Augmented Reality(AR:拡張現実)のデバイスを低価格で提供する「Meta」。消費者向けのゲームや娯楽の用途ではなく、建設・土木、医療、教育、小売などのビジネス分野で活用されているのが特徴だ。CEOのMeron Gribetz氏に、Metaの具体的な利用事例、今後のビジョンなどについて聞いた。

Meron Gribetz
Meta
CEO & Founder
イスラエルのエルサレム出身。コロンビア大学にてコンピューターサイエンスとニューロサイエンスを学んだ。大学卒業の4ヶ月前にMetaを創業し、Founder and CEOに就任。

現実の世界にホログラムを投影

―まずMetaの概要を教えてください。またARとVRの違いを簡単に説明してもらえますか。

 簡単に答えられる2つ目の質問から始めましょう。ARとは現実の世界でホログラムを見ることができるもので、自分の手でホログラムを操作することができます。ホログラムを見るためのメガネは、ガラスが透明でなくてはならず、手の動きと現実の風景を追跡しなくてはいけません。ARは現実世界の一部ですが、ホログラムが中心のため、特に3Dにおけるプロダクティビティに優れているのです。

 一方、VRとはヘッドセットをつけて現実世界から目を塞ぎ、スクリーンで視界をブロックします。スクリーンは私たちを仮想の世界に100%没入させ、ゲームやエンターテインメントを楽しむことができます。ARは3Dの製品、VRはエンターテイメント、これが両者の違いを示すキーワードとなります。

 ではMetaについての質問に戻ります。Metaとは、3Dのプロダクティビティにフォーカスしている会社です。世界中で連携している数千もの企業にMetaの無料のアプリを提供し、さまざまなビジネスにARを活用してもらっています。現在の顧客の主要領域は、建設・土木、医療、教育、小売の4つです。

車の設計や医者の研修にARを活用

―Metaの具体的な利用事例を聞かせてください

 3つの利用事例をお話ししましょう。まずMetaを使えば、海辺で100台のコンピューターの画面を開き、まるで映画館のような大画面でテレビを見ることができます。隣の人と同じ画面を共有して見ることもできますね。

 次の利用事例は、3Dの共同視覚化です。たとえば大手自動車メーカーはMetaのクライアントです。彼らは車の設計の過程で、模型を使うことなく、Metaを通じて車のイメージを見ることができます。そして、多くの人々が車のCADを見ながら、共同で設計することができるのです。

 3つ目の利用事例は、リモートアシスタントです。たとえば、アメリカの西海岸の外科医は、Metaのグラスを通じて、東海岸の外科医の視界を共有することができます。すると何ができるかというと、西海岸の外科医は音声を通じて、手術の方法について指導することができるのです。

―現在、どのような企業がMetaの競合となっていますか。

 主要な競合相手はMicrosoftのHololens、もうひとつはMagic Leapです。Microsoftは、Windowsプラットフォームの利用を推進するため、非常に多くの異なるタイプの顧客をターゲットにしています。私たちの場合はOSを推進させる目的はありませんし、ターゲットも絞り込まれています。またMagic Leapは、ゲームやエンターテインメントといった消費者向けのサービスに重きを置いており、ターゲットが異なります。とはいえ、2社とも多かれ少なかれ競合しており、その中で私たちは優れていると自負しています。

2020年までに市場規模1200億ドルと予測

―Metaのデバイスの価格はいくらですか。

 価格は1000ドル以下です。AR分野では最も安く、開発者は私たちの商品を購入できると言えます。一方、競合他社は3000ドル以上で製品を販売しており、開発者が気軽に購入できるわけではありません。当社の収益源は主にハードウェアの販売収入ですが、将来的にはソフトウェアの販売も増えていく可能性があります。たとえば、トヨタと提携してアプリを構築する場合、そのアプリケーションでの収益をシェアすることができます。

―今後、AR市場はどれくらいの規模になっていくのでしょうか。

 Digi-Capitalのアナリストは、2020年までに市場規模が1200億ドルになると予測しています。これは最も速いスピードで成長している市場の一つでしょう。私はもっと大きな市場になると考えており、もっと大きくするのが私の仕事だと思っています。

投資家の勧めで、大学卒業4ヶ月前に起業

―Gribetzさんはイスラエル出身だそうですね。起業の経緯を教えてください。

 そうです、私はイスラエルのエルサレムで育ちました。私はイスラエルの情報機関に在籍し、その後に米コロンビア大学にてコンピューターサイエンスとニューロサイエンスを学びました。Metaのビジネスは、コンピューターサイエンスとニューロサイエンスを組み合わせて構築したオペレーティングシステムを使うのが一番簡単だったのです。大学卒業の1学期前に投資のオファーを受けたのですが、その際に投資家たちはこう言いました。「今すぐに大学を辞めれば、大きな投資をするぞ」と。それで私は卒業の4ヶ月前に大学を辞める決断をし、Metaを創業したんです。

―今後のビジョンを教えてください。

 あと5年のうちに、私たちはほとんど目に見えないくらい透明なグラスを入手できるようになり、目にホログラムを投影できるようになるでしょう。これはMacより100倍使いやすく、100倍強力です。テレビ、電話、ノートパソコンは不要になります。グラスを通じて、必要な時にすぐに情報が出てくるようになるのです。



RELATED ARTICLES
メディア業界を中心に利用拡大、分散チームの大容量ファイル共有をスムーズに LucidLink
メディア業界を中心に利用拡大、分散チームの大容量ファイル共有をスムーズに LucidLink
メディア業界を中心に利用拡大、分散チームの大容量ファイル共有をスムーズに LucidLinkの詳細を見る
グローバル企業が頭を悩ます「非計画購買」業務、Candexがベンダー管理をシンプルに
グローバル企業が頭を悩ます「非計画購買」業務、Candexがベンダー管理をシンプルに
グローバル企業が頭を悩ます「非計画購買」業務、Candexがベンダー管理をシンプルにの詳細を見る
「手の届かない場所」が得意分野、難所点検用のヘビ型ロボットを開発するハイボット
「手の届かない場所」が得意分野、難所点検用のヘビ型ロボットを開発するハイボット
「手の届かない場所」が得意分野、難所点検用のヘビ型ロボットを開発するハイボットの詳細を見る
今、大企業が注目するべき「秘密計算」とは 日本発のプライバシーテックで世界に挑むAcompany
今、大企業が注目するべき「秘密計算」とは 日本発のプライバシーテックで世界に挑むAcompany
今、大企業が注目するべき「秘密計算」とは 日本発のプライバシーテックで世界に挑むAcompanyの詳細を見る
米当局も承認したインド発の「血液サンプル自動検査顕微鏡」 人の手頼みからの脱却で遠隔検査も可能に
米当局も承認したインド発の「血液サンプル自動検査顕微鏡」 人の手頼みからの脱却で遠隔検査も可能に
米当局も承認したインド発の「血液サンプル自動検査顕微鏡」 人の手頼みからの脱却で遠隔検査も可能にの詳細を見る
デリバリー時代の飲食店の強い味方 複数チャネルの注文を一元管理 UrbanPiper
デリバリー時代の飲食店の強い味方 複数チャネルの注文を一元管理 UrbanPiper
デリバリー時代の飲食店の強い味方 複数チャネルの注文を一元管理 UrbanPiperの詳細を見る

NEWSLETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「オープンイノベーション事例集 vol.5」
もプレゼント

Follow

探すのは、
日本のスタートアップだけじゃない
成長産業に特化した調査プラットフォーム
BLITZ Portal

Copyright © 2024 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.