より難しく、より大きな問題を解決したい
―まずは経歴と、Mojo Vision設立の経緯を教えていただけますか。
私は、大学でElectrical Engineeringの博士号を取得後、太陽エネルギー企業「Solar Junction」を共同で設立し、2014年に会社を売却しました。
次は何をするべきか、企業に参画するか、または新しく起業するのか。自分が次に取り組む、難しいが解決すべき大問題を探すために、世界最大規模のVC「NEA(New Enterprise Associates)」にEIR(Entrepreneur in Residence)として参画しました。そして、NEAでMojo Visionの共同創設者と出会いMojo Vision設立に至りました。
人と人の直接的な交流を邪魔しないInvisible Computing
―具体的にどういった製品を開発しているのでしょうか。
人間には社会性が必要です。しかし、今のテクノロジーは、人々の直接的な交流を邪魔しています。例えば、スマートフォンを使っている時は手が不自由になり、画面に目線が捕らわれます。デジタルの世界に夢中になり、他の人との交流はテクノロジーを介して行われています。
私たちは、人々の目線を現実世界に戻し、テクノロジーを介した交流ではなく、直接的な交流を可能にする隠れたコンピューティング「Invisible Computing」の開発と実用化を目指しています。その一つとして、世界最小ディスプレイを搭載したコンタクトレンズ「Mojo Lens」を開発しました。
具体的に言うと、光を網膜に集める小さな光学系を備えたディスプレイをコンタクトレンズの内側に装着しています。加えて、ワイヤレスリンクと、目の動きを感知するモーションセンサーも搭載し、ディスプレイへのデータ送信を可能にし、ディスプレイからセンサーデータを取得しています。他には、電力およびデータシステムも搭載しています。目に直接着ける“コンタクトレンズ”なので、通常のコンタクトレンズのように角膜への酸素供給も問題ありません。
Image: Mojo Vision
―Mojo Lensはいつ頃から販売する予定ですか。
現在は、開発の最終段階で、製品化する一つ前のプロトタイプを開発し改善を行っています。製品化するためには、FDA(米国食品医薬局)の承認を得る必要がありますので、販売できるようになるまで、まだしばらく時間がかかります。
最終的には、世界的な消費者ブランドの構築を目指していますが、スケールするためには、国ごとに承認を得る必要がありますし、ロジスティックスなど、様々な課題がありますので、最初は法人への販売から始め、それを足がかりにしていくことになると思います。
―長期的な目標を教えてください。
人と人の直接的な交流を邪魔しない、Invisible Computingの構築が長期的な目標です。Invisible Computingは、コンタクトレンズだけでなく、ハードウェアや家庭用品への搭載や、ソフトウェアブランドの構築も考えられます。
パワー、データ、センサーとディスプレイが搭載されたコンタクトレンズに関しても、例えば視覚障害がある方を助ける機能や、投薬機能、健康パラメーターを長期的に監視する機能など、健康面で人々の生活に影響を与える様々な方法での活用が考えられます。
アーリーアダプター&パートナーとなる日本企業を見つけたい
―日本での展開も視野に入っていますか。
個人的に日本が大好きで、何度も行ったことがあります。日本の皆様にも、Mojo Lensに興味をもっていただけると思っていますし、是非、日本のパートナーを見つけたいです。日本市場での展開を前提に、日本での承認支援、販売チャネルやサプライチェーンなど、様々な面で支援が必要です。そして、当社の技術を使って何を作るか、アイデアがあれば是非伺いたいです。
―最後に、日本の読者にメッセージをお願いいたします。
スマートコンタクトレンズが現実になる、そんな世界に私たちは生きています。当社は、「Mojo Lens」のアーリーアダプター&パートナーになり、新しく興味深く可能性に満ちた時代を共に“旅”してくださる、最初の日本企業を求めています。