言語の壁から機械翻訳の道へ
―まず会社設立の背景を教えていただけますか。
私は2000年の中頃に中東で働いていました。その時に情報アクセスに対する問題に興味を持ちました。中東では英語を話せない人の収入が少なく、またアラビア語に翻訳された本などは政府によってアクセス制限を受けていました。2006年にはGoogle Translateが世に出て、私は言語翻訳における社会が受ける影響に関心を抱き、2008年に仕事を離れ、スタンフォード大学院で機会翻訳の研究をしました。
2011年にCo-founderのJohnとGoogleで出会い、私たちは企業がどう翻訳作業をしているのかに興味を持ちました。Google Translateは一般消費者には大きな影響を及ぼしたものの、企業の翻訳は昔と変わっていませんでした。人を雇い翻訳した一語一語をタイピングしていたのです。
そこで私たちは企業に機械翻訳を利用したシステムを提供し、企業がより翻訳を効率的に、またその企業が人々に好きな言語で情報を取得できるようにしたいと考えました。
テクノロジーと人間の知恵の融合
―素晴らしいですね。次に会社の製品と企業に提供している方法について教えていただけますか。
私たちのビジネスは2種類に分かれていますが、ビジネスの根幹は一緒です。私たちは大企業や政府が顧客です。彼らに我々が構築したソフトウェアシステムを提供すると同時に、先方のビジネスに必要な優秀な翻訳者を派遣します。そして先方には、機械と一緒に作業することを日常化しながらも、仕事をする上で人の手が必要な仕事のために、翻訳者も置いてもらいます。できることは機械に任せて、より追及したいことや翻訳の問題を人間の翻訳者が担当するのです。
私たちは、翻訳者とソフトウェア製品、両者の管理をビジネスとしていますが、政府の場合、必要な言語を扱う内部の翻訳者がいることも多いです。そういった時はソフトウェアの販売に留まりますが、内部の翻訳者も作業がかなり効率良くなります。そして、翻訳者が居ない場合には、翻訳者とソフトウェアの両方を私たちが管理します。
―ビジネスモデルを教えていただけますか。
政府に対してはソフトウェアのみを販売し、私たちで管理することはありません。政府は自身でコントロールすることを望みますから、彼らの環境、データセンターを使ってソフトウェアを利用してもらいます。
企業に対してはソフトウェアそして派遣する翻訳者に対して料金をお支払いいただいています。
―競合他社との差別化ポイントや強みなどを教えていただけますか。
今までの翻訳ビジネスは代理店モデルでした。翻訳代理店に仕事を依頼し、その代理店も法律事務所や人材スカウト会社のように人を雇い、人間の労働力に頼るタイプのモデルです。コストの削減、翻訳の効率アップ、情報の手に入れやすさといった生産プロセスを劇的に改善するため、私たちは、全ての過程において、初めからテクノロジーを活用しています。このビジネスモデルにおけるマーケットを追及していった結果、人材の採用や管理といったサービス面、および、技術構築の両方をまとめていく必要があることが分かりました。私たちは、この全く違う2つの分野を統合した技術を提供する唯一の企業だと自負しています。
不便の解消と翻訳コミュニティの拡大へ
―会社全体のビジョンをお聞かせいただけますか。
まだ実現できていないものの、長期的な展望としては、全ての企業が個々のお客様に好きな言語で情報提供を可能にすることです。例えば、ある企業のサイトを訪問して、英語以外の言語に切り替えると、使用できる機能が限られてしまったりします。よくあるケースとしては、リンクをクリックして、日本語版を読み、突然英語に切り替えるとすべてのリンクが壊れ、日本語版に戻れなくなるというものです。
ビジネス面での目標は、コミュニティの構築です。現在、私たちは世界各地に分散している1,000名ほどのフリーランサーと仕事をしています。私たちはコミュニティの拡大だけでなく、この場所を世界一の翻訳者が働きたいと思える場所にしたいため、結びつきを強固にすることにも取り組んでいる最中なのです。
日本人マネージャーを採用予定、日本語翻訳の充実を目指す
―日本展開について教えていただけますか。
世界には、難しいといわれている2つの言語地域があります。日本語とドイツ語です。日本語話者の翻訳の品質への期待はドイツ語よりも著しく高まっており、私たちの顧客に限らず、どの顧客も日本語には苦戦していると思います。言語を組合せることは、機械翻訳システムで翻訳する時にも比較的難しいものですが、どんな理由であれ、翻訳者にとっても難しいものです。
現在、私たちは日本人の国内マネージャーを採用しようと考えています。今年、着手予定ですが、日本人で日本語を話す人がいることで、大きな違いが出てくるはずです。また日本語の翻訳者の採用も簡単なことではありませんが、日本で採用できる人がいれば、英語で募集するよりもより多くの人が集まるのでは、と考えています。