Dan Preston
Metromile
CEO
スタンフォード大学にてコンピュータサイエンスを学び修士号を取得。2011年にリテール企業をサポートするAisleBuyerを創立したのち、2012年に売却。2013年にMetromileのCTOに就任したのち、2014年より同社のCEOに就任。

走行距離に応じて保険料が決まる「Pay-per-Mile」

 Metromileは「Pay-per-Mile car insurance」という走行距離に応じて保険料が決まる自動車保険サービスを提供している。アメリカの自動車保険業界ではここ50、60年の間、顧客が6ヶ月ごとに定額の保険料を支払うのが一般的な仕組みだった。しかしこの仕組みでは、65%もの平均よりも走行距離が短い自動車運転手が、残りの35%の運転手のために過大な保険料を支払うことになっており、公平とは言えない料金負担の構造になっていた。

 そこでMetromileでは車の診断ポートに小さいデバイスをつけることで車の走行距離を計り、月末に『走行距離×1マイルごとのレート』の保険料を徴収する。これによって走行距離が平均以下の人は保険料を引き下げることができる。実際にMetromileの顧客は平均で35%ほど保険料を節約しているという。

 CEOのPreston氏は「このビジネスを実現する上で一番の課題は、どうすれば正確に運転者の走行距離を測れるかという点でした。そこで、私たちは走行距離を正確に測ることができるデバイスを低コストで開発し、運転者に提供することにしたのです」と語る。

Image: Metromile

事故後の支払い請求もよりスムーズに

 MetromileはPay-per-Mileの仕組みだけでなく、彼らの集めるデータも強みだ。集積したデータによって顧客の駐車違反を回避したり、車の診断ポートに設置されたデバイスにより自動車の不調を顧客に知らせることが可能だ。

 またデータを活用し、事故が起きた際の支払い請求をスムーズにしている。アメリカの従来の支払い請求は事故の状況にもよるが、1〜2週間またはそれ以上の期間を要する。またマニュアルによる作業が多いため、多くの人が煩雑な支払い請求作業に悩まされていたという。

 「従来の自動車保険では、事故当時、何が起きたのか把握することは不可能なため、事故の検証に時間がかかっていました。事故の支払い請求は保険会社へ何度も電話をし、何が起きたのかを説明しなければならず、時には何度も同じ質問に答えなければいけない状況でした。一方、私たちはデバイスを用い、データを集積することによって、事故当時の状況をすぐさま把握できるようにしました。事故の再現や事故現場で何が起きていたのかを理解することはとても複雑ですが、マシンラーニングなどのテクノロジーを用いることにより私たちはそれらを可能にしたのです」とPreston氏。

 Metromileの顧客の70%が支払い請求のプロセスを事故が起きたその日に終えることができているという。また事故に遭った際の車の修理依頼についても修理工場へ直接電話をする必要はない。アプリを通して修理工場を選択し、アプリ上から予約すればいいだけだ。

Image: Metromile

三井物産も出資

 Metromileはすでにカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州、イリノイ州、ペンシルベニア州、ニュージャージー州、バージニア州の7州に展開している。今後はより拡大させ、アメリカ全州をカバーする予定だ。

 海外展開についてはアメリカ以外の保険市場について調査している途中だという。Preston氏は「日本企業などの海外企業から求めているのはジョイントベンチャーやテクノロジーパートナーシップです。特に日本市場は私たちにとってとても興味深いです。私たちは三井物産からも出資を受けていて、素晴らしいパートナーを得ています」と語る。当面の目標はアメリカ全州への展開だというPreston氏だが、近い将来の海外展開についても見据えている。

Image: Metromile



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