最新の光技術を使った次世代のコンピューターチップ
―まず、ご自身のバックグラウンドとLightmatterの設立のきっかけをお教えください。
もともとは、研究開発に携わるエンジニアとして半導体製造大手のMicron Technologiesで働いていました。その後、マサチューセッツ工科大学にて光を使った量子コンピューターの研究において博士号取得、博士研究員として研究を続けました。当時の研究から、量子コンピューターではなく、光を使って情報処理をするコンピューターを作る会社を立ち上げることを思いつき、現在に至ります。
―では、Lightmatterの製品についてお聞かせください。
我々の製品はデータセンターで機能させるもので、簡単にいうと、ニューラルネットワーク処理を高速かつ高効率で行うコンピューターカードです。ですから、我々のシステムを自然言語処理に応用することも可能です。断面だけを見て物事を特定するようなこともできます。
現在行われているどのようなタイプのニューラルネットワークの処理にも応用できるわけです。そして、我々は電気信号ではなく、光を使って情報処理を行うので、従来の処理方法だと直面する問題にもうまく対処することができます。
―Lightmatterのビジネスモデルについて教えていただけますか。
そうですね、我々はチップの加工を外注しています。シュミレーションをもとに作ったチップのデザインを加工工場に提出して、完成したチップを受け取ります。そして、チップや関連のシステムを販売するのです。Lightmatterは工場を持たない半導体ビジネスであり、これこそが、ビジネスの鍵だと考えています。
光で電子の限界を超える。まずはクラウドシステムから
―他社と比べた場合の強みは何でしょう。
現在、1916年から使用されてきたトランジスタ技術は物理的な性能向上の限界に差しかかっています。トランジスタをさらに小さく、速く、エネルギー消費効率を高くすることが難しくなってきました。しかし、私たちは電子ではなく光という全く違ったタイプの要素を使用しています。そうすることで、従来よりもさらに速く効率の良いAIテストを可能としています。
―なるほど。では中長期的な目標を教えていてだけますか。
大手のクラウドに我々のシステムを購入してもらいたいです。例えば、我々の投資家の一つであるGoogleのGoogle Cloudは面白いビジネスだと思います。さらに言うならば、Amzon Web Servicesや、マイクロソフトのAzureなどにも我々のシステムを導入してほしいですね。そうすれば、彼らの顧客で例えば、バーチャルマシーンを持っている会社や、コンピューター処理を必要とするビジネスの方々にも使っていただけるでしょう。またAIはいろいろなアプリケーションへ応用可能なので、たくさんの顧客を持つデータセンターにも興味を持っています。
長期的には、最新のコンピューターについての研究や我々が開発した次世代型コンピューターの強みを活かして、会社を大きく成長させていきたいです。
ボストンから世界へ羽ばたく
―アメリカ以外での国際的なビジネス取引はありますか。
多くのグローバルな企業とビジネスについて話をさせていただいています。ただ今はまだアメリカボストンのみにオフィスを構えています。また商品自体も先行販売のフェーズです。
―将来国際展開、特に日本市場に進出する際、どのような手助けが必要だと思われますか。また特に注目している業界はありますか。
いくつかの日本企業とはもうお話をさせていただきました。商品展開をするにあたって、日本での営業チームが必要になってきますが、日本の文化、ビジネスやそれを取り巻く環境を良く知った人間か、あるいは実際に日本に住んでいて、オフィスがあるような人がいたら良いですね。まだ具体的には考えていませんが、この2つのシナリオが有力かと思います。