手軽に、幅広い試着体験を提供するデジタルミラーを提供
―まずは御社のビジネスについて教えてください。
当社は、いわゆるデジタルミラーをクラウドで提供する企業です。カメラとスクリーンのついたデバイスがあれば、どんなものでもデジタルミラーに変換するスマートカメラのようなもので、ユーザーの顔を識別して追跡し、鏡の役割を果たします。
ハードウェアではなく、ソフトウェアサービスなのでiOSやアンドロイド、携帯電話など、あらゆるデバイスで利用できます。もはや製品ではなく「体験」だと言えますね。
―体験、というのは具体的にどういったものになりますか?
業界によって様々です。たとえば、我々は当初ファッション業界に参入しました。ニーマン・マーカスというアメリカでは大手の百貨店に製品を置いてもらったんです。衣料品を買いに来たお客様にスマートミラーを利用していただくと、実際に商品を試着しているかのように、さまざまな角度から色々な洋服を疑似試着できます。
それから、我々は世界最大級の眼鏡メーカー”Luxottica“と提携し、ARを活用してさまざまな商品の試着体験を提供しました。そして、次にコスメ業界に入り、今はそこが我々のメインビジネスになっています。
我々の提供するAR体験では、あらゆるコスメ商品をスクリーンの中で試すことができます。また、肌の状態を検出し、おすすめのスキンケア商品やファンデーションの提案もしています。最近では、ヘアカラーもチェンジできるようなプロジェクトも進行中です。また、シューズでも同様のサービスを検討中です。
このように、当社の根底となるテクノロジーを駆使すれば、あらゆる体験を生み出すことができるのです。
―このビジネスが生まれたきっかけはなんだったのでしょう。
ミラノでインタラクションデザインのプロジェクトを手掛けていた時に、こんなビジネスはどうだろう、と頭に浮かびました。でも、そのころはカメラも画像処理も、今ほど技術が発達していませんでした。ですから、いつか事業開始した時に備えて、特許を取りました。
2013年に現在のパートナーと出会い、会社を立ち上げました。このころになると、ようやく技術が追い付いてきて、世の中が動き始めたので、会社を立ち上げてビジネスを始めました。幸い、必要な特許はいくつかとってあったので、非常に優位な立場でスタートを切ることができました。
最先端技術が自慢のデジタルミラーには、AIによる「おすすめ」機能も。
―AIも活用されているということですが、実際にどのように使われているのでしょうか。
大量のユーザーデータを蓄積して分析し、AIに学習させ、それを元に利用者の顔の形や肌のトーン、髪の色や年齢、性別などのプロフィールから最適な商品を提案します。もちろん、ユーザーデータは匿名性を維持していますし、情報を第三者に販売するようなことは一切ありません。あくまでAIの精度を高めるため、あとは商品販売する当該メーカーのマーケティングに役立てるためです。
―競合はいますか?また、他社にはない、御社の強みはどのような点でしょうか?
コスメ業界ではAR技術を採用している会社は複数あると思います。しかし、技術面でいえば、当社ほど「まるで鏡」といったスマートカメラを製造しているところはありません。特許も多く取得しています。他と一線を画数テクノロジーが当社の強みですね。
―今後の展開について教えてください。日本など、海外でも事業拡大される予定ですか?
はい、今も東京とパリにオフィスを構えており、アジアとヨーロッパへの拡大を進めています。まだ詳細は言えないのですが、新しいプロジェクトも進行しています。日本でもいくつか賞をいただいているんです。今後は大手ブランドとパートナーシップを組んでいきたいですね。信頼性と人気を兼ね備えた、市場で力のある企業を歓迎します。