緯を教えてください。

 Nooldle AIは、私にとって3つ目のスタートアップになります。最初はDeloitte Consultingという会社です。そこでFujitsuやNECといった日本企業にも従事しました。これがうまくいき、2つ目のスタートアップとなるInfosys Consultingにつながりました。これは、Nooldle AIの共同創始者であるStephen Prattと一緒に立ち上げたのです。

 最初の2社はいずれも情報サービスとコンサルティングサービスでした。Infosys Consultingを離れた私はビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェア関連会社Micro Strategyに、StephenはIBM Watsonに入りました。そこで、機械学習に基づいた予測分析がこれから拡大していくと感じ、一世一代の機会を生かすべく、シリコンバレーにAIのスタートアップを立ち上げたのが2年半前のことです。

―創業からわずか2年半とは思えないほどの成長だと思いますが、その要因は何だったのでしょう。

 そうですね、やはり1つにはノウハウでしょう。我々は経験豊富なリーダーシップを持つチームであり、クライアントを成功へと導く方法を熟知していたということです。また、AIそのものが、いま拡大傾向にあり、企業のトップはみんなそのことを知っていますから、何とか取り入れようとします。とはいえ、自前でやるのではなかなか難しい。そこで我々のような企業への需要が高まっているのではないかと思います。そして、AIの事業価値は今後ますます伸びていくでしょう。データが増大し、低コストでのコンピュータによる処理機能は増大し、機械学習アルゴリズムはどんどん洗練されていきますから、企業がAIから得るものは大きくなるばかりです。

―では、将来的な展望をどのように見ていますか?

 世界、そして企業が成長する中で、事業を効率的に運営していく必要性はどんどん高まるでしょう。これを実現するには、我々が機械学習アルゴリズムやAIを活用して将来予測に基づいた意思決定をするしかないと考えています。我々がそれを叶えることで、顧客や投資家、そして人々に大きな経済価値を作り出すことができると思っています。これが、我々のビジョンなのです。

―御社のビジョンには、日本企業との提携も視野に入っているのでしょうか?

 もちろんです。今もアメリカ国内にある日本企業とは取引経験があります。ゆくゆくは日本での仕事もと思いますが、まずはアメリカ国内市場にある日本企業からと考えています。南カリフォルニアには、Fujitsuなど、日本のハイテク企業がいくつもありますから。あとは、日本の鉄鋼業関連企業にも興味があります。日本を含め、適切な時期に、適切な企業とであれば、アメリカ国外での仕事も探索していきたいと思います。



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