データ保護・広告非表示のサブスク型検索エンジン
――Neevaは広告なしのサブスクリプションベースの検索エンジンを提供しています。なぜGoogle広告のトップだったあなたが、このようなサービスを立ち上げたのでしょう。
まず最初に検索そのものについてお話ししましょう。検索というのは、例えば排水管の詰まりの直し方から、近くにあるカフェの場所まで、毎日何億人もの人々が行う非常にパーソナルな行為です。検索する内容の中には、「泣いている赤ちゃんをどうやって泣き止ませるか」とか、「上司にどうやって昇給をお願いするか」といった個人的な内容もありますよね。
私は長い間、Googleで検索機能や検索広告業務に携わりました。商業的な検索クエリに限ると、とにかく広告を見せなくてはというプレッシャーを感じることが多くなりました。そしてオーガニックのクエリに限るとGoogleが常に独占していました。
Google検索の広告を使ったビジネスモデルでは、常に利害の対立が発生します。ユーザー視点では広告を表示しない、お客様のデータを常に保護することが求められますが、広告のビジネスモデルでは、それが難しいのです。
そこで、私はユーザーに寄り添った、データ保護や広告の非表示に焦点を置いた検索のビジネスモデルを開発したいと思いました。ユーザーにとって1番いい形のビジネスモデルは、サブスクリプション型の検索エンジンだろうと考えたのです。Neevaは、従来の広告型とは違う史上初のサブスク型の検索エンジンなのです。
Photo: Neeva
プロバイダーとAPI連携し、ユーザーに合った検索結果を表示
――現段階でのサービスの詳細を教えてもらえますか?
過去2年間は、特にユーザーのショッピングエクスピリエンスを向上させるためにもサブスク型のビジネスモデルを有効活用しました。
私たちは、商品を比較したり、検索結果をパーソナライズすることにも対応しています。またNeevaではアフィリエイトリンクも表示しません。ユーザー特化型の、ユーザーのための検索エンジンであるようにしたいのです。このようなシンプルなメッセージは非常に魅力的だと思います。
Photo: Neeva
――Neevaはどのようにしてデータを収集し、ユーザーに検索結果を表示するのでしょうか。
今日、検索エンジンはさまざまな機能を持っています。天気を調べたり、株価を調べたり、映画やゲームを調べたり、地元の商店を調べたりすることができます。Neevaでは、APIを使って、一連のプロバイダーと連携して、1つの統一プラットフォームを開発しました。これは、例えば、他の検索エンジンがGoogleのライセンスを取得して、他の会社からデータを入手するのと同じことです。
初期バージョンを開発したあとは、より細かなプロダクトレビューやテック関係の検索結果を表示させるために自身でインフラ設計を行いました。検索というものは、内部・外部両方の要素に依拠する複雑なソフトウェアです。まずは、完全な検索エンジンを作り、よりテーマに特化した検索結果については、ここからさらに自身らで広げていくというアプローチをとりました。
競合の検索エンジンとの決定的な違い
――Googleやヤフーといった大手検索エンジンや、DuckDuckGo等のサービス重視の検索エンジンとはどのように差別化を図っていますか?
検索という行為の頻繁さゆえ、選択肢は多ければ多いほど良いと思います。例えば、TVのような広告型のプラットフォームとサブスク型の配信プラットフォームは比較できません。競争は激しいですが、私たちはこれらの検索エンジンの補完的な立場にいるように思います。ただ、既に広告型の検索エンジンは供給過多で、さらにそのようなビジネスモデルの社会への長期的な影響も考えなくてはいけません。
例えば、DuckDuckGoのような検索エンジンは、匿名性を保証する代わりに、広告を表示してマネタイズしています。ユーザーが広告をクリックするごとに、検索エンジンそのものは個人情報を追跡していなくても、広告を提供する側には個人情報は渡っているのです。つまり検索エンジンそのものが、ユーザーと広告の仲介業者となってしまっているのです。
Photo: Ricky Of The World / Shutterstock
私たちは、そのような検索エンジンとは違い、ユーザーのほしい情報を広告なしに提供するように開発しています。完全に匿名ではなく、ユーザーを知る検索エンジンとなりたいのです。
利益をただあげるのではなく、利益を正しく共有したい
――直近のラウンドで調達した4000万ドルの資金の使い道をぜひ教えてください。
1つ目は、インフラ設計に携わる人材への投資です。今年の第二四半期で米国ローンチを予定しているので、それに伴いチーム・インフラ・データ関連への投資が必要です。
2つ目は、国際展開です。当初は今後数ヶ月の間で欧州をはじめ、カナダ、オーストラリアに展開予定で、日本のような国が後に続きます。米国市場での成果によりますが、日本やドイツといった市場は、シンプルさや機能性を重視しがちに思えるので、反響は良いのではないかと見ています。日本でも浸透してくれたら本当に嬉しく思います。そして最後に、幅広いトライアル期間を設けることです。なるべくたくさんの人に試用してもらい、製品の利点を知って欲しいと思っています。
最終的には、次の数ヶ月でサブスクリプションを提供し、収益化し始めることが目標です。 検索という複雑な性質ゆえ、私たちは常に最高品質のものを国際展開したいと願っています。
――最後に日本の読者へメッセージをお願いします。
広告型モデルの製品に関して覚えておかないといけないことは、エンドユーザーである私たちが中心ではないという点です。製品が無料だと、エンドユーザーつまり私やあなたは、スケールの恩恵を受けられません。Googleは10年前、検索エンジンに10億ドルを費やし、400億ドルの利益を上げました。2020年にはそれ以上の利益を上げていますが、その分だけ、私やあなたにとって検索体験は良くなっているでしょうか?
Photo: AnaLysiSStudiO / Shutterstock
Googleは世界中に検索機能をもたらした企業であり、私はGoogleを非難するつもりではありません。ただ、全人類への影響を考えると、広告ベースのモデルでは、創造された富を平等に共有できないのです。私にとっては、利益をただあげることよりも、その利益を正しく共有する方法を見つけることの方が重要です。私はNeevaを生み出された富を公平に分配される場にしたいと考えています。