テクノロジーは人間に「仕える」ためにある
―まずはMagic Leapについて教えていただけますか。
Magic Leapは、現President & CEOのRony Abovitzが設立した空間コンピューティングプラットフォームカンパニーです。Ronyは、ロボティックアーム手術支援システム「MAKO」を開発したMAKO Surgical社の創設者でもあります。こうしたバックグラウンドから、Magic Leapの技術は人体解剖学(Human anatomy)に基づき、生理学的アプローチをとっています。
私たちは自分の目に負担がかかることを厭わず、モニターやスマートフォンの画面を覗き込んでいますが、これでは人間がテクノロジーに従っている状態です。Abovitzは、テクノロジーは人間に「仕える」ものだと考えており、その関係性を変える開発に取り組んでいます。
ブログやゲームなどのコンテンツを「箱」の中で見るのではなく、自分の目の前にある現実空間に融合する、そして、コンテンツを現実空間とインタラクティブに存在させる空間コンピューティングの実現を目指し、2018年に最初の製品「Magic Leap 1」をリリースしました。
スクリーンやモニターとは全く別の概念でコンテンツを「見る」
―「Magic Leap 1」はどんな製品でしょうか。
私たちは、次世代のコンピューティングプラットフォームは、毎日、終日、全ての人が着用するものになり、それは快適に着け続けられる必要があると考えています。それには軽量なヘッドセットが最適で、コンテンツは遠近両方で見ることができるものが求められます。
「Magic Leap 1」は、316gの軽量ウェアラブルデバイス(ヘッドセット)「Lightwear」に、パソコンやスマートフォンと同等の機能を備えたコンピューティングパックの「Lightpack」がケーブルでつながった製品で、2018年8月にリリースしたクリエイターエディションは、クリエイター、アダプターやディベロッパーを対象としていました。クリエイターたちから多くのフィードバックを得て、現在は米国内のAT&Tの実店舗とオンラインストアで、一般消費者向けの販売も行っています。
人は光を通じてものを見て、脳が光と色や形を知覚します。当社は「Digital Lightfield」方式でこれを再現し、デジタルコンテンツを現実空間に融合する形で表示しています。「Magic Leap 1」には、Pixelsという概念はありません。スクリーンやモニターとは全く別物で、VRなどで起きる「酔い」は発生しません。
NTTドコモと資本・業務提携。日本での販売も視野に
―今後の目標として日本やアジアでの展開も視野に入っていますか。
そうですね。日本市場への参入を前提に、2019年にNTTドコモと資本・業務提携しています。日本は私たちにとって、とてもエキサイティングな市場です。日本ではまだ販売しておりませんが、当社の先端技術を試した方々からは好評を得ています。
過去のコンピューティングデバイスの普及には、通信プロバイダとの提携が大きく貢献していました。当社は、米国内では最大手通信会社のAT&Tと事業提携していますし、日本だけでなく、韓国でも通信会社と業務提携しています。5Gデータ通信を目前に、強力な通信プロバイダとの関係は非常に重要ですし、それ以外の業界でもパートナーを増やしていきたいと考えています。