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排気ガスからジェット燃料、ペットボトルなどを生み出す
―どのように排気ガスからエタノールや他の化学品に転換するのですか。
一酸化炭素、二酸化炭素、水素を含むガスを微生物により発酵させることでエタノールや他の化学品を作り出します。具体例としては、製鉄所の煙道ガスからガスを取り出し、取り出したガスをバイオリアクターの中に移し、圧縮します。そして、その圧縮されたガスを微生物が食べることで発酵し、エタノールが生成されます。
しかし、自動車燃料としてエタノールを作るだけではなく、生成されたエタノールをジェット燃料などのクリーンエネルギーや他の化学品へ転換することにも挑戦しています。実際に全日本空輸(ANA)との協業では、私たちが生成するエタノールから転換したジェット燃料を用いて飛行機の運行を予定しています。
―ジェット燃料への転換以外にどのようなことが可能ですか。
例えばエタノールはエチレンに、エチレンはPETに転換することができます。つまり、私たちの生成するエタノールからペットボトルなどの容器や他の製品を作り出すことも可能なのです。
また積水化学工業との協業では、ゴミ処理施設に集められた一般廃棄物を分別することなく丸ごとガス化させ、そのガスをエタノールへ転換することに世界で初めて成功しました
―現在エタノール以外の化学品も商品化していますか。
はい。バイオリアクターの中の微生物を取り出し食用のバイオ燃料として売っています。これらの微生物は85〜90%の豊富なプロテインで構成されており、またアミノ酸も含んでいるので、家畜や魚の餌、そして肥料として売られています。
世界唯一、商業化にまで至った技術
―競合に対する強みと違いは何でしょうか。
現時点で微生物の発酵により排気ガスから製品を作り出し、商業化する段階まできているのは私たちだけです。多くの会社がガスから製品への転換を試みていますが、彼らはまだどの企業もアーリーステージです。
ですから私たちがShougang Groupとのジョインベンチャーで作った中国にある工場は、ガスから製品への転換処理、そして商業化に成功させた世界唯一の工場なのです。
―ビジネスモデルについて教えてもらえますか。
私たちは大量の原料を持っていますが、巨大な会社ではありません。ですので、私たち自身でいくつもの工場や商業施設を作ることは困難です。そこで、私たちの技術をライセンスにして現在作られている工場や商業施設に販売しています。
インドのケースで言うと、私たちの投資家の一社でもあるIndian Oilとの協業では、地場のEPC(Engineering、Procurement、Construction)にエンジニアパックを送ることで立ち上げをサポートしました。また、冷凍乾燥させた微生物を送ることで工場の立ち上げを手伝う場合もあります。そして彼らがエタノールを売り始めた段階で、売上の小さな割合を報酬としてもらうという仕組みになっています。
一度で使い捨てるというメンタリティーを変えたい
―今後の目標、ビジョンを教えてください。
私たちの目標は炭素を再利用することが可能であるということ、そして、そうすることがより経済的であるということを世界全体の人々に気付いてもらうことです。現在、私たちには一度で使い捨てるというメンタリティが染み付いてしまっています。炭素を地上から取り出し、何かしらの製品や燃料を生成し、使用した後には大気中や海へ捨ててしまうというのが現状です。しかし、炭素を一度地中から出したなら、何度でも再利用可能かもしれないということを皆さんに知ってほしいのです。つまり、炭素にセカンドチャンスを与えるということです。
そして、化石燃料を使用せずとも炭素の再利用によって生成するジェット燃料などのバイオエネルギーで代替することが可能だと証明することも目標の一つです。
―日本へのビジネス展開について教えてください。
原料を常に輸入に頼らなくて済むという点で、日本にとっても炭素の再利用は将来的にも重視すべきだと思います。ローカルの資源を使いながら、私たちの技術を先進的に取り入れ、活用してくれる製造業社のパートナシップを探しています。